見出し画像

城山文庫の書棚から065『インフラ投資』佐藤正謙・福島隆則他 日経BP 2019

日本を代表する法律事務所のパートナー弁護士3名とシンクタンクの主席研究員によるインフラ投資に関する実務書。制度や契約の専門的な解説の前段で世界のインフラ投資市場の概観や日本におけるPFIの変遷等が描かれており、取っ付きやすい導入となっている。ハコモノ中心の“ガラパゴス化した”日本のPFI1.0からコンセッションの登場によるPFI3.0を経て、現在は国際的な標準を視野に入れたPFI3.0の時代だ。

本書で重点が置かれているのがコンセッションに関する実務の説明・検討だ。コンセッションは従来型のPFIとは取引内容や契約実務が全く異なる。政府が毎年更新する「PPP・PFI推進アクションプラン」と各種ガイドラインに則り実施されているコンセッション事業の動向をセクター別に紹介する。

また、プロジェクトファイナンスやSPCへのエクイティ出資等を通じた資金調達に関わる問題の解説にも注力している。そして、民間事業者や投資家・金融機関の目線からの記述が中心となっている。そうした意味で公共側の視点を中心に書かれた『インフラPPPの理論と実務』とは相互補完的な関係にあると言える。

「PFI3.0の官民連携モデル」では、海外の先端プロジェクトを紹介。アメリカのアベイラビリティ・ペイメントによる道路事業、オーストラリアのアセット・リサイクリング・イニシアティブ、ドイツのシュタットベルケ型まちづくりなど、我が国でも導入が検討されてよいユニークな官民連携手法だ。政府も上下水道の維持管理については「ウォーターPPP」と名付け向こう10年の重要課題に挙げている。本書は実務者にとって心強い参考書となる。