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『徹底討論!パクリ問題と著作権を語る夕べ』(ボードゲームの)が配信されるので、まだnoteにしていない小ネタをとりあえず書いてみる。


今回のnoteの予定は「MENSAについて」書くつもりでしたが、Twitterでちょっと見逃せないつぶやきがありました。

(5月)25日火曜22時30分頃からボードゲームのパクリ問題や著作権について様々な視点から語り合う座談会企画を開催します!参加者はカワサキファクトリー川崎さん、オインクゲームズ佐々木さん、TGiW小野さん、翻訳家沢田さん、テンデイズタナカマさん他。

珍ぬは、今回のテーマ「(ボードゲームの)知的財産・著作権・パクリ」に関連したnoteを結構アップしていました。
それらの柱になるのは、下のリンクの記事です。

そのほかの変則的な記事をいくつかあげると、

あたり。
特に、最後のnoteは、有識者会議の参加者であるTGiW(Table Games in the World)のエッセイを受けて書いたものです。

とにもかくにも、会議参加者5名が「(ボードゲームの)知的財産・著作権・パクリ」について語るのは、聴き逃がせないなと(ただ、自分は仕事がございますのでアーカイブを拝聴します)。

そして、自分のほうですが、まだnoteにしていない知的財産権・著作権関係の話が溜まっています。
出しそびれる、というか温めていました。
で、出すタイミングだなと感じましたので、頭にあるものを出そう、というのが今回のnoteになります。

小ネタの寄せ集め、のような感じでいきます。


ボードゲームは出版物

ボードゲームの生産発注は、だいたいの場合(印刷物が大半なので)印刷会社に依頼します。

印刷会社は、知的財産権に対してどのような注意をはらっているのか。
全日本印刷工業組合連合会では、平成29年に「大きく変わる知的財産権の取り扱い」というパンフレット(PDFデータ)を作っています。

印刷物なので、主に著作権が関わってきますが、中間生成物(印刷の元版のデータなど)の所有権は印刷会社の帰属となります。

(一般的な民間というより)官公需取引に重きをおいた内容ですが、この資料は知的財産権の理解に役立つと思います。


戦後以降、日本のおもちゃは工業製品

1945年、第二次世界大戦が終結。
日本はアメリカの占領下になりました。
この時期に、日本はアメリカの下請けで様々な製品を工場で生産していました。
玩具(おもちゃ)も同様に「工業製品」として扱われていました。
その製品には「MADE IN OCCUPIED JAPAN(占領下の日本製)」と記載されます。

ビンテージの玩具に「MADE IN OCCUPIED JAPAN」が明記されていると、高値で取引されています。

で、実はこのまま現在に至る、なのです。
つまり、ボードゲームも玩具(おもちゃ)のカテゴリに入るので、戦後からずっと

ボードゲームは工業製品

で扱われています。
日本での工業デザイン(あるいは工芸デザイン)に関する知的財産権は、著作権ではなく意匠権で扱います。
双方を比較して際立った違いを1つ上げると、

著作権は無方式制、意匠権は方式制
(※方式制は、何らかの申請・登録や手続きが必要、ということ)

です。


著作権の旧名称「版権」

著作権という言葉は、1899年(明治32年)に制定された「著作権法(旧著作権法)」に、初めてあらわれました。

その前は、なんと呼んでいたのかというと「版権」です。

「版権」という言葉が初めてあられたのが1873年。
福沢諭吉が「copyright」を翻訳しました。

日常的に「版権」という言葉を使われていますが、(「著作権」に置き換わったため)法律用語としては死語になります。

ところで、上にあげたWikipedia「版権」ですが、「近代以前の日本の著作に関する権利」という項目は、非常に興味深い事が書かれているので、読むことをおすすめします。
こんなことが、気づけるからです。

版権に関しての法律(条例)が制定されたのはどうしてなのか。
ざっくり言えば、書籍も工業製品だから。


江戸時代までいってみますか

明治までさかのぼったので、もうちょっといってみます。
ということで、江戸時代。

江戸時代でも、様々な工芸品(言いかえると手工業製品)が生産されています。
では、これらの産業を誰が管理したのでしょうか。
ざっくりいうと、藩じゃないかと。
官で看ているということです。
これは、明治におりても国営や国策で工場を管理(はたまた運営)しています。
ようは、工業(というか産業)は官(国)で守っている仕組みを引き継いでいます。

では、出版関係はどうか。
著作者ではない管理者(版木屋や貸本屋などの元締めみたいな人など)が、つまり民で看ています。
これが明治に入ると、版権や著作権などに変わり、官の補助がありつつも、基本は民で守っている仕組みを引き継いでいます。


欧米はどうよ?

日本を離れて、諸外国に飛んでみます。

まず、アメリカ合衆国です。
アメリカで、玩具に著作権が適用されたのは、結構最近です。
それまでは工業製品でした。
なので、玩具の知的財産は特許商標で守っていました。

Boardgamegeekで古いボードゲームを検索して覗いてみると、FILEの項目に特許の資料があがっていることがあります。

著作権に関する国際条約として「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」があります。

1886年に発令されました。
アメリカが加盟したのは、1989年。
こんなに遅れたのは、いろいろな諸事情がありました。
1点上げると、加盟前のアメリカでの著作権は方式制(登録申請などの手続きが必要)だったようです。

つまり、著作権も工業製品と同様に官(国)で守っている仕組みが強かったわけです。

大雑把に言うと、アメリカとヨーロッパ諸国、双方の知的財産権の考え方には相当のギャップがある(あった)ということです。


でました「ギルド」

反対に、ヨーロッパは工業製品を民で守っている仕組みが昔からあり、それが現在まで引き継がれている、と思われます。

中世までさかのぼると、ゲーム好きの方なら耳にしたあの言葉がその仕組です。

ギルド(Guild)

商工の職業別組合です。
ギルドを追ってみると、ヨーロッパの知的財産権のベースが見えてくると思います。

たとえば、工業製品であっても、応用美術品という扱いで著作権を持つものがあります。
そのへんもギルドというか、工房が著作者として扱われています。

◆マイセンの陶器
◆エミール・ガレのガラス製品
◆宗教画

などが実例としてあげられます。

現代でも、ギルドはそれなりに色濃く残っていたりします。
イギリスには、ロンドン・シティ・ギルド協会があり、職業教育を行っています。
1番ギルド色が残っているのはドイツのようです。

【Wikipediaからの引用】
しかし、遅くまで封建制が残っていたドイツではギルドあるいはその行動様式が残っており、またオットー・フォン・ビスマルクも彼らを囲い込むためにギルドに支持される職業別の社会保険制度を作り上げた。この制度は21世紀まで生き残り、ドイツ社会の行動様式を根本的に規定するものだと言われている。


「ボードゲームデザイナー連盟が著作権を求めて署名活動」

ボードゲームの著作権において、2013年にドイツで起こった騒動があります。

1つ前の話題であげた「ギルド」を踏まえてみると、理解がさらに深まると思います。
ギルドの封建制や師弟制などの背景を踏まえると、

知的財産を管理している
出版社に対して、
弟子であるゲームデザイナーが
付き崩しにかかる

とも取れるからです。

ボードゲームデザイナー連盟の創設者の1人は、アレックス・ランドルフさん。
見方によっては「アメリカ的知的財産権の見解」VS「ヨーロッパ的知的財産権の見解」ともいえます。
VS(対決)としましたが、和解に向けてのポジティブ衝突になったと思います。


民で知的財産を守る

工業製品、玩具、ボードゲームの知的財産についてつらつらと書きました。
現在のところ、日本でのボードゲームの知的財産は、官が方式制で守る仕組みになっています。
最近になって、ボードゲームのパクリ騒動が露見するようになりました。
背景としては、官に全て頼る仕組みでは追いつかなくなっているけど、かといって民で守るには無秩序すぎる、そんな状況だからかも知れません。

なので、ボードゲームに近しい事象から、なにかヒントを得られないかと考えます。
その1つが、スポーツです。
以前、noteでこんなのを書きました。

スポーツは、ボードゲームと同じく著作権はありません。
しかし、1つのスポーツの知的財産を保つための方法として「協会(Association)」を設立しています。

実際に、個別のボードゲーム(例えば、『カタン』や『オセロ』、『ツイクスト』など)にも協会があります。
これの応用となると、ジャンルごと、例えば「ワカプレ協会」や「トリテ協会」など設立してみるのも1つの策かもしれません。


バンクシーが守る「知的感染権」

実はバンクシーも、民で知的財産を守るために、自らの作品であることを認証する自前の機関「ペスト・コントロール」を設立しています。

以前、バンクシーについて非常に奇妙なことをnoteしたことがあります。

バンクシーの制作したグラフィティアートや版画、絵画などの美術作品は「画材」である、と仮説を立てました。
言いかえると、著作物ではなく、応用美術品的な工業製品としてみる、です。

そんなあやふやな存在は、各国で定めた(知的財産に関する)法律にあわせるよりも、

自前のルールを軸にして、知的財産
もとい、
知的感染権(Intellectual infection right)
を確立する

ほうが、管理や保守のトラブルが少ないでしょう。
このことも、ペストコントロールが生まれた一因ではないか、と考えます。


終わり

ということで、頭の中の在庫をさらってみました。
まあ、ボードゲームの知的財産権を考える視点程度にみてください。
いろいろと間違い・勘違いなどあるかも知れないので、指摘があるとうれしいです。

ということで、配信を待ちます。

では。

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