なんとか「プロット」(の、ようなもの)が形になりました。 後はただ、ひたすら書き進めていく。 ただ、それだけ。 ……と、たかをくくっていたのですが、そう…
自分史を記し、読み返してみると存外にたくさんのエピソードの断片が得られました。 「亡き友を偲びバラ園に植樹する」 この物語の骨子に、これらを上手に肉付けして…
本当は「書き方」と名付けられたら恰好よかったのですが、変な題名でごめんなさい。 たった一作を、ようやく捻り出したばっかりの、このわたしのことです。 これから…
Monumentの後片付けに手を焼いています。 生来のズボラが災いし、整理整頓なぞ、後回しのまま書き進めること最優先。 その結果、パソコンの中はぐちゃぐちゃ。 アイデア…
noteに出会い、アカウントをいただいたのは、一昨年の大晦日のことでした。 それから早、一年余り。 お陰様で、一遍の物語を無事、完結に導くことができました。 思い出…
馨 「今朝は、この秋一番の冷え込みとなりました」 助手席に着くなり、カーラジオがそう告げた。 吐く息は白く、指先は冷たい――そしてまた、車の中も。 シート…
眞琴 クチナシの、ほのかな香りで目が覚める。 わたしは窓辺に寄りかかったまま、ブランケットにくるまっていた。 薄く開けておいた窓から吹き込んだ夜風にあたっ…
眞琴 凪いだ湖水を想わせる、漆黒の闇。 その水面を、謎の光は進み続ける。 光の点は瞬きつつ円形から楕円に、そしてまた丸い形へと脈動し、次第に大きくなってい…
眞琴 眼下には、地平の果てまで一面の闇。 光も、ない。 音も、ない。 風も、ない。 匂いも――走りに走り続けたせいで、焼き付いた肺が吐き出す微かな血の香…
眞琴 夜風に頬を撫でられて、わたしは我に返った。 ちょっぴり腫れぼったくなったまぶたを開く。 涙が渇くと、満天の星空は変わることなく頭上にあった。 目の…
眞琴 「もうじきだよ――眞琴っちゃん――あと少し」 前を行く啓太郎が、呼吸の合間にわたしを気遣う。 「――うん」 とだけ返すのが、精一杯になった。 急な登り…
馨 それからのぼくは、支離滅裂だった。 授業には全然身が入らず、隣の机――森ノ宮の席――に飾られた花を、ちらちらと眺めてばかりいた。 彼女の言葉。 彼女…
眞琴 木曜日の終バスに、乗客は少ない。 わたしは啓太郎と二人、一番後ろの左窓側に並んだ。 ここに座っていれば、途中、香澄の墓碑「23番」の柱を通るはず。 …
馨 夜更け待って、僕らは出発した。 昨夜、眞琴がカーナビにセットしてくれたポイントで、クチナシとともに車を降りる。 木曜の晩が幸いしたのか、近所の家々にも…
眞琴 長い、一日になる。 覚悟して望んだ最終日、木曜のボランティアは、流れるように時間が過ぎた。 脩さんの誤解は最後まで解けず、おかげで恒例の懇親会も堂々…
川良部逸太
2024年3月17日 13:39
ご覧くださる皆様、いつもありがとうございます。家族に病人が出てしまい、しばらくの間、投稿が滞ってしまう見込みです。引き続き皆様の作品は、拝見させていただくつもりでおります。noteに舞い戻ってこられます日を楽しみに待ちながら、日々、成すべきことに集中し、務めて参る所存です。
2024年3月3日 21:37
なんとか「プロット」(の、ようなもの)が形になりました。 後はただ、ひたすら書き進めていく。 ただ、それだけ。 ……と、たかをくくっていたのですが、そう簡単には参りません。 仕事でも愛用してきたポメラを叩くと、確実に文字の数は増えていきます。 増えてはいく……のですが、なんと表現したらいいのでしょう。 シーン表に書かれていることが、なんとなく文にまとまっては、降り積もっていく。
2024年2月25日 15:25
自分史を記し、読み返してみると存外にたくさんのエピソードの断片が得られました。「亡き友を偲びバラ園に植樹する」 この物語の骨子に、これらを上手に肉付けしていくため、前段階としてアイデア出しの作業が始まります。 道具には仕事で使い慣れたものを用いました。 方眼のリーガルパッドと万年筆です。 万年筆というと、ペリカンとかモンブランみたいな恰好いいものを思い浮かべられる方も多いと思
2024年2月18日 13:19
本当は「書き方」と名付けられたら恰好よかったのですが、変な題名でごめんなさい。 たった一作を、ようやく捻り出したばっかりの、このわたしのことです。これから記しますのは「書き方」というよりむしろ、「物語を記す」迷路のような過程についてのお話ですので、結局、こんな題名に落ち着いてしまいました。 現在、手元の資料――主として紙媒体――の整理に当たっています。 手を動かしておりますと、懐かし
2024年2月11日 14:16
Monumentの後片付けに手を焼いています。生来のズボラが災いし、整理整頓なぞ、後回しのまま書き進めること最優先。その結果、パソコンの中はぐちゃぐちゃ。アイデアメモや取材資料などの紙片が乱雑に詰め込まれたファイルボックスは、本棚の一角を占めるまでになりました。意を決して手を付け始めてみれば、今度は、テストピースを読み耽ったり、使えなかった設定資料をひっくり返したり。それらひとつひ
2024年2月4日 15:28
noteに出会い、アカウントをいただいたのは、一昨年の大晦日のことでした。それから早、一年余り。お陰様で、一遍の物語を無事、完結に導くことができました。思い出されますのは、昨年の今頃のこと。わたしは頭を抱えていました。多くのクリエイターさんが毎日のように紡ぎ出す物語と、その美しい言葉の数々に打ちひしがれて。果たして、わたしの描く物語は、noteという舞台で通用するのだろうか?お
2024年1月28日 10:26
馨「今朝は、この秋一番の冷え込みとなりました」 助手席に着くなり、カーラジオがそう告げた。 吐く息は白く、指先は冷たい――そしてまた、車の中も。 シートベルトを留めようとした僕の手に、運転席の眞琴はむっつりと無言のまま、あからさまに身を離した。 ……怒って、いるのだ。 こうなってしまうともう、手のつけようがない。 歩み寄ろうにも、話かけるだけ無駄だった。 気まずい沈黙
2024年1月21日 14:49
眞琴 クチナシの、ほのかな香りで目が覚める。 わたしは窓辺に寄りかかったまま、ブランケットにくるまっていた。 薄く開けておいた窓から吹き込んだ夜風にあたったのか、片頬と耳が冷たい。 ブランケットから抜いた手を、そっと頬にあてがう。 温もりがなんとも心地よい。 今一つ焦点を結びきれない眼で振り返った窓の外――ベランダには、緑に混じって白が滲んだ。 ちょっぴり隙間をひろげて、窓
2024年1月14日 06:50
眞琴 凪いだ湖水を想わせる、漆黒の闇。 その水面を、謎の光は進み続ける。 光の点は瞬きつつ円形から楕円に、そしてまた丸い形へと脈動し、次第に大きくなっていく。 やがて、それははっきりとした楕円形を示すと、さらに細長く横に伸び、光の粒に分離した。 ――モノレール?! そう。闇夜を走るモノレール……。きっとこんな風に見えたことだろう。 でも、まさか。そんなはずはない。 車
2024年1月7日 14:22
眞琴 眼下には、地平の果てまで一面の闇。 光も、ない。 音も、ない。 風も、ない。 匂いも――走りに走り続けたせいで、焼き付いた肺が吐き出す微かな血の香りを除けば――なにもない。 汗を吸った衣類は肌に纏わり、手の甲で拭った口元には、薄っすらと塩の味がした。 街は、闇という名の海の底に深く沈んで果てしなく広がり、そのまま空へ――吸い込まれてしまいそうなほど澄み渡った星空へと連
2023年12月31日 15:45
眞琴 夜風に頬を撫でられて、わたしは我に返った。 ちょっぴり腫れぼったくなったまぶたを開く。 涙が渇くと、満天の星空は変わることなく頭上にあった。 目の前のクチナシの樹に向き直る。 合わせた両手に、つぼみが頷き返した。 ひざについた土をはたいて、辺りを見回す。 道具はすべて片付いていて、残っているのはわたしとクチナシだけだった。「気を遣わせちゃったかな……」 それにし
2023年12月24日 10:58
眞琴「もうじきだよ――眞琴っちゃん――あと少し」 前を行く啓太郎が、呼吸の合間にわたしを気遣う。「――うん」 とだけ返すのが、精一杯になった。 急な登りを終えると水路は次第に浅くなり、もうわたしですら、ひざを屈めなければ歩けない。 狭苦しい通路の中、ちょっぴり酸欠気味なのか、頭の芯がぼおっとなる。「ついたぞ」 先頭の毬野が、足下を照らす赤いランタンを消した。 啓太郎が、背負
2023年12月17日 11:05
馨 それからのぼくは、支離滅裂だった。 授業には全然身が入らず、隣の机――森ノ宮の席――に飾られた花を、ちらちらと眺めてばかりいた。 彼女の言葉。 彼女の仕草。 彼女の顔。 すべてが幻だったみたいに、なにもかもがその輪郭を失って、はっきりと思い出せない。 それでも、季節は巡っていく。 秋は、ことさらに残酷だ。 美しい夕焼けを目にするたびに、ぼくはその光景を垣間見る。
2023年12月10日 09:52
眞琴 木曜日の終バスに、乗客は少ない。 わたしは啓太郎と二人、一番後ろの左窓側に並んだ。 ここに座っていれば、途中、香澄の墓碑「23番」の柱を通るはず。「発車します」 ぶっきらぼうなアナウンスでバスが動き出す。 タイヤが水溜まりを踏む音がした。 陽もすっかり暮れ切ってからの、激しい雷雨には肝を冷やした。 毬野が計画を断念してしまうのではないか――たとえ決行、としても、わた
2023年12月3日 09:48
馨 夜更け待って、僕らは出発した。 昨夜、眞琴がカーナビにセットしてくれたポイントで、クチナシとともに車を降りる。 木曜の晩が幸いしたのか、近所の家々にもう灯りはない。 宵の口の激しい雷雨にさらされて、夜気はしっとり湿気り、冷たかった。 窓は、閉ざされているだろう。ことさら、物音に気を配る必要もなさそうだ。 僕はクチナシの苗木を背負い、慎重に水路へと降りていった。 心配なの
2023年11月26日 10:02
眞琴 長い、一日になる。 覚悟して望んだ最終日、木曜のボランティアは、流れるように時間が過ぎた。 脩さんの誤解は最後まで解けず、おかげで恒例の懇親会も堂々とすっぽかして、毬野と二人、帰途につく。 日中、啓太郎が調達してくれた不足の品を確かめて、行動計画をおさらいすると、わたしたちにはもう、成すべきことはなくなった。 ベッドを譲る、というわたしの提案はあっけなく退けられて、啓太郎