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城山文庫の書棚から 039 『変われ!東京』隈研吾・清野由美 集英社新書 2020

今や世界的建築家・隈研吾さんとジャーナリスト清野由美さんが東京の街を歩きながら語り合う対談本、第三弾。新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われた最中、2020年夏に発刊された。

冒頭、清野さんがジャック・アタリの"世界中心都市”の変遷を紹介するくだりがある。しまった。2020年9月にアタリ氏を交えたパネルディスカッションに登壇して頂いた隈さん。これは事前に読んで知っておくべきだった。

国立競技場や新歌舞伎座など大規模なナショナルプロジェクトが目立つ隈さんだが、木造コンテナハウスや横丁の呑み屋など東京の街中に組み込まれた小さな仕事が実は面白い。 「大きなハコ」から「風通しのいい場所」へというのはコロナ禍の価値観の変化であると同時に、建築家・隈研吾自身のスタンスの変化でもある。

巨匠・丹下健三の系譜に連なる黒川紀章、磯崎新と異なり、隈研吾は原広司の下でアフリカの集落調査などに携わった経験を持つ。都市へのアプローチの仕方は、コルビュジェの弟子のひとりである吉阪隆正に意外と近いのではないかという朧げな仮説が芽生えた。