『グロリア』(1980)

リメイクでなくジョン・カサヴェテス版の方。

ニューヨーク、ブロンクス。夏の蒸し暑い日。
(妙に色っぽい)若い女がマンションに帰ってくる。
マンションの入り口には不審な男達。
家に帰ると、なんだかやばい雰囲気。
夫との口論「なんでこんなことに!」祖母や子供は荷物をまとめている。

マンションの入り口。明らかに追っている雰囲気の男達。
トランクを持ってくる大男「丁寧に扱え。吹き飛ぶぞ」明らかにヤバい。
どうやら男に金を取られたらしい。

再びパニックの家族達。ドアをノックする音。ヤバい!
銃を片手に覗く。おばちゃんが立ってる。「グロリアだ」
家に入ってくるおばちゃん「ねえ、コーヒー飲ませてよ」
開始10分でグロリア登場。
「この子をあずかって」と女が子供を差し出す。
「嫌よ。子供は嫌い。特にあんたの子は」とグロリア。
「聞いて。」ここから一気に人物関係と状況説明。お見事。
父は子供に“手帳”を預け、これを決して離すなという。
そして始まるグロリアと少年の逃避行。


とにかく、グロリアの顔がいい。はっきり言って怖い。
修羅場をくぐってきた人の顔なのである。
そのおばちゃんが、子供と擬似家族とも疑似恋愛とも言える関係を極限状態の中で築いていく。どんどんどんどん追い詰められて、攻勢に転じるが、それでも追い詰められる。ラストなんかは、全然事態が改善したわけじゃないんだけど、カタルシスがある。そしてなんといってもグロリアの(いや、少年も)顔はうるさいんだけど、演出は決してうるさくなく。家族の末路を知った少年が新聞を持って走っていくのを俯瞰で捉えたショットなんかはその骨頂である。本当にただ走っていくのがドラマチックなのだ。クローズアップもセリフもいらない。カサヴェテスの他作品も見ていこうと思った。


ところで、本作の導入部分について。
弱いものが恐ろしい集団に追われて、絶体絶命の窮地。
その中でも一番弱い者に「秘密の文書」が預けられ、それがたまたま居合わせた主人公に託される。主人公は弱き者(ときどき反抗する)を守り、同時に「秘密の文書」を追って来る者(主人公との因縁あり)から守りきれるのか、、、これ、なんか見たことある気が。

これは『スターウォーズ』と同じ導入なのである。主人公が後から登場するところも同じ。スターウォーズが1977年公開なので、監督やプロデューサーがちょっとは意識したのかも知れない。


追記:初めに出てくる女が妙に若くてセクシーなのは「グロリアの親友」「あいつの嫁さん」という情報から、彼女もグロリアと同じ境遇(ギャングの情婦)で旦那が彼女を身請けした、という事なんだろうと2回目見て気づきました。旦那が妙に歳いってるのも納得できる。

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