ショートショート㊺「たのしみなさい、畜生たち。」(282字)
月が満ち欠けをやめたとたん、人間たちはふくらみはじめた。
それを見て犬や猫たちは腰がぬけるほど笑い、
つられてでてきた虫たちものたうちまわって
笑い、鯛やエミューやチーターたちもむせながら笑った。
そしてぱんぱんにふくれきり、さあはちきれると思ったら、やにわにゆっくりすぼみだした。
たちまち野次やブーイングがとび、みなどっとしらけて、毛づくろいだの脱皮だのをやりだすと、またぷあーーーーーーーーーっとふくらんだ。
思いもよらぬ展開に、地鳴りのするほど笑いがおきた。
だれにも聞こえてなかったが、その時月はつぶやいていた。
「これをとこしえにくり返す。たのしみなさい、畜生たち。」
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