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本日公開!映画『カラーパープル』の歴史

 『カラーパープル』がミュージカル化されるという話を聞いたとき、「正気か!?」と思ったのは自分だけじゃなかったはず。

 1985年にスピルバーグによって映画化された本作は、いまのパプリックイメージとは全く違うウーピー・ゴールドバーグがひたすら耐え忍ぶ女性を演じ、日本で言えばそれは「おしん」でした。

スピルバーグと『カラーパープル』

 スピルバーグも今でこそ巨匠ですが、自分が物心つくころはまだそこまでのイメージはなく、現在の地位を確立するまでにはかなりの年月を要しました。

 『カラーパープル』公開当時は、『E.T.』(子どもの頃「E.T.」の造形怖かったな…)の大大大ヒットのあと、「インディ・ジョーンズ」シリーズの続編も大ヒットした向かうところ敵なしの状態。
 一方、明らかにエンタメ系の監督として見られていて、「作家として見られたい」という思いが強かったのでしょう。
 原作者のアリス・ウォーカーの反対に会いながら、『カラーパープル』を手掛け、アカデミー賞で自身のノミネートを含む10部門のノミネートを果たします。

 ところが11候補(助演女優賞で2人ノミネートされたため)にも上がったのに、ひとつも受賞できなかったのです。今なら大問題になりそうですね。

映画初出演だったウーピー・ゴールドバーグとオプラ・ウィンフリー

 1985年版の『カラーパープル』のすごいところは、前述のとおりウーピー・ゴールドバーグが主演し、さらにオプラ・ウィンフリーも出演していたこと。ふたりともこの映画が初出演でした。

 ウーピー・ゴールドバーグは俳優業を一旦休業したあと、スタンダップコメディアンや司会業をしていたように、どちらかといえばコメディが得意な俳優です。
 それは『ゴースト/ニューヨークの幻』のオダ・メイ役(いま見てもこの映画のウーピーはどこを切り取っても笑っちゃうし、サイコー)を見ても明らかです。

 なのに原作者のアリス・ウォーカーはスタンダップコメディの舞台に立っていた彼女を観て抜擢したそうです。アリス・ウォーカーすごい!

 そしてオプラ・ウィンフリー。(紫色の服を着ているのが彼女です)

 今回のミュージカル版『カラーパープル』のプロデューサーを務める彼女は、おそらくアメリカで一番有名なセレブリティ。
 彼女を大統領にと期待する者が絶えない彼女もこの映画なかったら現在の地位がなかったかもしれないと考えると、映画『カラーパープル』はアメリカの歴史を変えた映画かもしれません。

そしてミュージカル化

 この小説がミュージカル化されたのは2005年のこと。
 スピルバーグの映画化から20年後のことでした。

 そのミュージカルもヒットしたようなのですが、圧倒的に有名なのは2015年版です。
 アカデミー賞にノミネートされたシンシア・エリヴォ、菊地凛子を抑えて受賞したジェニファー・ハドソンを主演に迎えたミュージカルは第70回のトニー賞を受賞し、グラミー賞も手にしました。

 この状況を見て映画ファンは「これは映画化されてアカデミー賞受賞するやつだ!」と思ったはず。私もそうです。

再映画化はされたけれど

 そしてスピルバーグ、オプラ・ウィンフリー、クインシー・ジョーンズをプロデューサーに迎え、昨年末満を持して公開されたのがミュージカル版映画『カラーパープル』なのです。

 でもね、セリー(主人公)はシンシア・エリヴォじゃないし、シャグもジェニファー・ハドソンじゃなかったんですよね…。

 セリーはファンテイジア・バリーノが演じました。

 「アメリカン・アイドル」出身で主人公に抜擢、という点ではジェニファー・ハドソンと同じだけれど、ハドソンの『ドリームガールズ』と比べて初演からそれほど年月が経っているわけではない(『ドリームガールズ』はブロードウェイ初演が1981年)ので、キャストを変える理由があまりない上、シンシア・エリヴォは映画でも活躍している。

 シャグはタラジ・P・ヘンソンが演じたので、格落ち感はあまりなかったのですが、それでもブロードウェイのファンはジェニファー・ハドソンが演じることを期待していたはず。

 ブロードウェイ版からスライドしたのはダニエル・ブルックスのみで、彼女がこの作品から唯一アカデミー賞にノミネートされたことを考えると、シンシア・エリヴォとジェニファー・ハドソンがそのまま演じていたら…と思わずに入られません。

「賞レースで奮わなかった=つまらない」ではない

 ただそれは賞レースにおいてのこと。

 『カラーパープル』は、キャストがほぼ黒人のみなので、日本人による舞台化が難しいですし、ブロードウェイミュージカルとして上演するのも興行的にハードルが高そうです。

 なのでミュージカルファンが自国で楽めるということを考えると、北米公開から2か月足らずで日本公開されたのはすごく良かった!

 ミュージカルなので「おしん」的要素は大分薄まってますし、女性エンパワーメント映画として、楽しめる映画に仕上がっているのではないかなと思います。

 ただ正直なことを言うと、これを舞台で観たら、100倍くらい感動しただろうなとは思ってしまいました。

本日の一曲

 ジャパンプレミアで、3時のヒロインが踊り、リリコが歌い出した曲のジェニファー・ハドソン版を本日はどうぞ。

 デビュー作でアカデミー賞を受賞してしまったジェニファー・ハドソンは今後のキャリアがどうなるか少し心配していましたが、その圧倒的歌唱力でエンタメ界をサバイバルしていますね。

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