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子どもに身につけさせたい重要スキル(私基準)

妊娠していると、「生まれてくる子どもにどうなってほしいか/何を与えたいか」といった類いの問いに遭遇することがある。面と向かって聞かれることもあるし、書籍やWEB記事でそういうテーマに出会うこともしばしばだ。

実際SNSなんか見ていると、世間にはありとあらゆる「親の望み」があるなと思う。一流大学に入れたいとかバイリンガルにしたいとか高所得者にしたいとか、受験させたいとか海外に行かせたい外見を良くしたいとか。

そういうものを眺めながら、さてはてじゃあ自分は、と考えてみる。

が、やはり私には、この手の高度な「育成方針」みたいなものはないみたいだ。この件についてのみならず、腹の中の人物の先のことを考えろと言われても、まず「胎児が無事外に出てきて、生まれ持った条件やなんとなくの方向性を見せてくれないと今はなんとも言えない」と思ってしまう。だってねえ、エコー検査でぼんやり全身を見てはいるけど、まだどういう特性持ちかもわからんのだもの。ちゃんと知り合っていない人のことはうまく考えられない。

夫もそんな感じなので、この10ヶ月、二人で「子どもにあれをしようこれをしよう」などという話をすることもなかった。「将来何かやりたいと言われたときに、やらせてあげられる程度の経済基盤は作っておきたいよね」という話をしているくらいだろうか。


ただ、腹がどんどんでっかくなる途中で、新しく自覚したこともあった。あくまで本人が持って生まれる条件に合致するなら、が大前提ではあるものの、「身につけさせたい技能」はいくらかあるな、と気づいたのだ。

その中のぶっちぎりナンバーワンはこれ。


本人の体質が許す限りの、睡眠の技術を身につけさせたい。


アイビーリーグも東大も京大も、別に目指さなくていい。のび太ほどの睡眠エリート(彼は0.93秒で眠りにつくことができる)にならなくてもいい。

でも、必要な睡眠をとるための知恵と、なぜ寝なければならないかの知識を持っている人間にはなってほしい。なんでも睡眠時間を削って解決する人間にはならないでほしいのだ。そう、この私のような人間には……。

これは約30年不眠生活を送った私にとって、かなり切実な願いである。

物心ついたときから、私は尋常でなく「眠れない」子どもだった。布団の中に入っても2〜3時間は平気で起きている。初めての完全徹夜は7歳のときだ。自分でも苦しかったしずっと困っていたが、寝ようと頑張ると余計らんらんと目がさえた。いわゆる睡眠障害である。

今考えれば、発達に関するなんらかの偏りが影響していたのだと思う。私はあらゆる刺激に弱く興奮しやすく、多動・衝動傾向もそれなりにあって、家の中でさえリラックスするのが苦手だった。まだADHDだとか、発達障害だとかいった言葉が使われていなかった時代の話だ。

そんなわけで、人生のスタート時から不眠モードだった私は、そのままの勢いで30歳近くまでぶっちぎってしまったのだ。

「寝られない」以外にできないことがないのがかえってまずかった。どういうことかというと、私の場合どれだけ短時間睡眠でも朝は起きられるし、自分の意図しないタイミングで寝落ちしてしまうこともあまりないのである。そのためありとあらゆる忙しさ、ありとあらゆる修羅場を「やり遂げるまで寝ない」というスタイルで乗り切る癖がついてしまった。

その結果どうなったか?

ご想像通り、「だいたいいつもなんとなく具合の悪い人間」として生きることになった。メンタルに不調をきたすとまず不眠が悪化するため、導眠剤中毒になっていた時期も何度もあった。この体質を改善できたと感じるようになったのはほんの最近のことである。

逆に改善されてからは、びっくりするくらい体調が良くなった。20代の時よりもむしろ元気になったくらいだ。こうなると、もっと早く危機感を持ちたかったし、もっと早く改善のための一歩を踏み出しておけばよかったと思う。めったに後悔をしない私の、これは数少ない後悔のひとつである。


一応フォローしておくと、それでも徹夜だけはあまりしないように気をつけていた。なぜかというと、異常な短時間睡眠で働きまくっていた父が、寝ている間のくも膜下溢血で死亡したのをこの目で見ているからだ。シンプルな現実。動物は寝ないと死ぬ!

過剰に「健康」の御旗を振りかざすのはマッチョで好きじゃないし、睡眠障害といっても多様で、改善が極めて難しいパターンもあることを知っている。だからなるべく全体主義的な主張をするのは避けたい。が、それでも「寝ない」ことの怖さだけは強く言いたくなるのは、それで死んだ人間を見ているからなのである。


そんなわけで私は、自分の子どもにこの件はきっちりと教育を施したい気持ちでいる。あとは歯をきちんとケアする習慣とか、身体のいい動かし方とかもあるけどまずは睡眠。

万が一、私の体質を受け継ぐならば自分で対処できるようになるまで一緒に工夫していきたいし、そうでないなら私よりはもっと一般的な、必要なだけの睡眠がとれる生活サイクルを家で維持する。あるいは、私とは逆の「寝過ぎてしまう」とか「起きられない」などのトラブルが発生する可能性もあるから、その場合はその場合で勉強したいと思う。


もちろん、どれだけこっちが頑張ったって限界はあるとは思っている。親が額に青筋浮かべて頑張ったところで、反発されてとんでもない睡眠不良に育ってしまうかもしれない。結局は他人だからコントロールしきれるものでもない、という観点も忘れないようにするつもりだ。間違っても、「私がこれだけ頑張ってるのになんであんたは寝てくれないの!」と泣き崩れるような親にはなるまい……(そんなことで泣かれたらたまらんよな子どもは)。

とはいえ、やっぱりぐっすり眠って体力回復する能力は、どんな人生を歩む上でも大事だと思う。睡眠は一日のセーブポイントなのだ。子どもに、セーブポイントの使い倒し方くらいは教えてやってもいいだろう。その上で、シナリオは好きに進めればいい。

出産まで3週間をきり、コアラのように日がな寝まくっている私はそう思うのである。



ちなみに寝つきの改善のためにやったことは、去年出した漫画の3巻にも描きました。

『やっぱり、きれいになりたい!』3巻
『やっぱり、きれいになりたい!』3巻

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