見出し画像

城山文庫の書棚から066『コンセッションと官民連携ガバナンス』荒川 潤 勁草書房 2023

国が進めるPPP/PFIのうち、公共施設の運営権を民間に有償譲渡するコンセッションは我が国では導入が端緒についたばかりだ。中でも有料道路については、未だ愛知県の一件のみ。その事業推進に関わった著者による博士号学位論文が本書である。

著者の荒川氏は愛知県知事特別秘書。愛知県は有料道路以外にも国際展示場やアリーナなど多くのコンセッション事業実績をもつ。本書では事業開始後のガバナンスのあり方にフォーカスし、失敗リスクを低減する方策について学術的に論じている。

官民連携ガバナンスの基盤は、コンセッション事業体(内部統制)とそれを見守る立場からのガバナンス(外部統制)の組み合わせにより構成される。委員会など第三者機関とファシリテーターによる支援と促進がそのカギを握る。愛知県の有料道路事業は、このガバナンスが機能しているが故に失敗を回避して順調に運営されている。

先に行われた愛知県知事選挙で、現職の大村氏が危なげなく4選を決めた。与野党相乗りの盤石の支援を受けての当選であり、向こう4年間は安定した県政の継続が期待される。2024年10月にはスタートアップ支援拠点ステーションAiがオープンしコンセッション事業が始まるなど、常に我が国のPPPをリードする愛知県から目が離せない。