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せまゲー生半可集(15)~『Dawson's Chess』こと0.137

前回の記事はこちら。

今回は、いろいろとややこしい立場のゲームの紹介です。
一次元盤面のゲーム、もしくは、不偏ゲームをせまゲーとして括っているのですが、見た目はどう見ても一次元盤面ではないし不偏ゲームでもないのに、せまゲーという摩訶不思議なゲーム、『Dawson's Chess(ドーソンズ・チェス)』です。

『Dawson's Chess』とは

『Dawson's Chess(ドーソンズ・チェス)』の考案者は、Dawsonさんです。
フルネームは、Thomas Rayner Dawson(トーマス・レイナー・ドーソン)さん。

彼の二つ名が

"the father of Fairy Chess(変則チェスの父)"

です。
1930年に、イギリスで変則チェスをメインにした雑誌『Fairy Chess Review(フェアリー・チェス・レビュー)』を出版しますが、その初代編集長がDawsonさんです。

『ドーソンズ・チェス』は、1935年に考案されました。

盤面は、縦は3マスで横は適当なマス数のチェス盤です。

使用するコマは、通常のチェスのポーンです。
ゲームの準備は、盤面の両端にそれぞれのマス目の数だけ互いのプレイヤーのポーンを配置します。

ポーンの動かし方は、通常のチェスと同じです。
ただし、1つ追加ルールがあります。

相手のコマ(ポーン)が捕獲できるときは、
必ず捕獲しなくてはならない。

です。
ゲームの勝敗は、手番のときに自分のコマを動かすことができなくなったら、その手番のプレイヤーが負けとなります。

さて、どうみてもせまゲーにはみえない『ドーソンズ・チェス』。
どうしてせまゲーなのか、試しにプレイしてみましょう。

あれ?そっくりだわ

では、『Dawson's Chess(ドーソンズ・チェス)』の例として、縦3マス横10マスの盤面を用意します。
ポーンは白黒それぞれ10個並びます。

先手は白です。
第1手目として、真ん中へんのポーンを動かします。

次の手番のプレイヤーは、相手のポーンを取らなくてはいけません。
次の次の手番も、相手のポーンを取らなくてはいけませんので、連続して追ってみます。

動いて取られて取って取られて取り返した。

連続取りが終了しました。
さて、確認します。
まず、コマを取りつ取られつした盤面の横3列ですが、その後のゲームではコマが移動することはありません。
さらに、手番は黒となります。

一方、ちょっと置き換えをしてみます。
『ドーソンズ・チェス』の縦3マスを1マスに圧縮して、双方のコマどちらも移動できる状態のときには、石が1個置かれている状態とします。

上が『ドーソンズ・チェス』で、下が置き換えた状態です……が、なんか「Octal Game(8進ゲーム)」ぽいですよね。

さて、これをふまえまして、例であげた第1手目を置き換えると、

となります。
右から数えて5列目――白が1つ前に進んでいる――は、双方これ以上コマを動かすことができませんので、石を取り除いています。

むむむ。
なんかこれ、前々回の記事で書いた『Treblecross(トレブルクロス)』を「8進ゲーム」で考えた時の盤面

石3個取って、山を2つに分裂する

のと、全く同じです。


「8進ゲーム」0.137

タイトルにも書きましたが、実は『Dawson's Chess(ドーソンズ・チェス)』は、「8進ゲーム」であらわすと0.137となります。
かみくだくと、

小数第一位:1
石を1個取るアクションは、消滅(1)しかできない。
小数第二位:3
石を2個取るアクションは、消滅と残存(1+2=3)ができる。
小数第三位:7
石を3個取るアクションは、消滅・残存・分裂(1+2+4=7)ができる。

となります。

図に表してみると、例えば、『ドーソンズ・チェス』で、手番で横2列分のアクションがおきるのは、一連の並びの両端でコマを動かす状況(左:結果は残存(2))、もしくは、2列の並びでコマを動かす状況(右:結果は消滅(
1))です。

上にならうと、3列で結果が残存(2)や消滅(1)、1列で結果が消滅(1)も例示できます。

もちろん、どの場合も、次の手番は相手に渡ります。

『ドーソンズ・チェス』は非不偏ゲームのはずですが、完全に挙動は不偏ゲームになっています。

締め

ということで『Dawson's Chess(ドーソンズ・チェス)』の紹介でした。
相当長く「Octal Game(8進ゲーム)」シリーズを続けておりますが、次回で一区切り付ける予定です。

次回は、「8進ゲーム」だと0.07であらわせるゲームを紹介します。
その名は「Dawson's Kayles(ドーソンズ・ケイルズ)」 。

では。

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