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動物病院建設への思い

  盛岡市動物公園ZOOMOは令和5年にリニューアルオープンを迎え、多くの皆様にお越しいただき無事に半年が経過しました。
 リニューアルオープンに至るまでは語りきれないくらい多くのことがありました。まずは、これまで動物公園を運営してきた「盛岡市動物公園公社」が解散となり、新たに盛岡市動物公園を運営する会社として設立された「株式会社もりおかパークマネジメント」に職員が再雇用されたということです。「株式会社もりおかパークマネジメント」は盛岡市で計画された「盛岡市動物公園再生事業計画」の中で掲げられた“人、動物、環境(生態系)の健康は相互に関連していて一つである”という考え方「One World-One Health」を理念として運営することになりました。現在では各職員に理念の考え方が根付いてきていますが、再雇用の当初はまず理念に掲げた通りに動物と向き合うことができるのか、職員間で多くの議論を重ねてきました。動物の飼育頭数は適正か?たくさん飼育することで飼育環境が過密になり動物の健康状態が悪くなっている動物がいるのではないか?そもそも飼育施設が狭くはないか?十分な飼育環境がないまま飼育している種類もいるのではないか?などなど、多くの意見が出されました。リニューアルまでの間に他の動物園へもらわれていった動物たちの話題で悲しまれた方々も多かったと思いますが、一部の動物が他の動物園にもらわれていくことになったのは、こういった経緯があったからなのです。


新しくなったアプローチ


 そして、動物園での動物の飼育は、動物たちの誕生による出会いや病気や寿命などで亡くなった動物との別れなど、まさしく命と向き合う現場でもあります。これまでは、明るい話題は公表し悲しい話題はあまり公表しない風習がありました。いわゆるネガティブな話題を避ける傾向がありましたが、あえてこういった話題も公表することで自分たちの行いにより責任を持つことになると共に、多くの皆様に動物園の今と現実を知ってもらえるのではないかという考えで、オープンな広報を目指すことにしました。


令和2年6月7日(日)に亡くなったニホンイノシシのメス“キレミ”

 また、リニューアルに向けた施設の改修では、他の動物園の施設を参考にしたり、今では当たり前になってきた動物の飼育環境のエンリッチメントについても研鑽を重ね、運動場の緑化や動物の休息場の設置などを各担当の飼育係が提案して工事業者に意見を出し、動物目線での飼育環境の改善を心掛けました。工事期間中は、一時的に動物を他の獣舎などへ引越しせざるをえない状況でしたので、飼育係と獣医で連携して動物の健康管理にあたってきました。


ニホンザルの施設は岩山だったが上部は張りぼてで、中の構造物を再利用するために残した
ニホンザルの施設は既存の構造物を再利用し、木材をふんだんに使用した施設に改修

 リニューアル開園へ向けた様々な準備と並行して、より積極的に動物に向き合っていく姿勢が根付いて来ました。具体的には動物のトレーニングを行うことで、一部の動物ではストレスなく治療や血液検査の為の採血を行うことが出来るようになったり、動物が自ら体重計に乗るようになったのです。これまでは捕まえて押さえたり、麻酔下でしか出来なかったり、それさえも出来ない場合はあきらめていたことが可能になってきたのです。もちろん、これはいきなりは無理ですので、専門の講師を招いてトレーニングの目的やノウハウなどをしっかり学ぶところから始めたものです。


ニホンツキノワグマのメス“リオ”の前肢から採血が出来るようにトレーニングをしている様子

 最後に、医療技術についてです。これまでは、動物が病気や怪我を負ってしまった場合に、一定以上の検査が難しいので原因の判明が困難なことや、技術やノウハウが足りずにあきらめざるを得なかった事がありました。各動物の種特有の様々な特性や状況の下で、最前線で治療にあたる動物病院チームが切磋琢磨しながら技術の向上に努め、率先して他の動物園の獣医や地域の専門の獣医、大学や関係機関と連携をとるようになり、飛躍的に動物の医療技術や体制が整いつつあります。また、一部の動物では健康診断も積極的に行うことで、病気を未然に防ぐことや体調管理に役立つようになってきました。


ニホンイヌワシのオス“出羽”の健康診断の様子

 一方で、今回のリニューアル工事では園内にある動物病院の施設は改修されず、盛岡市の政策として動物病院の新たな建設に係る費用は、趣旨にご賛同いただいた皆様からお預かりするご寄附により整備を目指すことになっています。現在の動物病院は老朽化が進んでおり、そもそもの建て替えが必要なことに加え、積極的な治療や検査の為には十分な設備も必要となります。これまでのお話の通り、園全体としては動物に向き合う姿勢や、技術や体制について様々な角度から改善を行い、動物の飼育施設面でも改善が出来ています。
 残る一つは動物病院の建設です。私たち動物公園としては、いち早く新動物病院が建築され、動物達の健康面での充分な体制を築いていきたいと思っておりますので、皆様のご協力をお願いいたします。

副園長 村山
 

※新動物病院の建設寄附と動物医療費寄附のご支援方法についてのお知らせ※

動物病院チームの生の声を聴く貴重な機会です!ぜひご参加ください。

2024年1月14日(日)開催 動物病院応援ツアー