木陰で目を覚ますと、いつも優しい2人が微笑んでいた。
青空の下、木陰で1人の男の子が木に寄りかかって寝ていた。
?:zzz
風が吹き、その小さな頭の髪を揺らしていた。
そこに、草原を踏む足音が2つ近づいてきた。
?:あ、見つけた!
?:やっぱりここにいたね、しーちゃん。
彼女たちは、この木陰で小さな鼻息を鳴らして寝ている男の子を探していたらしい。
史緒里:ねぇ、見てよみづちゃん。
史緒里が、膝を下ろして男の子の頭を撫でながらその子を見つめていた。
美月:あ、しーちゃんだけズルい!
史緒里に嫉妬して美月も彼女の隣に来て膝を下ろして、スヤスヤと眠る男の子を愛でていた。
史緒里:そんなにほっぺ突っついたら、〇〇くん起きちゃうって!
美月:しーちゃんだって、〇〇くんの頭撫で撫でしてるじゃん!
史緒里:だって、こんな可愛いんだよ?
〇〇:zzz
2人が騒いでいても、木陰で〇〇は安らかな表現で眠っていた。
史緒里と美月は従姉妹同士で、〇〇は2人とは血縁関係は無いものの近所に住んでいるということでよく2人に一緒に遊んでもらっていた。
まだ5歳の〇〇を、史緒里と美月は弟のように可愛がっていて、〇〇も2人に懐いていた。
美月:本当、天使みたいだよね。
史緒里:ねぇ、本当に。
2人して〇〇を見て微笑んでいた。
美月:どうする?
史緒里:えっ、ん〜…
少し間を置いて、史緒里がニヤけながら美月の方を向いた。
史緒里:ねぇ、みづちゃん?
美月:何?
史緒里:このままさ、3人で寝ちゃおうよ!
美月:ぶふっ、もうしーちゃんってば笑
美月:大賛成!
2人は〇〇を挟んで、木陰で仰向けになって寝そべった。
美月:うわぁ〜、すっごい青空!
史緒里:みづちゃん、声おっきいって。
美月:あ、ごめん!
〇〇:ん…
美月の声に反応したのか、〇〇が目を瞑ったままあくびをして腕を伸ばし始めた。
史緒里:起きちゃったかな?
〇〇:…ん?
目を開けた〇〇には、左右に史緒里と美月が微笑んでいるのが見えた。
〇〇:しーちゃん?
〇〇:みづちゃん?
史緒里:おはよう、〇〇くん。
美月:ごめんね、寝てたのに起こしちゃって。
美月が謝ると、〇〇が顔を横に振った。
〇〇:ううん、だいじょうぶ。
〇〇:ここにくるとね、なんかねむたくなっちゃうんだ〜
〇〇:なんでだろうね?しーちゃん、みづちゃん。
史緒里:分かるよ、ここに来ると私もこうしたくなるもん。
美月:ね、なんか落ち着くよね〜
〇〇の両隣で史緒里と美月が腕を伸ばして背伸びし、それから〇〇にまた微笑みかけた。
〇〇:あ、そうだ!
史緒里と美月から離れた〇〇は、綿毛のついたたんぽぽを1本摘み取って持ってきた。
〇〇:しーちゃん。
史緒里:何?
〇〇は持ってきたたんぽぽを史緒里の前に差し出した。
〇〇:ふ〜ってしてみて。
史緒里:良いよ〜
史緒里:ふ〜
史緒里がたんぽぽに息を吹き掛けると、綿毛が宙に向かって飛んでいく。
〇〇:うわぁ〜
史緒里:ふふ、綺麗だね。
美月:む〜
美月が1人不貞腐れていると、〇〇がもう一本綿毛のついたたんぽぽを持ってきた。
〇〇:はい。
美月:え?
〇〇:みづちゃんも、ふ〜ってしてみて。
美月:あ、う、うん!
美月:ふ〜
美月がたんぽぽに息を吹き掛けると、また綿毛たちが宙を飛んでいった。
美月:うわぁ〜、ふふ。
〇〇:きれいだね、みづちゃん。
美月:ね、なんか魔法みたい。
史緒里:良かったね〜、みづちゃん。
史緒里が美月に向かって余裕ありげな感じに言った。
美月:な、何その悪そうな顔は?
史緒里:いやいや、別に〜笑
美月:しーちゃんだけのじゃないから、〇〇くんは!
史緒里:そんなムキにならなくても良いじゃん。
美月:べ、別にそんなんじゃ、ないですけど??
史緒里に挑発されている美月を、〇〇が心配そうに見つめてきた。
〇〇:みづちゃん?
美月:ん?どうしたの?
〇〇:もしかして、おこってる?
美月:え、ううん!違うよ。
〇〇:ごめんね、さきにしーちゃんとたんぽぽをふ〜ってしちゃって。
美月:いやいや、〇〇くん何も悪くないよ!
〇〇:さんにんで、いっしょにやればよかったね。
そう言って〇〇はまた、たんぽぽを取りに行った。
〇〇:はい、しーちゃん、みづちゃん。
史緒里・美月:え?
〇〇の手には、3本の綿毛のついたたんぽぽが握られていた。
〇〇:いっしょに、ふ〜ってしよう?
史緒里:え、ああ…
美月:じゃあ…
3人で同時にたんぽぽに息を吹き掛ける。
ふ〜
3人が同時に吹くと、辺りに白い魔法の粉が舞い散っているかのように見え、3人とも見惚れていた。
美月:綺麗…
史緒里:うん、さっきよりずっと…
〇〇:さんにんでいっしょにやったからだね。
小さな〇〇がそう言うと、史緒里と美月が〇〇に抱きついてきた。
〇〇:うわぁ⁉️
美月:良い子過ぎる‼️
史緒里:これは将来が楽しみだわー‼️
〇〇:な、なんで?
美月:間違いなくモテる!
〇〇:も、もてるってなに?
動きを制限された小さな〇〇には、意味が分からず聞き返した。
史緒里:えっと、モテるってのは〇〇くんを好きになる人がいっぱいになるってことだよ。
〇〇:へ〜
ぽか〜んとした顔になる〇〇だったが、すぐ2人に向かって〇〇は満面の笑みを見せて言った。
〇〇:でも、ぼくはしーちゃんとみづちゃんがだいすきだよ。
史緒里・美月:へ⁉️
史緒里:い、今なんて言った?
〇〇:え、だからしーちゃんとみづちゃんがだいすきって…
美月:聞いた⁉️聞いたよね⁉️
史緒里:うんうん❗️
〇〇:うわぁ⁉️
愛の告白と思い込んだ史緒里と美月が、一度は解放した〇〇に再び抱きつく。
史緒里:私も〇〇くんが、だいだいだーいすき!
美月:みづは、〇〇くんがだいだいだいだーいすきだからね!
〇〇:う、うん…
苦笑いしながら小さな〇〇は頬が赤くなっていた。
それから、12年後…
〇〇は高校生になっていた。
〇〇には、学校で好きな人が出来ていた。
その人は、サッカー部のマネージャーをしていた。
校内でも美人と評判が高く、〇〇にとっては話すことはない遠い存在だと思っていた。
けど、とある偶然で彼女と話す機会が生まれ、それから〇〇は彼女との学校での交流が多くなった。
そして、〇〇は彼女に告白することを決心した。
〇〇:どうしても伝えたいことがあってさ…
茉央:うん。
屋上に呼び出して、〇〇は遂にその気持ちを伝えた。
〇〇:ずっと、茉央ちゃんのことが好きだったんだ。
茉央:あっ…
〇〇:もし俺なんかで良ければ…
〇〇が言いかけた時、茉央が急に頭を下げた。
茉央:ごめん!
〇〇:え?
茉央:本当にごめんな!
〇〇:あっ…
すぐに〇〇は悟った。
〇〇:やっぱり、無理だよね…
茉央:〇〇くん…
〇〇:いや、良いんだ。こっちこそ、ごめんね。
〇〇:やっぱり、俺なんか似合わないよな笑
茉央:違うの、その…
〇〇:え?
茉央:〇〇くんの気持ち、茉央は凄く嬉しいで。けど、ウチもう居るんや…
茉央:この学校じゃないんやけど、他の高校に…
〇〇:え、あぁ…
初めて知ったことだが、〇〇はより申し訳なく思った。
〇〇:そうだったんだ…
茉央:ほんま、ごめんな。
〇〇:ううん…大丈夫。
告白は失敗に終わった。
仕方ない理由ではあった。
茉央から、これからも友だちでいてほしいと言われた。
その気遣いが、より〇〇の心を苦しめた。
数日後…
〇〇:はぁ…ただいま〜
〇母:おかえり〜
帰宅した〇〇は、鞄を床に落としてソファーにダイブした。
〇〇:はぁ…
〇母:ちょっと、ため息ばっかりつかないの。
〇〇:え、あぁ…ごめん。
〇母:もう、フラれたショックは分かるけど、いつまでも引っ張らないのよ?
〇〇:そりゃ、分かってるけどさ…
フラれたショックは勿論だが、茉央に気遣わせてしまっている自分が情けなくて、あの日告白してから一切〇〇は茉央と口を聞いていない。
〇〇:はぁ…俺ってダメな男だ…
〇母:独り言言ってないで、着替えてきなさいよ。
〇母:あ、そうだ!
何かを思い出したのか、〇〇の母が声を上げる。
〇〇:何、どうしたの?
〇母:今度の休みの日、バーベキューしに行くわよ。
〇〇:ふ〜ん。
気持ちが落ち込んでいてそれどころじゃない〇〇は、興味無さそうに返事した。
〇母:ほら、いつまでも引っ張らない!
暗い顔の〇〇の肩を叩いた。
〇母:しーちゃんとみづちゃんも来るんだから。
〇〇:え?
一瞬、〇〇は耳を疑った。
〇〇:今なんて…
〇母:え?だから、しーちゃんとみづちゃん。
覚えてないの?小さい頃、よく遊んでもらった…
その瞬間、〇〇の脳裏に史緒里と美月との思い出が蘇ってきた。
(回想)
史緒里:うわぁ、早い〇〇くん!
〇〇:えい!
〇〇:やったぁぁ!しーちゃんがつぎおにだよ。
美月:よし、逃げよっか〇〇くん!
〇〇:うん。
史緒里:このおぉー!絶対追いついてみるから!
美月:だからって、私ばっか追いかけないでよ〜
あはは、あはは。
(ここまで回想)
〇〇:ほ、本当に来る?しーちゃんとみづちゃん?
〇母:そうよ、2人も久しぶりに〇〇に会いたいって言ってたわよ。
暗い気分は直ぐに吹き飛び、〇〇は飛び跳ねた。
〇〇:っしゃあああ‼️
〇母:ちょっと、声大きい〇〇!
〇〇:あ、ごめん母さん…
〇母:でも良かった、〇〇が喜んでくれて。
〇〇:うん、今すっごく嬉しいもん!
それから〇〇は、バーベキューをする日が待ち遠しくなっていた。
〇〇:(しーちゃんとみづちゃんに久しぶりに会える!)
〇〇:(てか、いつぶりだ?会うの。)
お互い成長しているから、最後に見た時とは違う姿で再会することになり、〇〇にはそれが楽しみであると同時に若干緊張していた。
そして、バーベキューの日…
〇父:着いたぞー。〇〇、トランクから荷物出そうか。
〇〇:うん、父さん。
〇母:楽しみね、お父さん。
〇父:ああ、久保さんと山下さんにはお世話になっていたからな〜
〇父:な?〇〇笑
〇〇:うん。
〇母:もうこの子ったら、フラれてずっと落ち込んでいたのに、2人に会えるって聞いたら飛び跳ねて喜んじゃってね〜
〇〇:良いって、何回もそれ言わなくて!
〇父:ははは、それは良かった。
バーベキューに使う食材や道具を運んでキャンプ場に向かうと、待ち合わせをしていた久保一家と山下一家が既に居た。
それぞれのご両親に挨拶を済ませると、いよいよ〇〇はあの2人と顔を合わせた。
史緒里:久しぶり〜、〇〇くん!
美月:〇〇くん、大きくなったね!
2人に声をかけられた時、〇〇は余りの衝撃に息を呑んでいた。
〇〇:(しーちゃん!?みづちゃん!?)
〇〇:(なんか…凄く綺麗になってる!)
美月:〇〇くん?
〇〇:え?
史緒里:もしかして、私たちのこと忘れちゃった?
〇〇:え、いやいや❗️
顔を横に激しく振って〇〇は否定した。
〇〇:しーちゃん、みづちゃんだよね?
美月:うわぁ〜、懐かしい!!その呼び方!
史緒里:ね、久しぶりに〇〇くんからそう呼ばれて、しーたちすっごく嬉しい!
美月:うんうん。
〇〇:ごめんね2人とも、最初なんか黙っちゃって…
史緒里:ううん、ぜーんぜん!
美月:でももしかして、みづたちが昔より綺麗になったからビックリしちゃった?
〇〇:え、ああ…
ドンピシャなことを言われ、〇〇は動揺した。
史緒里:こら〜、〇〇くんが困ること聞かないの!
美月:えぇ、でもしーちゃんだって気になるでしょ?
〇〇:あのさ、しーちゃんみづちゃん?
美月:ん、何?
史緒里と美月に向かって、〇〇は笑みを見せながら言った。
〇〇:しーちゃんとみづちゃんに久しぶりに会えて、俺すっごく嬉しいんだ!
史緒里:ふふ、私たちもだよ。
美月:ね。
美月が、自分より背が高くなった〇〇の頭に手を乗せてきた。
美月:前より、凄くイケメンになったね。
〇〇:そ、そうかな…
美人になった美月に褒められた〇〇は、顔が赤くなっていた。
史緒里:そーだよ。もう、前はあんな小さくて可愛かったのに〜
史緒里:ちょっと寂しいかな〜笑
美月:確かに笑
2人は互いに見つめ合って笑った。
それから〇〇たちはバーベキューの準備に取り掛かり、準備が整うと肉や野菜を焼いてバーベキューを始めた。
美月:はい、〇〇くん。
〇〇:ん?
〇〇の前に美月が、焼いた肉を箸で摘んで持ってきた。
美月:あーんして。
〇〇:え、ああ…
パクッ
美月:どう?美味しい?
〇〇:う、うん。
美月:ふふ、良かった♪
美父:おっ、ラブラブですな〜
美月と〇〇のやり取りを見ていた美月の父が、
ビールの入った紙コップを持ちながら言った。
美母:こら、やめなさいってお父さん!
美父:なんだよ、良いじゃんか〜
美月:ねぇ、もう酔っているの?
美父:いやいや、んなことは…ヒック!
美月:早くない?笑
美月の父の酔いっぷりで、〇〇を除いた一同が爆笑した。
史緒里:大丈夫?〇〇くん?
〇〇:へ?大丈夫だよ。
史緒里:そう?なら良いんだけど…
〇〇:うん。
バーベキューのテーブルの向かい側に座っていた史緒里に心配された〇〇は、平静を装った。
その後、皆んなで野球をすることになった。
〇〇が守備側の時、史緒里が投げたボールを史緒里の父が思いっきり打って、ボールは空高く飛んでいった。
〇父:ホームラン!お見事ー!
史父:っしゃああ、やりました!
拍手が沸いた。
史緒里:やりましたー、じゃないよー!?
史緒里:打ちすぎだってば!
史母:もうボールがどこ行ったか分からなくなったじゃない、あなた!
史父:あ、確かに…
〇〇:俺が取ってきますよ。
進んで〇〇が走り出し、ボールが飛んでいった方へ向かった。
史父:すまーん、〇〇くーん!
〇〇:ふー、しかししーちゃんのお父さん凄いな〜
走っていくと、漸くボールを〇〇は見つけた。
〇〇:あった!
〇〇:ん?
〇〇が視線を地面から正面に移すと、小さな丘の上に木が一本生えていた。
その木の方へ、〇〇は吸い寄せられるように歩みを進めていった。
〇〇:よいしょ、っと。
〇〇は木に寄りかかって座った。
〇〇:なんか、懐かしい…
初めて見る光景の筈だが、小さい時によく木陰で寝ていたのを思い出し、〇〇は思いにふけていた。
〇〇:…
居心地の良さのあまり、〇〇はそのまま目を瞑ってしまった。
…くん!
〇〇:…ん?
?:〇〇くん!
声が聞こえて〇〇は目を開けると、史緒里と美月が立って微笑んでいた。
史緒里:もう、探したよ。
〇〇:ああ、ごめん!
〇〇:つい気持ち良くて、寝ちゃってた…
美月:ふふ、やっぱり変わらないね。そういうところは笑
そう言うと、美月と史緒里が〇〇を挟んで木に寄りかかって座った。
史緒里:懐かしいね〜3人でこうしてさ。
美月:〇〇くん、いっつも木陰で気持ち良さそうに寝てたから、一緒に並んで寝てたよね。
〇〇:そうだね。
美月と史緒里の肩が〇〇の肩に触れて、〇〇は久々に安心感を覚えた。
史緒里:こんな爽やかになっても、寝顔は可愛いままだね♪
〇〇:えっ、あぁ…
美月:ふふ、やっぱり可愛いな〜
〇〇:あ…
美月に頭を撫でられ、〇〇は子ども扱いされている気がして多少悔しい反面、やはり安心していた。
史緒里:じゃ、私先に戻るね。
美月:うん。
〇〇:え、しーちゃ…
〇〇が呼び止める前に、史緒里は皆んなのもとに戻っていった。
〇〇:そろそろ戻らなきゃ…
〇〇が立とうとすると、美月が〇〇の腕を掴んで引き留めた。
〇〇:え?
美月:少し、2人だけで話ししたいんだ。
さっきと打って変わって真剣な美月の表情を見て、〇〇は再び木に寄りかかって座った。
〇〇:う、うん。分かった。
美月:ありがとね。
それから美月は深呼吸して、喋り出した。
美月:さっきね、〇〇くんのお母さんたちから聞いたんだ。
〇〇:あ、もしかして…
美月の様子から、〇〇は学校で告白に失敗したことを聞いたのだと悟った。
美月:うん、〇〇くんが学校で好きな子にフラれちゃったことを。
美月:ごめんね、そんな時に皆んなの前であーんなんかさせて。
〇〇:いや、大丈夫だよ!
〇〇:それに、もう吹っ切れたから。
心配する美月を安心させようとして、〇〇は言った。
〇〇:それに、こうしてみづちゃんやしーちゃんたちとバーベキューして野球して、凄く楽しかったよ!
〇〇:まぁ、みづちゃんにあーんしてもらった時は、少し恥ずかしかったけど…でも、大丈夫だよ。
美月:そっか。
〇〇:うん。
美月:優しいね、〇〇くんは。
美月が微笑んでいるのを見て、〇〇は安心した。
美月:あのね、〇〇くん。
〇〇:何?
美月:私さ、ずっと前から思ってたことがあるんだ。
美月は一度空を眺めて、それからまた〇〇の方を向いた。
美月:前に〇〇くん言ってくれたじゃん、わたしとしーちゃんが大好きって。
〇〇:あ、うん!
〇〇:覚えているよ、小さい時に言ってたね。
美月:あれが凄く嬉しくてね、その…
〇〇:うん。
喋っていた口を閉じた美月は〇〇に微笑みかけ、それからまた口を開いた。
美月:いつか〇〇くんがみづの彼氏さんになってくれたら嬉しいなーって思ってたんだ、ずっと…
そして、美月は〇〇の手を握った。
〇〇:(みづちゃん…)
手を握られたことと美月からの告白が、〇〇の心臓の鼓動を激しくさせていた。
美月:どう…かな?
美月に見つめられ、〇〇は美月の気持ちが本気だと感じた。
〇〇:(もしかして、しーちゃんはこの為に…)
〇〇は、先ほど皆んなでバーベキューしていた時に、史緒里は既に彼氏が出来ていたが美月はまだいなかった話をしていたことを思い出した。
〇〇:みづちゃん。
2人の想いに気づいた〇〇の中で、言うべきことは決まっていた。
〇〇:俺、みづちゃんの彼氏になりたい!
〇〇:だって俺、みづちゃんのことが…
〇〇:大好きだから!
言い終えた〇〇は目を瞑ったが、すぐ美月が〇〇をそっと抱き締めた。
美月:ありがとう。
美月:じゃ、これからよろしくね。
〇〇は目を開け、美月と近い距離で見つめ合った。
〇〇:うん、よろしくね。
美月:ふふ。
恥ずかしさから目線が逸れても、〇〇と美月から笑みは絶えなかった。
美月:本当カッコ良くなっているよ、〇〇くん。
〇〇の頬に手を添えて、美月が微笑んだ。
〇〇:み、みづちゃんも、本当に綺麗だよ。
美月:嬉しい、そう言ってくれて。
そして、美月は目を瞑って〇〇と唇を重ねた。
〇〇:!
美月:ふふ。
〇〇と美月が手を繋いで皆んなのもとに戻ってくると、史緒里がニコニコしながら寄ってきた。
史緒里:上手くいったみたいだね、みづちゃん。
美月:うん、ありがとうしーちゃん。
史緒里:ちゃんとみづちゃんを幸せにするんだぞ?〇〇くん。
〇〇:うん、もちろん!
〇〇:ありがとう、しーちゃん。
史緒里:いえいえ。
それから、3人は両親たちと合流した。
皆んなして、〇〇と美月のことを祝ってくれた。
美月:ねぇ、〇〇くん。
〇〇:何?
美月:今私、すっごく幸せなんだ〜
〇〇:うん、俺もすっごく幸せ。みづちゃん。
美月:ふふ、そうだよね♪
fin.
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