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□□□とボードゲーム(1.61)〜デュシャンとチェス(続々々々:四次元)

前回の記事はこちら。

締めのところで、こんなことを書きました。

ポスターでは、立方体は21個描かれています。
多数の立方体を描くために、ブロックを袋に入れて撮影した写真をモデルとしました。
とすると、他のブロックの裏に隠れているものが何個かあってもおかしくないよね?(※「Tout-Fait」の記事には、その話題は書かれていませんでした)

果たして、デュシャンは袋にブロックを何個入れたのでしょうかね。

今回は、この妄想を回収していきます。

デュシャンは数学好き?

毎度お世話になっている『マルセル・デュシャンとチェス』から引用です。

【引用】
もちろん、いつも数学に興味がありましたが、真剣にではありません。私には数学の素質はありませんでした。ですが、わずかながらチェスに含まれるそれにたいして、興味をもったのです。そして、かなり簡単にその側面を習得しました。

引用:『マルセル・デュシャンとチェス』P160

デュシャンは「連続」に興味をもっていることは、前の記事にもふれましたが、数学にも興味をもっていたそうです。
その手の情報を知ることのできるチェス仲間もいました。
フランソワ・ル・リオネ(François Le Lionnais)。

数学者でもありましたが、1960年に潜在文学集団「ウリポ」を(レイモン・クノーらとともに)立ち上げた1人だったりします。

そして、別の引用

【引用】
 私は対した数学者ではありません。1910、11、12年当時、四次元についての話がたくさんあり、惹きつけられました。非ユークリッド幾何学は1840年代に発見されていましたが、私たちは1910年にリーマンについて耳にしただけでした。私は非常に興味を持ちました。(略)私は生活の中にある、もう一つの次元として四次元が好きだったのだと言えるでしょう。(略)四次元は私たちの話の大部分でしたが、それは絵画を超えた魅力をもたらしてくれたのです。

引用:『マルセル・デュシャンとチェス』P127

なかでも「四次元」は好き、だそうです。

「ローズ・セラヴィよ、何故くしゃみをしない?」

で、四次元にちらっと関わっているんじゃない?という見解のある作品に触れてみます。

1921年に制作したセミレディメイド「ローズ・セラヴィよ、何故くしゃみをしない?(Why Not Sneeze Rrose Sélavy?)」です。

ローズ・セラヴィは、デュシャンが女装した際に名乗るペンネームです。

鳥かごの中に、イカの甲羅と体温計、そして152個の角砂糖大の大理石が入っています。

さて、なんで大理石が152個なのか?
サイトでは「また、152個の大理石には「Made in France」の刻印が押してあるが、152とは英知的な意味があるという。」とあります。

では『マルセル・デュシャンとチェス』ではどう解釈しているのか。

【引用】
ダミッシュは大理石の数にたいして、チェス盤にある8×8のマスの三次元化によって8×8×8=512のキューブとなり、得られた数字のアナグラムで152個となったと推測した。

引用:『マルセル・デュシャンとチェス』P166

なるほどねえ、あの作品には512個も入らないから152個は手頃かもねえ。
……って、なんかいいようにこじつけないかい、と突っ込みたくなる。
しかし、ここで裏付けっぽいものがあの作品に入っておりまっせ、イカの甲羅がカギらしい。

【引用】
デュシャン芸術における四次元の問題を探求したクレイグ・E・アドコックによる指摘で、イカの「切り身(cut)」が入っていることを、四次元の三次元的に掛けたものだとする考え方である。「イカ(squid)」は三次元の切断部である「正方形(square)」にも響きが似ており、するとこの鳥籠(グリッド)のなかに「立方体」と「正方形」があることになる。

引用:『マルセル・デュシャンとチェス』P166

どういうことか豆腐に例えてみます。

・豆腐はほぼサイコロ型(立方体)の形状としてみる。
・これは三次元にある。
・豆腐を面と平行にスライスしてみると、その切り口は正方形になる。

・では四次元の豆腐をスライスするどうなるか。
・その切り口は立方体になる。

ん?となる方もいますな、きっと。
そこらへんのイメージの助けとして例えば「四次元の球を3次元の世界に落とすと、どのように見えるか」という問題があります。
説明しているブログや動画が結構あるので、いろいろ漁ってみてください。


チェスは四次元で考える?

ところで、チェスは何次元で遊ぶゲームでしょうか?
まあ、普通に考えると三次元ですな。

〈1〉
しかし、チェスのゲームを記録するつまり棋譜は、紙の上で、二次元で十分盤面をあらわすことができます。
では二次元なのかというと、そうでもない。

〈2〉
なぜなら、コマを動かすことの「連続」で一連のゲームとなります。
この「連続」を表すには、一手一手ごとの盤面を連ねていくことで、もう1つ次元が必要となるので、三次元となります。
では三次元なのかというと、そうでもない。

〈3〉
なぜなら、大抵の場合、コマを動かす「選択」が複数あります。
この「選択」を表すには、「木構造」など枝分かれなどでつながりを広げていくことで、もう1つ次元が必要となるので、四次元となります。

デュシャンがそのように考えていたのかは、わかりませんが。

しかし、この四次元に広げたチェスで遊ぶというアイデアのバリエーションがあります。
それが「5次元チェス」です。

四次元、五次元が錯綜してわけわからない人ばかりでしょうな(汗)。
関連付けをすると、
〈1〉:空間
〈2〉:時間
〈3〉:並行正解
でして、〈1〉を平面空間(二次元)とみるか、立体空間(三次元)とみるかの違いです。

で、「5次元チェス」。
ルールをみてもさっぱり何をやっているのか把握ができんのです(大汗)。
詳しい解説や考察は、たとえばこの下のブログなどが参考になると思います。


「5次元チェス」と四次元を飛ばしてしまいましたが、考案されている「4次元チェス」もあります。

しかし、最近になってちょっとあまりいい意味で使われない言葉となっているのです。
その理由が、第45代アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプです。

【引用】
さて2016年の就任以来、そんな4次元チェスをずっとし続けている人物が地球上に一人います。いや、正確には4次元チェスをやっているのかどうかは分かりません。というのも、何度もクドくてすみませんが、我々には知覚できないのです(笑) 

そうなんです。トランプ大統領のハチャメチャな行動は、有権者の度肝を抜くことばかり。全く理解を超越しているんです。そこで、人々は次第とこう考えるようになったんです・・・大統領は「4次元チェス」をしているに違いないと(笑)


締めと予告

さて、結構な分量となったのでこのへんで一区切りとします。

ということでお気づきでしょうが、


果たして、デュシャンは袋にブロックを何個入れたのでしょうかね。


これについて、全く手を付けておりません。

はい、次回へ持ち越します。

では。


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