カメレオン


2、3、歩、歩くだけで、汗をかくような日だった。

涼しい飲食店に入ると、店員さんにピっと検温される。
すると、店員さんが明らかに動揺をしていた。

それはとても動揺いる様子だった。

ぽっちゃりした体型の割に、意外と免疫力が低く、
だいたいどこかが調子悪かったりするボクなので、まさかと思った。

店員さんが動揺を引きづりながら、体温計をボクに見せる。

35.5度。

店員さんも、こんなに太ってらっしゃるのに、
こんなに低いわけないですよね?という顔をしている。

再度測っても、35.5度。

「ボク、恐怖カメレオン男なんです。」

と一言言って、席に案内していただいた。

ゴハンが来るまで、マスクをして待つ。
これが、誰も予想もしていなかった、近未来の食事のマナーとなった。

一人でも、発熱者が出たとなれば、飲食店一つがなくなる可能性もある。
外食するにも、スリリングな時代となってしまった。

どのみち、うがいはしないより、した方が良いと思う。

言い方は一つ、受け取り方は五万と、30000イイネ。

無色で発された言葉も、誰かが赤色に染めていく。

「good news」を残して、彼は死んでしまった。

動物にとっての感情について、思う。


ボクはいつでも、平温が少し低いくらいの人間でいたいと思うのでありました。


2020年の9月。仕事の合間に、レコードをかけながら。

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