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【感想】エリザベート

帝国劇場で公演中のミュージカル『エリザベート』を観てきました。


『レ・ミゼラブル』以来、約1カ月ぶりの帝劇。
当然ながらレミゼとはだいぶ雰囲気が違うセットで、同じ劇場なのに別の場所みたい。なんだか不思議な感じがしました。

舞台上には、霊廟を模したゴシック調(なのかな?)の柱が、扇状に重なるように並ぶ。柱の端からは羽根が生えてます(言葉で説明すると……ですが、素敵なセット!)


私が観劇した回のキャストはこちらの皆様(敬称略)。

エリザベート:愛希れいか
トート:井上芳雄
フランツ:田代万里生
ルドルフ:木村達成
ゾフィー:剣幸
ルキーニ:山崎育三郎

愛希れいかさんのエリザベートは、少女から大人になるに従って、喋り方だけでなく声質まで変わったかのような変化があり、とっても驚きました。声を聞いているだけでも、年月を重ねてエリザベートの内面が変わっていくことがわかってすごい!

正直、結婚直後のエリザベートが、自由のなさや義務に縛られることに反発する様子を見て、「いや皇帝と結婚するんだもん、そんなのわかってたでしょ……!」と反発する気持ちを持ってしまったんだけど、自我に目覚めてからのパワーと美しさ、歌唱力に圧倒され、結果「好き!!」となった~。

愛希さんの宝塚時代を存じ上げないのですが、今回の出演にむけたインタビュー記事などから「笑顔がかわいい明るい女性」という印象を持っていたんです。
でも、舞台上のエリザベートは、悲しみと苦しみに満ちつつも、気品と誇りを持ちながら、己を貫くため、時に大胆な行動に出る美女で、愛希さん本人に対して持っていたイメージとは、良い意味でかけ離れていました。

いや~それにしても、ドレスを着た姿がとっても美しかった!
1幕終わりの有名な白いドレス姿も本当に美しかったですが、フランツに最後通告を書いている場面の青いフリフリした服も素敵。あとハンガリーの三色旗を模したドレスもよかったし、つまり全部綺麗だった~!!
2幕になると、色合いが地味なドレスが増えるので、ちょっと寂しかったです。


井上芳雄さんのトートは、この世のものじゃない存在感がすごい。ぬめーーーっとしていて、近くにいたら背筋にゾクゾクと変な感覚がしそう。
たとえ目に見えなくても、存在だけは感じられるんじゃないかと思える妖しさです。

もちろん、歌も力強さと美しさに満ち溢れていて、黄泉の国の王である貫禄とエリザベートの愛が必ず自分に向くはずだという確固たる自信が伝わってくる。

その「確固たる自信」という部分に繋がるのですが、私にはトートがエリザベートを愛しているのかどうか、よくわからないな~と思えてしまう。
エリザベートを手に入れたい、愛されたい、と考えているのはわかるんだけど、彼女を愛しているのか?と聞かれると……???

そう思ってしまうのは、愛している人を守ろう、幸せにしてあげよう、みたいな感情が表に出ていないからなのかも、と思います。
でも、言ってみればそれはフランツも同じで、自分はエリザベートがそばにいないとダメ、と言いながら、妻を守ろうとしない。つまりは、愛されたいだけで愛しているわけではないのかも?と思えたり。
さらに言うなら、ルドルフをゾフィーから取り戻しておきながら、自ら育てず人に預けてしまうエリザベートも同じなのかもしれない……。

そうなると、最終的には、常にエリザベートを見つめ要所要所で手を差し伸べようとするトートが、一番「愛」を持っているのかもしれない????うーーん、愛って難しい……


ルキーニの山崎育三郎さんは、安定した演技力・歌唱力で舞台を動かしている印象を受けました。
育三郎さん、年齢を重ねるごとに、顔立ちが少年のように若々しさと可愛らしさのあるイケメンになっていくのはなぜですか?!魔法??????????


木村達成さんのルドルフは、背が高くてイケメン!立派な皇帝陛下になれそうな聡明な顔立ちです。
「闇が広がる」は、ぐいぐいくる井上トートに押されつつも、素晴らしい歌唱でした。


観劇する前は『エリザベート』は恋愛の話だと思っていたけど、観終わったあとの印象はまるで違っています。

己の精神の自由を求め、生きたいように生きるために苦しんだ女性の話。
私にはそう感じられたけど、きっと観る人によって印象に残る部分が違うんだろうなと思う。

私が「生きたいように生きるために苦しんだ女性の話」と感じたのは、自分もエリザベートと同じように、自分なりの幸せ(好きな舞台を観ながら好きに生きること)を求めようとしつつ、悩んだりへこんだりしながらもがいているからで、夫婦関係・親子関係に悩む人にとっては夫婦・親子の話、恋愛に悩む人にとっては恋愛の話に感じられると思う。

この多面性があるからこそ、『エリザベート』という作品はこれだけ多くの人に愛されているのかもしれないなあと感じました。

でも、その苦しみを最後に救ってくれるのが「死」であるのは皮肉だ~。ただし、それならば人間だれしも最後に救われるとも言える。不思議にブラックなハッピーエンドですね。

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