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ワインについて自由に書くために 【2021年飲んだワイン 3月】

いきなりなんですが、飲んだワインの話はまた今度します。タイトル詐欺ですみません。

3月に飲んでないわけではなく、2月よりもずっと飲んでいたのですが、私のこれまでのワイン紹介文に居心地の悪さを感じていて筆が取れませんでした。
どう変えていこうか、と思案の記録がこの記事です。

暗黙の型にはまってしまう

あるワインを飲んだことがない人を読み手と仮定して、そのワインについて話すときの文章構成はこうなります。
別にルールはないのですが、私はこう書いてしまいがち。

①生産者や産地のエピソード
②筆者が飲んだ感想

先月の記事のヴィレーヌのブーズロン・アリゴテを例に見てみましょう。

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背景知識のほうに紙幅を割いていることがわかります。これは他の記事も同様です。
正直に申し上げると、背景知識をあれこれ調べてまとめるのは面倒です。できればこの工程は避けたいのですが、いきなり「夏みかんや文旦のような、時々しか食べない柑橘類を思い起こさせる味わい」と書くと、なんとな〜く読み手を戸惑わせてしまう懸念があります。

書き手の私がなんとな〜くそう感じてしまう理由は、おそらくワインショップの商品紹介文にあります。
だいたいのワインショップも、生産者や産地のエピソード→味わいの順に売り文句を書くのです。
しかも味わいの話は文章全体の2割くらいなんじゃないか(著者体感)

例えばエノテカの場合。

ブルゴーニュきっての名門、ドメーヌ ド・ラ・ロマネ・コンティ(DRC)の共同経営者であるオベール・ド・ヴィレーヌ氏がDRCの経営を継ぐ前の1971年に設立したドメーヌ。こちらは、リュリー地区で最も有名な一級畑、クロ・サン・ジャックの斜面下部に位置するエリアのブドウを使用。繊細なアロマにミネラル感溢れる上品なスタイルが魅力です。

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楽天の人気ショップ・セラー専科の場合。

https://item.rakuten.co.jp/cellar/413043/

コシュ・デュリのアリゴテは、生産量、輸入量ともに極小量でありながらもその素晴らしい味わいにファンは多く、世界中のオークションでも高値で取引される貴重なアイテムです! 樽で熟成された活力あるアリゴテは、日本ではそうそうお目にかかれません。酸もミネラルも全くブレがなく、素晴らしい出来栄えです

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(完全に余談ですが、コシュデリのアリゴテ高すぎてびっくりしますね)

味や香りは売り文句にならない

なぜエピソードばかり語られるのか?なんとなく読者の皆さんも想像がつくと思います。エピソードは事実だけど、他の人が飲んで書いた感想はそんなにアテにならないから、ワインの売り文句として弱いじゃないかな、と私は思います。

断っておくと、アテにならないというのは、決してショップの店員さんの舌や文章力が悪いとかそういうことではありません。頑張って味や香りだけを言葉で伝えても、買い手の財布を緩めるほどは伝わらない、と言うべきです。

めっちゃうまいワインについて「めっちゃうまい、マジでうまい、今まで飲んだ中で最高。DRCと同じくらいうまい」と言われても「お前がそう思うんならそうなんだろう お前ん中ではな」の域を出られません。
ただしこれには例外があって、超有名ワイン評論家や実力十分なソムリエが「めっちゃうまい、マジでうまい、今まで飲んだ中で最高。DRCと同じくらいうまい」と言うと効果があります。その人の権威はワインとは別でしっかり伝わるからです。

ワインを売らなくていい人の書き方

ワインについて書かれる文章の大半は売り手の論理で書かれています。乱暴な言い方を許してほしいのですが、レビューと称してしても多くは売り文句だと思っています。生産者もショップもソムリエもワインを売るのが仕事です。非難するつもりは全くありません。その型をつい模倣して一人で息苦しくなってしまう私が問題なのです。

酔っ払いのいちワインファンの私が何か書くのであれば、「美味しいワインを紹介するよ!」といった有益性メインのものよりも、別の楽しさを提供することを目指してもいいはずです。エピソードをしっかりリサーチして紹介するよりも、個人的な話に寄せていく方が自分は得意だろうし。
というわけでどう転ぶかわかりませんが、三十路近くの経済力の乏しい数寄者の戯言としてこれからもお楽しみいただけるよう、尽力いたします。

最後にサイバーエージェント藤田社長のinstagramのワインアカウントを紹介して終わります。

さすが1兆円企業の社長、すごいワイン開きすぎ。ワインファンはつい写真に気を取られてしまいますが、一日の終わりに経営者がワインを飲みながらあれこれ思いを巡らせた記録です。ワインと付かず離れずの距離を保ちながら書かれたショートエッセイ集として楽しめます。

鳴かぬなら鳴くまでまとうホトトギスーーーーーーー徳川家康。

じゃねえんだよ俺も暇じゃないんだからさぁ。と目の前のワインに向かって心の中で悪態を吐きつつ開くのをじっと待っていた。まあ硬いんだろうなと思いながら開けたムートンの95年は案の定カチコチで、ならば(鳴かせて見せようホトトギス)的にデカンタに移したら多少変わったけどそれでもまだ全然だった。あとは時間を費やして待つしか方法がない。

私はよほど忙しく見えるのか「最近お忙しいですか?」という質問を頻繁に受けるんだけど、この質問の回答にはいつも戸惑う。それは当社比ですか?一般的にですか?と聞き返す訳にもいかないし、実際忙しいような気もするし、暇なような気もする時がほとんどである。打ち合わせが立て続いているのに返信を迫られるようなメールやメッセが押し寄せている時は忙しいし、暇つぶしにTwitterを眺めたり将棋ウォーズをやってる時間もあるし、このようにワインが開くのをただ待ってたりもする。そもそも限りある時間の中で何をやらないかを決めて生きてるので、暇な訳ではないんだけど、「忙しいです!」と言うと私に関わらないでくださいと突き放しているように受け取られるかも知れない。忙しいかどうかは個人の感想なので、東京の生き馬の目を抜くような刺激的な環境で長年仕事をしている私が、田舎で静かに暮らす実家の母の口から私は忙しいという言葉を聞いた時はびっくりした。
結局のところ、人間は忙しい忙しいと言いながら暇つぶしをする、矛盾した生き物なのである。

そうこうしているうちに2時間以上が経過し、我慢できなくなって(殺してしまえホトトギス)と全部飲み切ってしまった。これでも飲めなくはないんだけど、非常に美味いムートンを何回も飲んだことがあるだけに物足りない。もう当分寝かせるしかないけど同じワインを家に12本セットで買ってしまっている。遺言状を作成する時は「ムートン95は10年以上開けてはならぬ」と書かなくてはだ。

#シャトームートン (1995)






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