はな蔵

映画ゲームなどが好きです。映像クリエイターの端くれから世界を眺めます。

はな蔵

映画ゲームなどが好きです。映像クリエイターの端くれから世界を眺めます。

最近の記事

『フラッシュ』2023

大変良かった。上半期は個人的には「フェイブルマンズ」が一番だったが、人に薦めるとしたら、この「フラッシュ」を挙げたい。スパイダーバース2と同じテーマや要素を扱いながら、全然違うところを通って着地に至る。ここ数年作られ続けているマルチバースものの中でも突出した作品になっていると思う。トマト缶があんなにドラマチックになるなんて。 若者、全年齢層向けのマーベル作品に対して、このDC作品は主に30代から40代向けに作ってあると感じた。その理由はなによりも、バットマンである。マイケル

    • 『卒業』1967

      優等生、孤独、童貞、モラトリアム。現代でいう「陰キャ」であるところの坊ちゃん、ベンジャミン。彼が大学を卒業後、色っぽいおばさんの誘惑と、その純朴な娘のあいだで奔走する。 時代とは不思議なものだ。彼の憂鬱や、未来の見えなさ、ホテルのフロントでの挙動不審など、共感するところは多くある。しかし、この余裕はなんだろう。スポーツカーを乗り回し、大きなプール付きの実家がある。お金の心配もせず、突然出ていって下宿に泊まる。こういった環境は今ではずいぶん稀だろう。当時からこんなのあり得ない

      • 『グロリア』(1980)

        リメイクでなくジョン・カサヴェテス版の方。 ニューヨーク、ブロンクス。夏の蒸し暑い日。 (妙に色っぽい)若い女がマンションに帰ってくる。 マンションの入り口には不審な男達。 家に帰ると、なんだかやばい雰囲気。 夫との口論「なんでこんなことに!」祖母や子供は荷物をまとめている。 マンションの入り口。明らかに追っている雰囲気の男達。 トランクを持ってくる大男「丁寧に扱え。吹き飛ぶぞ」明らかにヤバい。 どうやら男に金を取られたらしい。 再びパニックの家族達。ドアをノックする音

        • 『セブン』 その2

          セブンについてもう少し書いてみようと思う。 好きなシーンがある。 物語の後半、第2ターニングポイントの直前にあるシーンだ。 犯人の殺人が進行し、4人目の被害者が出た。そして。 取り調べ室のテープが回っている。 セックスで娼婦を殺した男(真犯人では無い)が叫ぶ声 「ファック!神様 お願いです 助けてください」 取り調べ室で呆然と頭を抱える二人の刑事。 深夜のバー。土曜の夜で賑わっている。 大きくため息をつくミルズ。 サマセット「ハッピーエンドにはならない」 この映画は、

        『フラッシュ』2023

          ソーシャルネットワーク(2010)

          黄色味がかった暖色の画面の中で、青いPCモニターが冷たく浮かび上がる。 人物は背中を向けて高速でタイプし、高速の会話劇を繰り広げる。 それがこの映画のほとんどの画面だ。 初め見た時は、ついていくのが大変だった。スピード感と情報量に圧倒された。アクションも、セックスもバイオレンスもなく、ただ怒ったり、関係が壊れていくのを(しかも時間をシャッフルして)描いていく。そんな映画を心底面白いと思えるようになったのは、年齢のおかげだろう。 この映画においてマークザッカーバーグという男は

          ソーシャルネットワーク(2010)

          セブン(1995)

          ネタバレ注意。 ベテランとルーキーの刑事物である。 7日後に引退し、平凡な暮らしを求めているベテラン。老刑事サマセット。 殺人現場には引き継ぎとしてルーキー、新米刑事ミルズが配属される。 サマセット「子供は殺人現場を見たのか?」 同僚「そんな事どうでもいいだろ。ガキの心配は仕事じゃねえ」 階段を上がってくるミルズ。 ミルズ「サマセット刑事?ミルズです」 無関心が最大の敵である、という考えを持つサマセットは、仕事ではないはずの新米刑事へのサポートを行わずにはいられない。

          セブン(1995)

          音楽は伝播する

          こんなのやりたい! そんな思いがジャンルや国籍を超えて音楽を伝播させていく。 Melrose『gettin’ high』は スピッツ『船乗り』に。 四人囃子『一触即発』は 植松伸夫『更に闘う者達』に david bowie『life on mars?』は ROBOTS『コイビト』に これらの曲は、「真似」というよりも、もっと純粋に「憧れ」に基づいた曲という印象を受ける。こんなのを自分もやってみたい。という気持ちが重要な衝動なのだ。

          音楽は伝播する

          刑事ジョンブック(1985)

          脚本と演出がうまい映画だという印象があったので 映画を観ながらメモをとりつつ、プロット風に書き起こしてみた 刑事ジョンブック プロット風 アーミッシュの村 父の葬式 母と子が旅に出る ↓ 途中、都会の駅で殺人を目撃する子、間一髪逃れる ↓ 刑事登場。犯人は黒人だった、と子 ↓ 捜査するが犯人は見つからず、母子を姉の家へかくまう刑事 ↓ 翌日、警察署で犯人が写った表彰状を見つける子 犯人は黒人の同僚だったと知る刑事 ↓ 刑事、捜査部長に犯人特定を報告(子供が見ていたんです)

          刑事ジョンブック(1985)

          花束みたいな恋をした(2021)

          この映画を見て、どのくらいの人が「ああ、これは私のことだ」と思うのだろう。 自分は変わっていると思っていて、人には理解されなくて、そんな自分にプライドを持っていて、二人の大切な時間をただただ消費していって……と、私は身に覚えがありすぎます。

noteで映画評をつらつらと書き連ねるような人種は皆さんそういう経験をしているとは思いますが。ただ、良かったと思ったのはそんな経験からだいぶ時間が経っていること。だからゲラゲラと笑いながら見れてしまったのです。(大学生ならきっと笑えなか

          花束みたいな恋をした(2021)

          竜とそばかすの姫(2021)

          面白かったです。ラストは確かに捻挫してるけど、安易な技を選んで綺麗に着地しないのが細田守らしいとも言えます。 細田守はここに来て、手法的にも2つの異なった世界を行き来して、アニメ映画を作るという自らが模索してきた課題に成功したと思います。 いままでは1つの物語の中で2つが微妙に混じり合っていたわけです。アクションもやるけど所々、実写映画的なリアリズムの演出もやります、と。(細田守がやりたいのは実写映画的な演出なのだと思う。しかしそれだけではエンタメにならない)細田作品では

          竜とそばかすの姫(2021)

          『プロミシング・ヤング・ウーマン』レイプリベンジでキモいおっさん達を殺しまくるような派手な内容を想像していたのですが、たいへん真っ当なバランス感覚というか、誠実なメッセージと問題提起に基づいた作品でした。時代の変化に寄り添った作品。

          『プロミシング・ヤング・ウーマン』レイプリベンジでキモいおっさん達を殺しまくるような派手な内容を想像していたのですが、たいへん真っ当なバランス感覚というか、誠実なメッセージと問題提起に基づいた作品でした。時代の変化に寄り添った作品。

          シンドラーのリスト(1993)

          スピルバーグはこの作品を前作『ジュラシックパーク』と同年公開という恐ろしいスピードで撮っている。『フック』を撮りながら『ジュラシックパーク』のプリプロダクションを進め、『ジュラシックパーク』の本編撮影直後、ポストプロダクションと同時並行で『シンドラーのリスト』を撮っている。信じられないスピードと密度である。 しかし、この3作を連続で撮った事により、スピルバーグにとって大事な転換点が訪れることになる。新しいテーマの獲得とそれを次第に映画として言語化できるようになっていくのであ

          シンドラーのリスト(1993)

          『ゴジラvsコング』は怪獣プロレス映画として楽しい作品でした。乗り物で移動するシーンがどれも良かったです。3~4ラインほどの話が同時並行するのですが、全く交わらないという不思議。数百億円かかった映像を1800円で観れてしまうというありがたさは大作映画ならでは。

          『ゴジラvsコング』は怪獣プロレス映画として楽しい作品でした。乗り物で移動するシーンがどれも良かったです。3~4ラインほどの話が同時並行するのですが、全く交わらないという不思議。数百億円かかった映像を1800円で観れてしまうというありがたさは大作映画ならでは。

          『ミュンヘン』を観たのですが、どう感想を書いたものか困ってしまった。素晴らしい事は間違いない。しかし、思い浮かぶのは、画面やカットが70年代映画っぽくてカッコ良かったとか、残酷描写が良かったとか、書いても書かなくてもいいような感想ばかり。手に負えないので、少し寝かせてみます。

          『ミュンヘン』を観たのですが、どう感想を書いたものか困ってしまった。素晴らしい事は間違いない。しかし、思い浮かぶのは、画面やカットが70年代映画っぽくてカッコ良かったとか、残酷描写が良かったとか、書いても書かなくてもいいような感想ばかり。手に負えないので、少し寝かせてみます。

          プロットホール(脚本の穴)について

          いろんな人の映画評や感想文を読んだり(音声や映像によるものも含め)するなかで多く目にするのがプロットホールの指摘です。要するに脚本の穴。 普通はこうならない、こんなことしない、理屈としておかしい、登場人物は何を考えているんだ、もっと良いやり方があるだろう、云々、、、 たしかに言われてみるとごもっともな指摘がほぼ全てなのですが、なんだか聞いてるうちに耳が疲れてくる。プロットホールの指摘って意味あるの?というのが私が昔から思っていることです。 映画は破茶滅茶です。現実と全く

          プロットホール(脚本の穴)について

          フック(1991)

          スピルバーグをきちんと見ていきたい、という気持ちが最近芽生えておりまして、配信なんかで見られるものを少しずつ鑑賞していこうと思います。 さて、フックです。この映画、日本ではあまりヒットしなかった。自分も映画館では見ていないです。公開直前にテレビのワイドショーで、莫大な予算をかけた海賊船と港のセットが紹介されていたのを覚えています。しかしこの作品、スピルバーグの映画としても本当に人気が無い作品です。セットはすごいんですが、スペクタクル的なビジュアルに少し欠ける所があるのは事実

          フック(1991)