思い出の待ち受け画面
通行人の相棒であるiPadの待ち受け画面。
彼がiPadを開く度に、それは彼を傷つける。
そして彼はnoteの世界に逃げ込む。
毎回こんなお決まりのルーティーンだ。
その思い出の写真は、
元カノとディズニーで撮った1枚の写真だ。
スプラッシュマウンテンを背景に、
ふたりが持つ写ルンですに焦点を定めた1枚。
写ルンですとは、昔ながらのカメラであるが、
そのレトロな仕上がりが、インスタ女子の心を踊らせる。らしい。
撮影担当は彼女の右手。
写真の中央から彼女の白い左手が伸びている。
嫌気がさすほど、美しくて、細い。
あぁ、この手が恋しい。
また繋ぎたい。
俺のゴツゴツした愛嬌のない手を、握って欲しい。
この手が作る美味しいお菓子を、また食べたい。
この手が掴む幸せの中に、居たかった。
またいつか会いたいな。
どんな幸せを掴んでいるのか、見てみたい。
そんなことばかり考えてしまう。
なぜ待ち受けを変えないのかって?
変えられないんだ。
この思い出に別の写真を上書きして、
変更するのボタンを押せない。
変更完了までの数秒の待ち時間が、怖い。
この待受が変わるまで、俺は未練に溺れているのだろう。
失恋史上、「嫌いになれない」は、最凶の凶器。狂気。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?