もっとコウモリっぽくして欲しかった映画「モービウス」

かつてアメリカにはコミックス倫理規定委員会というものがあったのだそうでして、

「戦慄を催させたり、不快であったり、不気味なイラスト」の様な「過激な暴力」描写は禁止された。吸血鬼狼男食屍鬼ゾンビーを描く事は出来なかった。更に、「horror(怪奇)」や「terror(恐怖)」という言葉はコミックのタイトルに使えなくなった。単語「crime(犯罪)」の使用には厳しい制限が課せられた。

ウィキペディア

いかにもキリスト教圏らしい(古びた)考え方の規定ですが、モービウスの元になったキャラクター”モービウス・ザ・リヴィング・ヴァンパイア”が生まれた1971年には難しいハードルだったそうでして。
そこでコードに引っかかる「吸血鬼」ではなく「吸血鬼のようなキャラクター」という設定でハードルを乗り越えたそうです。
屁理屈っぽいしユルい気がしますから、そういった方面に関して倫理規定というのも有名無実な(性的系なものには厳しく厳格すぎるものにはユルく)側面があったのかもしれません。

そんなモービウス・ザ・リヴィング・ヴァンパイアを元にした映画「モービウス」
血液の病に侵された天才医師モービウスが吸血コウモリを用いた治療を行い自身がコウモリのような聴覚と人間離れした運動能力を持つ超人へと変化してしまう。
まるで「ザ・フライ」みたいな設定ですが、能力の暴走によって殺人を犯してしまいモービウスは警察に追われる羽目に。
一方、同じ血液の病気を患うギャングの友人ルシアンはモービウスの治療方法に気づき自分も同じく吸血コウモリのような能力を得て...といったお話。

元のキャラが古いせいなのか非常にストーリーは大味。
吸血コウモリの血液を取り込んで自分も吸血コウモリに~って発想がいかにも1970年代のトンデモで、「透明人間」と同じく急に特殊な力を手に入れてしまうと倫理観のタガが外れ暴走してしまうというのもテンプレな展開。

せっかく吸血コウモリなんだから暗闇の中で音だけを頼りにバトルしたりもあって良さそうですがなぜか明るいところでの戦闘が多め。
やっぱりコウモリというとバットマンが被ってしまうので大量にコウモリが出てくると「あー、これバットマンで観たなー」と連想してしまうのは残念なところ。
これはさすがに仕方ないですが。
ただアクション描写で残像を引くようなエフェクトは(何の残像かはよくわからないが)非常に格好いい。
そこに関しては得点が高い。

あとは。。。うーん。
悪くないんですけど、心に残るほどいいこともないという。
ほんと全然悪くないんですよ。
ただ訴える大きなテーマがない、娯楽作なので。
ジャレッド・レトがいい感じにシュッとしてるんで好きな方は。

スパイダーバースのキャラクターなので、今後スパイダーマンに登場した際にアーカイヴとして参照される作品。
アマプラ対象なので夏休み、もしお時間があればどうぞ。


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