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【web小説感想】『郵便島のシナー』著:青井井蛙

 Nolaノベルという小説投稿サイトにて一番初めに発見した本作。簡単な感想は投稿サイトに投稿させていただきましたが、もう少しつっこんだ感想をこちらで投稿させてください。

読もうと思ったキッカケ

 初めて読んだのは、Nolaノベルに登録してすぐだったので昨年の10月初め頃でしょうか。当時はNolaノベルがα版で検索機能もなく、トップページに表示されているか、SNSで紹介している作品しか読むことができませんでした。(現在はβ版のリリースに伴い、検索機能が実装されています。)

 『郵便島のシナー(作:青井井蛙さん)』は、確かランキング上位かつ、『表紙で選ぶ』という欄に掲載されているのが気になって読み始めたんだったと思います。

作品傾向および感想

<作品傾向> ファンタジー/ヒューマンドラマ/オムニバス形式

<感 想>
 本作は、とある離島にたった一人で暮らす主人公、シナーがその島に流れ着いたメッセージボトルの手紙を読むというお話です。オムニバス形式で手紙の内容が紹介されていきます。

 2万字程度の短編小説で、内容は良い意味で重く、心にじんと染み渡るような読後感がありました。文体自体はとても流麗かつ淡々としていて、すらすらと読んでいける文体です。読んだ時間も30分くらいという短い時間。なのになぜか、長編小説を読んだ後のような満足感が味わえます。

 このお話のすごいと思うところは、物語の構成だと思います。初見のときは、ひとつひとつの手紙の関連性は全くないように思えるのですが、すべて読み終える頃にはそれらすべてが繋がって『主人公の物語』になる、という構成。その秀逸さに、読み終えた瞬間思わず「すげ~」と漏らしてしまいました。読後すぐ、また読み返したいと思いましたし、短編小説なのですぐにそれができるという気軽さがありがたいです。

 個人的に好きな手紙は『幸福な娘からの手紙』と『弟子からの手紙』です。

 前者はとある少女が両親に宛てた手紙で、新居にある広い庭の素晴らしさが幼い視点でかわいらしく綴られています。この手紙を書いた子には本当に幸せになってほしいと思う。幸せにおなりなさい。

 後者はとある高名な音楽家に弟子入りしている青年(もしくは少年?)の書いた手紙です。内容は音楽家の元での暮らしに対するちょっとした不満と、そこで偶然知った音楽家の秘密について。ずっと抱えていた憧憬が崩れ去る瞬間と、夢を手放す覚悟が淡々と綴られていました。

 上記の手紙がどうして離島に暮らす主人公の物語になるのか。なぜ、主人公シナーはたったひとりで離島に暮らしているのか。なぜ、シナーの元に手紙が辿り着くのか。それはぜひ読んで確かめていただきたいです。点と点が繋がり、ひとつの線になる瞬間はとても気持ちよく、それでいて主人公の人生を想うとジンと熱くなるものがこみ上げる素敵な物語でした。

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