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□□□とボードゲーム(1.2)〜デュシャンとチェス

前回は毎年恒例の索引でした。

で、前々回の記事はこちら。

今回、相変わらずゆるくまいりたいので小数点で刻みます。

前々回の記事より

前々回の記事で、こんなことを書きました。

身もふたもないことを言ってしまうと、絵画とは「どんな色をどこに置くかの集積物」であり、突きつめれば、色彩は色素の濃淡に、位置は距離や座標に、要は数値に置き換えることができたのでAIが扱えるのだったりする。

はい、「どんな色をどこに置くかの集積物」なんてありますが、受け売りの言葉でございます。
参考としたのはこちらの文言となります。

 どうして「つくる」なのでしょうか。「つくる」とは何でしょうか。何かをつくること、それは青のチューブ絵の具を、赤のチューブ絵の具を選ぶこと、パレットに少しそれらを載せること、そして相も変わらず場所を選んで、画布の上に色を載せることです。それは相も変わらず選ぶことなのです。

引用元:以下の書籍P101

発言者は、

マルセル・デュシャン。

以下の本からの引用となります。

以前、自分はこんな記事を書きました。

こんなことを書きました。

便器も「画材」だと捉えているから驚きもしないということです。
つまり、極端に言えば
ありとあらゆる「実用品」は「画材」である
ということです。
この作品以降、「レディメイド(既製品)」という実用品そのものを美術品として扱ったり、いくつかの実用品を組み合わせてみた「シュルレアリスム(超現実)」な美術品がボロボロ登場します。

便器はデュシャンの代表作のひとつ『泉』です。
ホントは『泉』よりももっと前からレディメイドに取り組んでいましたが、ノリでまちがえております。
それはさておき。

デュシャンの先程の発言の続きですが、絵の具もまた(画材という)既製品であると見ています。

(続き)それで、選ぶために、絵の具を使うことができますし、絵筆を使うことができます。しかし、既製品を使うことができます。既製品は、機械的にせよ他人の手によってにせよ、こう言ってよければですが、すでにつくられているものでして、それを自分のものにできます。選んだのはあなたですから。選択が絵画においては主要なことですし、普通でさえあります。

引用元:『マルセル・デュシャンとチェス』P101


表紙が好き

中尾拓哉さんが著した『マルセル・デュシャンとチェス』が発行されたのが2017年で、『泉』が出展されたと言われた年が1917年ですので丁度100年目にあたります。

引用:https://www.heibonsha.co.jp/book/b284873.html

表紙はデュシャンがチェスを研究している写真ですね。
題字の配置が実に凝っていて好きです。
壁紙がチェス盤と同じくチェッカー柄になっていますが、そのマス目1つ1つに1文字が収まるようにしております。
加えて、

マルセル・
デュシャン
 と
チェス

と「と」の間の空白をふくめると、丁度プレイヤー1人分のチェスピースの数(16個)と一致します。
ま、偶然かもしれませんが素敵。


デュシャンの考案したチェスピース

実のところまだ2/3しか読んでいません。
といいつつ、気になったところを取り出してみます。

先程の発言をしていたデュシャンは芸術家として、代表作の1つ『大ガラス』を作成中のさなか、1918年にブエノスアイレスに移住します。
そして芸術から次第に離れてチェスに接近し、チェスプレイヤーとして活躍していきます。

そんなデュシャンですが、こんなチェスピースを作りたいと考案したそうです。

 他のこと――ぼくは新形式のチェスを市場に出すつもりだ、その主要な特徴は次のとおり――(中略)
 二、それらは色づけされる、つまり
 白いクイーンは ライトグリーンに
 黒い――――は ダーク――――に
 ルークはそれぞれライトブルー とダークブルーに
 ビショップは ―――イエローと ―――イエローに
 ナイトはライトレッドとダークレッド
 白いキングと黒いキング
 白いポーンと黒いポーン。
 注意してほしいのは、クイーンの色は、ビショップとルークを混ぜたものになっていることだ(クイーンの動きがそうであるように)―

引用元:『マルセル・デュシャンとチェス』P96

―――の部分は「繰り返し」の意味となります。
この引用をもとにしたのが、以下の図となります。


色が加わっている、とはいえピースの動きに変更はなく、通常のチェスと同じです。
これを「マーシャルのチェスピース」として生産販売し、売上の10%をマーシャル(当時、デュシャンが所属したニューヨークの「マーシャル・チェス・クラブ」の創始者、チェスプレイヤーのフランク・マーシャル)に支払う予定でした。
販売はしなかったようですが、試作品は作られているようです。

赤青黄緑黒白の6色は、ディック・ブルーナを思い起こしますね。

引用元:https://www.dickbruna.jp/book/index.html


しかし、また何故チェスピースに色を加えたのかですが、そこら辺はデュシャンの頭の中の話です。

締め

ということで、今回はこの辺で。
次回もこの本からまた引用しようか……と思いつつ、どうなることやら。

では。

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