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憂鬱な日曜の夕方が、迷子の美人さんと出会って変わった 2話


(雀の囀る音)


〇〇:ん…

結衣:おはよ、〇〇。

〇〇:結衣、ふぁ〜…おはよ〜。

結衣:こら、布団に潜らないの。

〇〇:だって、眠いんだもん。

結衣:寝坊しちゃうよ?

バサッ



〇〇:うわっ、寒っ!

結衣:どう?起きたでしょ?笑

〇〇:う、うん。

結衣:朝ごはん、もう作ったから食べよ?

〇〇:え、ありがとう。


〇〇:ん〜、美味しい。

結衣:良かった〜

〇〇:結衣の作った朝ごはん美味しいから、今日も頑張れそう。

結衣:それは何より。

結衣:じゃ、夜は〇〇が作ってね。

〇〇:うん、もち…

〇〇:(え?視界がボヤけて…)




〇〇:んはっ!?

〇〇:はぁ…はぁ…

汗ばみながら目を覚まして、元カノとの夢を見ていたことを自覚した。

〇〇:結衣…

つい1ヶ月前まで一緒に住んでいた、かけがえのない人だった。

けど…


〜1ヶ月前〜

〇〇:本気で出て行くの?

結衣:ごめん…

荷物をまとめたスーツケースを持って、結衣が玄関に向かう。

結衣:〇〇と一緒には、もう居られない…

〇〇:なんでだよ?

結衣:今までずっと一緒だったけど、相性悪いみたい…

〇〇:相性?なんだよそれ…

〇〇:俺に不満があるなら教えてくれよ!

〇〇:直すからさ!

玄関のドアを開けた結衣を呼び止めるように叫んだ。


結衣:不満は、無いよ…

〇〇:じゃあ…尚更なんで…

結衣:だから、相性なの。

結衣:ごめん、もう行くね。

バタンッ

引き留めようとしたが、玄関のドアは閉じられた。



自分が寝ていたベッドの横にスペースがあるのを見て、どこかでまだ結衣と住んでいる気がしていたのかもしれない。

だから、あんな夢を…

〇〇:今更阿保だな…俺も。

一人ごとを呟いて、洗面所に顔を洗いに行った。




(フライパンで料理する音)

〇〇:!?

〇〇:まさか…

結衣が戻ってきた。

そんな期待を抱いてキッチンの方に向かった。


さくら:あ、おはようございます!

フライパンで、おそらく目玉焼きを作っていたのは結衣ではなかった。

〇〇:あ…

目の前にいる美人こと、さくらさんの顔を見て昨日のことが脳内に再生されていく。

日曜なのに夕方まで寝過ごして落ち込み、仕方なく散歩していたらナンパされていたさくらさんと出会い、ナンパを追っ払って家まで連れてきてそれからご飯食べて、それからベッドで一緒に…

〇〇:はぁわ!!

恥ずかしくなって、顔を隠してしまう。

〇〇:(思い出した…昨日の夜…)

隣で寝ていたさくらさんの寝顔を見過ぎて、自分の顔が湯ダコみたいになっていたのを。

結衣と一緒に生活していた時は、申し訳無いがそんなことはなかったのだが…


さくら:あの…大丈夫ですか、〇〇さん?

〇〇:へ、ああ…

顔を隠しているこちらを見て、さくらさんが首を傾ける。

〇〇:だ、大丈夫です笑

〇〇:それより、さくらさんが朝ごはんを?

さくら:はい、家に泊めさせてもらっている身ですから。といっても目玉焼きぐらいしか作れませんが…

〇〇:いや…全然…(というか申し訳無い。)

さくら:今日、お仕事ですか?

〇〇:え、ああ。そうです。

さくら:じゃあ、丁度良かったです。〇〇さんが朝ごはん食べられるようにできて。

そう言いながら、ニコっとするさくらさんだった。

〇〇:なんかすいません、ありがとうございます。

さくら:いえいえ。

それから顔を洗ってスーツに着替えて、食卓でさくらさんと朝ごはんを食べ始めた。




〇〇:美味しいです、さくらさん。

さくら:ふふ、良かったです。ベタな朝ごはんですが。

〇〇:いえ、そんな…

〇〇:最高ですよ。

目玉焼きの黄身が半熟でトロりとしていて、自分が好みの目玉焼きだった。

それだけでも嬉しいのに、

さくら:お世辞でも嬉しいです。

〇〇:いや、お世辞なんかじゃ…笑

さくら:昨日はありがとうございました。

さくら:変な男の人たちから助けてくださって。

〇〇:え、ああ…いえ。

〇〇:なんか放っておけなくて…

〇〇:って昨日も話しましたよね、これ?

さくら:ふふ、そうですね。

さくら:でも〇〇さんがカッコ良かったので、つい…

〇〇:え、ああ…

さくら:ふふ。

時々笑顔になったり、時々真っ直ぐな眼差しをむけたりするさくらさんといると、月曜の朝なんて思わせないくらい幸せな空間にいた。



そういえば、家でこんな感じに食事するのなんていつ以来か…


1ヶ月前まで、元カノとの食事も別に酷く暗かった訳では無いが、こういうのは欠けていたのかもしれない。


〇〇:ご馳走様です。

さくら:お粗末さまでした。

〇〇:じゃあ、俺はこれで会社に行きますね。

さくら:はい。

〇〇:あ、さくらさん。ここから家にって一人で帰れます??

さくら:ああ…

見た感じ帰り方が分からない様子だったので、スマホで駅の乗り換えを検索してあげようとした。

〇〇:あの、最寄り駅だけ教えてくれればそこまでの帰り方を調べ…

さくら:思い出せないんです、自分の家。

〇〇:え?

さくら:自分がどこに住んでいたか思い出せないんです、何故か。

〇〇:(記憶喪失…ってこと?)


参ったな…と思いながらも時計を見ると、今すぐ家を出ないと会社に間に合わない時間になっていた。

〇〇:あ、じゃあ。

〇〇:取り敢えず、今日も家にいてもらって…

さくら:あ、はい!そうさせてもらいます。

〇〇:(でも、それだけじゃ暇だよな…)

〇〇:ちょっと待っててください。

さくら:?

合鍵を探してきて、さくらさんに渡した。

〇〇:これでどこか出かけたい時には、家に鍵かけてもらって。

〇〇:あと、お金渡しておきますね。

財布から1万円札を取り出して、さくらさんに渡した。

さくら:いえ、そんなことまでしてもらわなくても…

〇〇:気にしないでください。

〇〇:さくらさんの記憶が戻るまで、一緒に居ますから。

さくら:〇〇さん。

さくら:すいません、本当に!

〇〇:いえ。


玄関に移動して、

〇〇:じゃあ、いってきますね。

さくら:は、はい。

さくらさんに言った。

さくら:気をつけて、お仕事頑張ってください!

笑みを見せながら拳でガッツポーズして、さくらさんは見送ってくれた。

記憶喪失なのは心配だったが、さくらさんから可愛いエールを送られ仕事場に行くモチベが高くなっていたのは間違いなかった。

〇〇:(取り敢えず仕事頑張って、帰ったらまたさくらさんに料理作ってあげよう。)

久々に、生き生きとした朝だった…



3話に続く…

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