私は推しの生まれ変わりなのかもしれない。
ある高校1年の冬の日だった。
年末の大掃除で疲れ果て、こたつでくつろぎながらMステの年末特番を見ていた。
番組も終盤に近づき、"17年ぶりにテレビ出演する伝説のバンド"と称され、とあるアーティストが出演した。
私の生前に活躍していたバンド。こんな大トリで出演するぐらいだから、きっと人気だったんだろう。
イントロはピアノの独奏から始まった。
美しいアルペジオに繊細なメロディー。
なんかこのイントロ聞き覚えるなと思っていた矢先、ピアノを弾いていた男性は立ち上がり、ドラムのある場所へ移動した。
そこで、当時の私に衝撃が走る。
さっきまでピアノを奏でていた男性が、超高速ドラムを叩き始めたのだ。
そのギャップにやられ、私は一瞬にして惚れてしまった。
なんだあの伝説のバンドは…
X JAPANと言うのか。
ボーカルは10年以上にわたり洗脳されていただと?しかもギタリストはもう亡くなっている。
こんなに儚い伝説的バンドがあるのか。
私はX JAPANの虜になり、次の日もX JAPANの音楽を聴きながら大掃除に取り組んだ。
母親に、「そんなん聴いてたら余計に部屋汚なるで」って言われながら。
ピアニスト兼ドラマーの天才的リーダーにぞっこんした私だったが、音楽を聴いているうちに、間奏のギターソロに惹かれていった。
今までギターのメロディーに惹かれることなんて無かったけど、超高速で2人のギタリストによって奏でられる唯一無二のハーモニー。
一体、ギタリストはどんな人なんだろう?
私はググった。
すると、ピンクの髪に赤いレザースーツ、派手なイエローギターを持つ男性が現れた。
今までに見たことのないビジュアルに仰天した私であったが、動画でギターを弾く姿を見る度に、どんどん彼に惹かれていった。
気づけば、周りのJKがジャニーズやKPOPアイドルを推す中、私はずっとX JAPANを聴いていた。
友人にX JAPANのファンだと伝えると、ドン引きされるのではないかと思い、孤独に苦しんだ日もあった。
でも、私の感情は抑えきれなかった。
ギタリストの彼は、私が生まれる前に事故死で亡くなったらしい。
推しと同じ時代を生きられなかったことを悔やむとともに、次第に私は推しの生まれ変わりなのかもしれないと思うようになった。
彼がなくなったのは1998年の5月。
私が生まれたのは1998年の12月。
人によって輪廻のタイミングは違うらしいが、前世で徳を積んだ人は、すぐに新しい命を歩めるらしい。
そう思い込むしか、私は正気を保てなかったのかもしれない。
本当に私にとって儚くて、尊い存在の推しだった。
いつか、HIDEの出身地である横須賀へ行き、お墓参りをしたいと思う、今日このごろ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?