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憂鬱な日曜の夕方が、迷子の美人さんと出会って変わった 3話


ー会社ー


〇〇:よし、出来たッと!

キーボードのENTERキーを押し、資料作成を終わらせていた。

?:〇〇、なんか今日ご機嫌だな?

〇〇:え、そうかな?

?:うん、この間彼女さんと別れたばかりなんて思ないくらい。

〇〇:あぁ…

?:あ、すまん!余計なこと言ったわ…

〇〇:平気だよ、もう1ヶ月前のことだし。

?:1ヶ月じゃ吹っ切れなくないか?普通。

〇〇:そうかな…ま、今日じゃなくて昨日から良いことあるのは間違いないけど。

?:何々?教えてくれよ〜

〇〇:いや、秘密だから。

?:なんだよ〜、ケチ笑

同僚と他愛もない会話をして笑ったのも久しぶりかもしれない。



ここ最近、最低限の会話くらいしかしていないし、飲み会とかもことごとく断ってきたから。


?:あ、そうだ。今度久しぶりに呑みに行こうぜ。

〇〇:良いよ!

?:よし。決まりだな。

ポンッ

?:今日も頑張ろうぜ。

〇〇:そうだな。


何気なく平穏な時間が過ぎた。




ー〇〇の家ー

さくら:何しようかな〜


〇〇の家で1人留守番していたさくらは、家の中を歩き回っていた。


さくら:あ、そうだ!

リビングに置いてあった掃除機をコンセントに繋ぎ、さくらは部屋中の床に掃除機をかけ始めた。

さくら:お掃除しておけば、きっと〇〇さん喜んでくれるよね。



数十分後…


さくら:はー、暇だ…

掃除が終わり、また何もしない時間が始まるとさくらはソファーに座ってボーっとしていた。

さくら:ふぁ〜、寝ちゃおっかな?

さくら:んふふ♪

昼寝…にしては早過ぎる時間に、さくらはソファーに横たわり枕を抱いて目を瞑った。

さくら:zzz





…く、起きて。

さくら:ん…

〇〇:ほら、さくの大好きなカレー出来たよ。

さくら:〇〇さん?

さくら:(待って…〇〇さん、私のこと急に呼び捨て!?)

〇〇:どうしたの?急にさん付けなんかして。

さくら:いや…だって…(しかも、さくって…)

〇〇:ほら、食べようよ。

さくら:う、うん!(でも、なんか嬉しい)


さくら:いただきま〜す!

さくら:ん〜、おいひぃ〜!

さくら:〇〇くんの作るカレー、世界一美味しい!

〇〇:へへ、嬉しいな〜

さくら:(なんか、よく分からないけど…)

さくら:(凄くしあわ…)

その瞬間、さくらの視界が暗くなる。




さくら:んはっ!?

目を覚ましたさくらが、辺りを見回した。

さくら:夢、か…

時計を見ると、午後5時だった。

さくら:いっぱい、お昼寝しちゃった。

さくら:あ、そうだ。

さくらは冷蔵庫を開けて、食材がどれくらいあるか確認した。

さくら:う〜ん、あんまりないか…

さくら:よし、買ってこよう。


〇〇から貰った一万円札を持って、さくらはスーパーに食材を買いに行った。


数十分後…


さくら:よしよし、帰ったら急いでカレー作って…

さくらが持っていたスーパーのレジ袋には、にんじんやじゃがいも、玉ねぎ、肉といったカレーの定番の具材とカレーのルウが入っていた。

さくら:〇〇さんを喜ばせようッと。

さくら:ふふ。

夢でみた〇〇との同棲生活に、さくらは胸を馳せていた。

さくら:〇〇さんとだったら、きっと楽しいだろうな…

さくらがそう思いながらウキウキして歩いていると、車道を挟んで向こうの歩道を一組のカップルが喋りながら通っていく。


?:でさ…アイツがさ。

?:あはは、ヤバくない?

さくら:⁉️

さくら:はぅ…あ…あ…

そのカップルを見た瞬間、さくらは頭を抑え始めた。

さくら:い、痛い…

フラつきながら、さくらは公園に移動しベンチに座った。


さくら:う、うぅ…

頭痛が激しくて、さくらの額から汗が流れていた。

さくら:⁉️

すると、さくらの脳裏に顔が見えない誰かが罵声を自分に浴びせて拳を振り上げる映像が映った…


?:っざけんなよ❗️

さくら:やめて…

シュンッ


さくら:⁉️





〇〇:ふ〜、やっと家に帰れるぞ〜

駅から歩いてきて、ようやく家の近辺にまで辿り着いた。

〇〇:今日は、何作ろうかな?

〇〇:ん?

通りかかった公園のベンチに、蹲っている女性が見えた。

〇〇:⁉️

その服装で誰なのかは直ぐ分かった。


〇〇:さくらさん❗️

さくら:!

涙が少し垂れていた顔は俯かせたままだが、こちらに身体を向かせていた。

〇〇:何かあっ…

ギュッ

さくらさんのもとに寄った瞬間、無言で抱きつかれた。

さくら:・・・

〇〇:(さくらさん…)

さくら:〇〇さん、私…

喋りながら、さくらさんの涙がスーツに染みた。

さくら:私…

さくら:!

何も言わず、そっと腕をさくらさんの背中にまわして包んだ。


〇〇:帰りましょ。

さくら:え?

〇〇:一緒に家に。

〇〇:ここじゃ、風邪引いちゃいますから。

さくらさんから離れて、それから彼女の手を握って言った。

さくら:〇〇さん…

涙を垂らしながらだったが、少しだけ笑みを見せてくれた。


〇〇:それに、お腹空きましたし。

さくら:そうですね。

手を繋いで、2人で家に帰った。




それからさくらさんが買ってきてくれた具材で、一緒にカレーを作った。


俺がいない間、さくらさんに何かあったのは間違いない。


さくら:美味しいです!

〇〇:ふふ、良かったです。

さくら:一緒に作ったからですね。

〇〇:ですね。さくらさんも料理上手だし。

さくら:いや、私なんかそんなに…

さくら:でも〇〇さんとなら、難しいのとか作れるかも。

〇〇:じゃあ、今度何か一緒に作りますか。

さくら:是非お願いします、〇〇シェフ。

〇〇:やめてくださいよ、そんなんじゃないですし笑

さくら:ふふ、良いじゃないですか。私にとっては、本当にそうですから。


けど、今はそっとしておきたい。

食卓でカレーを食べながら目の前の天使のような笑顔を見ると、

余計にそう思ってしまう。



4話に続く

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