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「ライター入門、校正入門、ずっと入門。」vol.6

「校正・校閲の仕事を専門とするプロフェッショナル集団」聚珍社の中嶋泰と、フリーライターの張江浩司が多種多様なゲストお迎えしつつ、定期的に酒を飲みながらぼんやりと「書くこと、読んでもらうこと」について話していくトークイベントの模様を、ダイジェストでお届けします。

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校正は「自分を疑う」仕事

張江 司会を務めます、ライターの張江浩司です。

中嶋 このイベントを主催しております、校正の専門会社、聚珍社の中嶋です。

張江 今年の1月から毎月やっているこのイベントも、7回目でちょうど折り返しですね。これまで色々な「書くこと」に関わる方々をゲストにお迎えして、バリエーション豊富に話していただいたので、今回は初心に帰って校正をテーマにしました。

中嶋 具体的にどういう仕事をしているのか知らない方も多いと思うので、存分に語っていただこうと思います。

張江 ではゲストの皆さんどうぞ!

(ゲスト登壇)

張江 ではレギュラーの一色さんから自己紹介お願いします。

一色 レギュラーだけどずっとゲスト(笑)、XOXO EXTREMEの一色萌です!

高倉 聚珍社で校正をやっております、 高倉です。よろしくお願いします!

渋谷 新潮社校閲部におります渋谷と申します。いまは単行本の校閲をしています。よろしくお願いします。

張江 私と一色さん以外は全員校正の方ということで、まずは皆さんになぜ校正の仕事を始めたのかをお聞きしたいんですけども。

高倉 私はバイト代が高かったからですね(笑)。通ってた大学の教授が、昔校正をやっていたという話を聞いて、ネットで調べたら聚珍社の時給が一番高かったんです。一回ぐらい話を聞いてみようかなと。

中嶋 私が営業の役員をやるようになって、初めてのアルバイト求人だったので、一期生ですね。

張江 NKJ48グループの(笑)。校正の求人にはどれくらい人が集まるんですか?

中嶋 前回は60通以上来ましたね。それくらいになると履歴書の見分けがつかなくなって困りました。ワープロ打ちよりも手書きのものが印象に残ったので、履歴書を書く際は皆さんもそうした方がいいと思います。

一色 アイドルと一緒だ!印象に残らないと厳しいですよね。

張江 志望動機が『自分探しのため』だと、そういう人が多すぎるんで落ちる可能が高まります。

中嶋 校正者の履歴書に『自分探し』って書いてた人いたかな?自分より誤字を探して欲しいんで(笑)。

高倉 面接で合格してバイトすることになって、その後会員として聚珍社に登録してフリーランスとして働くことになりました。最初は商業印刷といって、パンフレットやチラシ、ダイレクトメールなどの校正を6年ぐらいやってました。今は月刊誌を担当しています。

中嶋 まず商業印刷から始めてもらうことが多いんです。日本語としての正しさよりも、値段や日付などの数字が間違っていないかという基本的な部分をチェックするので。

張江 校正の仕事をやってみて、自分に合ってるなと思いました?

高倉 今まで一度も思ったことないです(笑)。原稿と紙面を一生懸命照合していたら一日が終わるという感じで。商業印刷は特に時間がタイトなので、今日中に印刷に回さないといけないから急かされながらやっていると、あっという間に夜になってます。

渋谷 校正者は、間違いを見落とした部分だけが記憶に残るんですよ。なので、「自分には校正が向いてる」とは、なかなか思えないですね。

高倉 たまに中嶋さんから「これお客さんから評判良かったよ」って言ってもらえるくらいで、基本的には褒められない仕事ですから……。

中嶋 クライアントから連絡があるときは、だいたい何かのミスなので(笑)。達成感を得るのは難しいかもしれませんね。できて当たり前、ミスがなくて当たり前の仕事で、精神的にきつい仕事です。

高倉 何も修正するところがないっていうゲラもたまにあるんですよ。でもそれはそれで不安になるんですよね。誤字が見つかるとホッとするというか……。赤が入ってないゲラをクライアントに戻しても『何もなしですか?』って言われますし。
※ゲラ:ゲラ刷り。校正(誤字脱字のチェックなど)」を行うための「校正刷り」のこと。

渋谷 「サボってるんじゃないのか?」という目で見られますよね(笑)。

張江 それが一番良い原稿のはずなのに、ライターも編集者も校正者も全員不安を抱えている(笑)。

渋谷 「人は何か間違えるはずだ」という懐疑的な前提でやっているので。自分を疑うことにも近いです。

高倉 そうですね、自分のことはずっと疑い続けてます。自分の赤字があっているのか、ずっと心配です。

張江 めちゃくちゃ辛いじゃないですか……。

一色 以前、雑誌の編集部でバイトしてたとき、全部のページを校正に回してたんですけど、毎回ほとんど真っ白で何も書いてない連載があったんです。そういうページはどこを校正するんですか?

高倉 連載回数の数字が間違っていないかとか、四隅のトンボ(刷り位置をチェックするための目印)をはみ出てないかとか、そういうところですかね?

中嶋 あとは、過去の連載との整合性というか、大きく体裁が変わっていたらそこも問題ないかチェックはすると思います。

一色 私たちの想像が及ばないところを校正してる!

張江 渋谷さんはどういったきっかけですか?

渋谷 本当に誰にも真似して欲しくない就職活動をしてしまって、行くところがなくて(笑)。新潮社の校閲部は他の部署と違って、数年に一回だけ募集があるんですが、たまたまその年だったので、応募しました。元々本を読むのは好きだったですし、校正や校閲という仕事には関心があったんですけどね。採用試験は、実際の現場でもしているような「原稿合わせ」や「素読み」をして、「和やかに会話している」が「名古屋かに会話している」になっているような誤植を修正するテストだったんですけど、不思議な仕事だなと思いましたね(笑)。

中嶋 事前にエディタースクールなどに通いました?

渋谷 学校に通うことはなかったですが、一応校正記号は覚えていきました。

中嶋 馴染みがない人がほとんどだと思うんですけど、少ない情報で的確に修正点を伝えるために校正記号というものがあるんですよ。

高倉 JISで決まっている規格なんですよね。

(参照:印刷校正記号一覧

渋谷 今でもときどき『校正必携』の一覧表を見返して確認しながら校正してます。

一色 「ママ」とか見ただけじゃなんのことかわからないですよね。

張江 「お母さーん!」みたいな。

一色 つらすぎて赤字でママを呼んでるのかな?って(笑)。

渋谷 ボヘミアンラプソディじゃないんですから(笑)。

中嶋 「ママ」は「そのままでいい」っていう意味ですね。でも、この記号はJISなんで、国内でしか通用しないんですよね。最近、中国やベトナムで印刷することもあるので、海外の方が「ママ」を見て数字の「22」だと思ったことがあるみたいなんですよ。全く関係ない文中に、急に「22」が印刷されていて、原因を探したら「ママだ!」って(笑)。

渋谷 哲学者のサルトルが「トル」(削除の記号)だと思われて「サル」だけになった話もあります。

校正者が泣いた!

張江 校正者さんはどういったスケジュールでお仕事されてるんですか?

中嶋 基本的には普通のサラリーマンとそんなに変わらないですよ。一応10:00~18:00で決まってるんですけど、いかんせん原稿がくるタイミングにも左右されてしまうので。

高倉 今の私の現場は原稿が揃ってから入るので、待ち時間はないですね。7:3くらいの割合で、クライアントの編集部に出張して校正することが多いです。だいたい10:00~18:00で、土日祝日休みです。校了が近づくと21:00までになったり、最終日は終電なくてタクシーで帰ることもあります。

渋谷 媒体によって全然違いますよね。

高倉 そうですね、商業印刷だと12時間シフト交代もありますし。

一色 え、ずっとやってるってことですか??

中嶋 そう、24時間体制でやってるんです。新聞に折り込みのチラシなんかは版数も600くらいあるんで、とにかく時間かかるんですよね。

渋谷 商業の校正はとにかく時間にシビアな印象があります。

高倉 輪転機は常に回ってるんですよ。(下版できないと)印刷所のおじさんがタバコ吸って待ってるよって、先輩に言われるんです(笑)。雑誌はそんなキツキツなタイム感でやることはないですね。単行本だともうちょっとゆるやかなんじゃないですか?

渋谷 この話の後だと、ずいぶんのんびりしてるんですけど(笑)。8:00から出社する人もいれば、僕は朝弱いんで10:30くらいからで18:30までが定時です。新入社員のときは文芸誌担当だったので、13:00出社だったんですね。もうまともな社会人にはなれないなと思いました(笑)。

中嶋 社会に出たはずなのに、満員電車に乗れないという(笑)。

渋谷 雑誌ではその日出稿された原稿を打ち返すように校正していくので、少ない日は19時くらいに帰れるんですけど、一度上下2段組で200ページ近くある原稿を18時に渡されて「悪いけど明日までによろしく」っていうこともありました。終わったのは3時でしたね。帰り道の朝焼けが綺麗だった(笑)。

張江 でも、逆にそれくらいの時間で終わるんですね。

渋谷 最後の素読みだったので。何人かが校正した後の、最後の校正でした。

中嶋 読者に届くものとほぼ同じ状態の原稿です。

張江 そういう素読みのときに、原稿が面白すぎて校正どころじゃなくなったりしないんですか?

渋谷 ベテランの方は「読んじゃいけない、あくまでも我々はチェックするんだ」って言いますね。でも、うっかり感動しちゃうこともあります(笑)。先輩が小説のラストで思わず涙ぐんだことを編集の方に伝えたら、宣伝文句に使われてました。

中嶋 「校正者が泣いた!」みたいな(笑)。

渋谷 基本的には淡々と、一定の集中力とコンディションで読むのが一番いいです。

一色 そうやって校正してる人を泣かせたらすごい文章ですよ。

渋谷 そういう美的な価値判断はあくまでも編集者の仕事ですからね。いただいた作品に対して、編集、校正とせっかく分業にしてるわけなので。作家さんと編集者が8割完成させたものの、ほつれを見つけて縫い直す作業なんだと思います。

張江 とても大事ですよね。最近のwebの記事だと「心に刺さればOKっしょ」という感じで、校正的な視点がごそっと抜け落ちている感じがします。

中嶋 特にwebはスピード勝負ですからね。後から修正もできますし。

渋谷 速度や情動が重視されている感じはしますね。

張江 単行本はどれくらいのスパンで校正を進めるんですか?

渋谷 分量やジャンルによって変わってきますが、だいたい1冊300ページで3~4ヶ月ですね。まず「初校ゲラ」が印刷所から上がってきて、それを3週間から1ヶ月かけて校正します。担当の校正者と外部の校正者の2名で進めることが多いです。初校ゲラにエンピツで校正疑問を入れて、編集者に戻します。それを著者が確認して、また印刷所に回します。そうすると「再校」と呼ばれるゲラが上がるので、それをまた校正者が2週間ほどかけて読んで疑問を入れて編集者に戻して、再度著者に確認してもらって印刷所に入れる。そうすると最後に「念校」が上がってくるので、それを読んで問題なければ終わりです。1冊につき少なくとも3回は目を通すんです。ちなみに、よく「赤を入れる」と言うんですが、赤字は印刷所への指示なので、文芸校閲者は修正が明確な場合以外、基本的に赤は使いません。

張江 3ヶ月は1冊につきっきりになるんですか?

渋谷 2、3冊を並行して進めますね。原稿が印刷所や著者の元にあるときは、別の単行本の校正をするという感じです。詩と歴史小説の校閲が並行して進んでたりすると、自分がどういう世界にいるのかわからなくなったりします(笑)。それぞれでチェックすべき箇所も違いますし。

張江 高倉さんの雑誌はどういうペースですか?

高倉 私は月刊誌を3誌担当してるんですけど、メインの1誌が毎月10日くらいから始まって20日前後が校正終了日になります。これが終わると2誌目を4日くらいかけて校正して、月末から翌月の頭にかけて3誌目をやる、という流れですね。

張江 校正にかける日数が違うのは、ページ数の差ですか?

高倉 3誌とも200ページないくらいでほぼ同じなんですけど、現場に入る校正者の数が違います。工程数も違いますね。再校までやるところもあれば、初校だけで終わるところもあります。表紙だけは再校までやる、とか。

中嶋 雑誌の場合、単行本と違って複数のライターさんが書いているので、ページによって進行具合がまちまちなんですよね。なので、このページは再校までいけるけど、このページは初校しかできない、みたいな差が出てきます。

高倉 校了日なのにやっと原稿がきて、真っ赤に赤字入れて戻すとかありますよ。ギリギリで色校は飛ばさないといけないとか。

張江 色校で、印刷の発色具合とかも校正者さんが確認するんですか?

高倉 それは編集者の仕事ですね。タイアップ記事なら、そのクライアントさんも確認するかもしれないですけど、校正者はチェックしないです。

張江 あくまでテキスト部分ですか?

高倉 写真も見るんですけど、チェックする部分が違うというか。例えばキャプションに「青いジーンズ」と書いてあるのに、写真に黒ジーンズが写ってたら赤字入れます。

張江 あー、なるほど、だから色校を見る必要があるんですね。

高倉 そうなんです。カンプと呼ばれる、普通のコピー用紙に印刷したようなものだと、例えば全身ブラックコーデだと何を着てるのかはっきりわからなかったりするので。あとは、写り込んじゃいけないものがないか、ですね。最近だと屋外で撮った写真に「コロナで休業しております」みたいな貼り紙が写ってることがあるので、ファッションシューティングには似つかわしくないのかなと。車のナンバーとかもですね。

中嶋 写真が反転しちゃって、逆版になってないかも重要ですね。昔、東京タワーの蝋人形館のパンフレットを作っているときにデザイナーが坂本龍馬の蝋人形の写真を逆版にしちゃって、着物の襟が左前になっちゃったんですよ。

張江 左前だと死装束になっちゃいますね。

中嶋 そうなんです、なんとかギリギリで気付けたんですけど、危なかったです。

高倉 和装はそういうミスが多いですね。イラストでもあります。

一色 アイドルも自撮りすると写真が反転するんで、浴衣で撮ると左前になっちゃうんですよ。私はちゃんと再度反転させてTwitterとかに載せるんで、「わかってるね」って言ってもらえます(笑)。

渋谷 僕は普段文字ばかり読んでるので、たまに写真集を校正してる先輩がいると羨ましいです……(笑)。

校正は最後の砦

渋谷 あ、ここでクイズ出していいですか?

一色 クイズあるんですか!?

渋谷 ちょうど時代や習慣の話題が出たので、校閲者ってどんなことをしてるのかのサンプルになればと…(笑)。江戸時代が舞台の小説に、「まもなく18になろうという夏の夜、栞は村の神社の祭りで旧友に再会した」という文章があったとします。誤字脱字は問題ないんですが、引っかかる部分があります。どこでしょうか?

張江 江戸時代っていうのがポイントですよね?現代が舞台なら問題ないわけで。うーん、「旧友」という概念が江戸時代にはない、とか?

渋谷 正解は違いますけど、そういった発想はとても大切です。

一色 「18」っていう数字が気になりますね。

渋谷 そうです、江戸時代は数え年なんですよ。正月にみんな一斉に歳をとるので、「まもなく18になろうという夏の夜」という表現はおかしいんです。誕生日という概念がないんですね。現代では常識になっていることでも、江戸時代であればまた違う常識があるので、舞台になっている時代と場所に応じた校閲をしないといけないんですよね。

一色 うーん、難しい……。

張江 江戸時代ならまだしも、古代ギリシャが舞台だったらものすごく大変じゃないんですか?

渋谷 どこまで調べるかという問題ではあるんですけど、単行本の場合は時間をかけられるので。でも、色々調べることが一番大事ではないんですよ。納期に合わせて適切な仕事をすることが最重要なので。時間がない場合は、まず誤字脱字のチェックですよね。そういえば、ゴキブリって誤植によって名前が変わったそうなんですよ。そもそもは「御器被り(ごきかぶり)」だったらしいんです。

中嶋 江戸時代にはあかりを灯す油の器の近くに出るからごきかぶりだったらしいですね。

渋谷 明治時代になって、初めて日本で生物学の用語集が出版されるときに「か」が抜けちゃって、ゴキブリで広まっちゃったとか。

張江 それは「校正者出てこい!」ってなりますね。

一色 ごきかぶりの方が少しだけかわいいのに(笑)。

中嶋 誤りが広まってしまったケースは他にもいろいろあると思いますよ。

張江 やっぱり、単行本や書籍は残るものですもんね。それだけ時間をかけて校正しないといけないってことですね。

中嶋 印刷物には鮮度があるんです。チラシは賞味期限が短くて、セール期間が終わったらゴミになっちゃう。ですので、細かいキャッチコピーの誤植は問題にならないことが多いです。〇〇年度の会社案内とか、期間が決まっているものもそうですよね。印刷物としての賞味期限は1年です。そう考えると書籍は5~10年と手元に残るものですから。

一色 責任重大ですね。

渋谷 校閲部の部室に入ると、これまで出版された本がずらっと並んでるんです。「校閲部保存原本」といって、担当校閲者の名前と、重版でどこを修正したかが全部書いてあるんです。

高倉 うわ~……。

張江 前科の一覧表だ(笑)。

渋谷 時間があるときは自分が担当した本を確認して、「はぁ……」とため息を(笑)。

中嶋 重版してるってことは売れてるってことなので、いいことなんですけどね。修正する機会にもなってるわけですから。

渋谷 最近、校閲という言葉の捉えられ方が変わってきてる気がするんです。爆笑問題の太田光さんが、雑誌『Quick Japan』の一件に触れて「あの雑誌は校閲を通って世の中に出た」というようなことをおっしゃってて、そういった判断もする仕事だと思われてるんだなと。

中嶋 校正と校閲とは違いがあって、校正は日本語として間違っていないかどうか。「おはよう」が「はおよう」になっていたら正すのが校正ですね。校閲は、例えば夜の場面なのにここで「おはよう」というのはおかしい、というところをチェックするんですね。文脈や事実関係が間違っていないかというところ。今から8年くらい前に新潮社さんの校閲部がすごいというネット記事が話題になったんですが、時代劇小説で一騎打ちの場面があるんですね。そこに校閲部が「この日は満月だから一騎打ち可能。OK」と赤を入れていたという。

張江 なるほど!月明かりがないと真っ暗で戦うどころじゃないんだ!今でいうファクトチェック的な役割もあるんですね。

渋谷 活版印刷の時代は「原稿通り」というのが校正の仕事だったんですけど、ネット以降、色々調べることができるようになったのでそういった事実関係の確認も我々が担うようになったという感じです。それこそ、今は日付から江戸時代の天気も調べられますからね。「赤穂浪士の討ち入りの夜には雪が降っていたのか?」というエピソードが『重版出来!』にもありました。

中嶋 ミステリー小説に「時刻表トリック」ってあるじゃないですか?あれの校正は大変そうですよね。「実際はこの乗り継ぎはできません!」みたいな(笑)。

渋谷 まさに某ミステリー作家さんの担当をしていた先輩から苦労話を聞いたことがあります(笑)。「先生、やっぱり無理です!」と。

張江 最近、「引用している論文の内容を真逆に解釈してしまっていた」という理由で全回収になった本があったんですが、「編集部も校正段階で確認を怠りました」というコメントが出ていました。

渋谷 誤字脱字だけならまだしも、内容についての校正を見落としてしまうと実害が出てしまうんですよね。この点は、値段や会社名を膨大にチェックする商業印刷の方が大変かもしれません。

高倉 そうですね、刷り直しは大きな損害になってしまいます。

渋谷 文章は書き手のものなので、内容や主張には直接タッチしない、というのが現場での大前提ではあるのですが、差別表現のチェックをはじめ、出版に関する品質管理や危機管理に相当するセクションになってきているなと思います。

張江 最後の砦なんですね。

中嶋 そう、校正は最後の砦!よろしくお願いします!

次回は8月27日!

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今回は前回に引き続き、校正者のお二人をお招きし、初回から話題に登っているものの詳しく触れられていない「記者ハンドブック」についてなど、校正の世界をさらに深掘りしていきます。
もちろん、一色さんもいらっしぃます。
状況を鑑みて無観客での配信になりますので、ご自宅でごゆっくりご覧ください。

詳細はこちらをご覧ください。
https://twitcasting.tv/loft_heaven/shopcart/95435

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