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城山文庫の書棚から057『Digital General Construction 建設業の"望ましい”未来』中島貴春 日経BP 2022

建設テックの活用によるデジタルゼネコン=建設業の未来を、大手ゼネコン出身・20代で起業した著者が描く。温故知新;本書は建設業の過去を振り返ることから、未来への道程を始める。現存する日本最古の建築は607年に聖徳太子が創建したといわれる奈良の法隆寺であり、土木工事は更に遡るだろう。江戸時代中期には大規模な建築工事を棟梁が一式で請け負う一式請負の形式が定着していく。

現在、建設業で「スーパーゼネコン」と呼ばれる総合建設会社は明治時代に土木と建築の請負業に進出する。1950年代の大量消費・大量生産の時代背景を受けハウスメーカーが産まれる。その後、生産性向上が求められ、IT・DXの導入によって生まれつつあるのがデジタルゼネコンだ。

建設テックの歴史は浅く、1983年に誕生したCADから数えてもまだ40年だ。2009年が現在の主流であるBIMの元年といわれる。CADはデジタルツールで描いた3次元の線だが、BIMはそこに情報を持たせることで、建設テックに革命的な飛躍をもたらした。公共発注工事は今年度中にBIM/CIMの仕様が原則適用となる。

今後は、建設部材や単価など様々な情報を統合したデータベース、建設プラットフォームが整備されていく。メタバースにおける建設においてもDXは必要不可欠となりデジタルゼネコンの活躍の場が広がるだろう。他産業と比べ生産性が伸び悩む建設業界において、建設テックはイノベーションの切り札となりうる可能性を秘めている。