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城山文庫の書棚から072『東京23話』山内マリコ ポプラ文庫 2017

千代田区を皮切りに、擬人化された東京23区が自分語りする。キャラクターは男性だったり女性だったり、ビルだったり行政区だったり。主体に合わせて話し方も変わる。文京区などは「吾輩は区である。」で始まる漱石風だ。
その街のキャラに合わせ声色は変幻自在。渋谷区はギャル、世田谷区はマダム、江戸川区はインド人風で台東区は江戸っ子べらんめえ調といった感じだ。同じ東京都区部でも方言があり、フランス語のように性別もあることに気付かされる。
描くのは現代ではなく思い出の懐かしい東京。と言っても著者は1980年富山生まれ。主に戦後から高度成長期にかけて、生まれても暮らしてもいない原体験ではない東京を23区自身に自分史として語らせる手法がユニークだ。
山内マリコはデビュー作『ここは退屈迎えに来て』の参考文献に三浦展さんの『ファスト風土化する日本』を挙げた作家。都市や街角に対して向ける視線に社会学的なテイストが感じられ共感できる。軽いエッセイで半日で読了。