マガジンのカバー画像

詩集C(30代以降の作品群)

35
社会派ミステリー小説、PHASEシリーズの著者 悠冴紀が、30代から現在にかけて書いた最新の詩作品を、このマガジン内で無料公開していきます。 なお、作品の下に、一見解説文のよ… もっと読む
運営しているクリエイター

#人間

詩 『答 え』

詩 『答 え』

作:悠冴紀

答えなど
はじめからどこにも存在しない

誰かの導き出した明確な答えは
他の誰かにとっての問いとなる

私にも誰にも
答えようがない

その時どきに見出す小刻みの持論なら
すでに幾度となく言葉にしてきた

年月を経て
それら全てが問いに帰する

だから朽ちない
循環により生を得る

終局を迎え 落ちた木の葉は
残像だけをおいて土にかえる

土を踏みしめる誰かが樹を見上げるとき
そこに

もっとみる
詩 『愛とは……』

詩 『愛とは……』

作:悠冴紀

愛に飢える者を大勢見かける
孤独を避けるためだけに誰かを求め
愛する以上に愛されようとする

けれど愛とは相互のもの
己だけのためには
成り立たない

愛を賛美する者を大勢見かける
旋律に載せ 色彩を加え
世界中で謳われる

けれど愛とは諸刃の剣
憎しみ以上に相手を傷つけ
凄まじい破壊力を発揮する

愛を説く者を大勢見かける
まるで全てを解決する答えであるかのように
目指すゴールにそ

もっとみる
詩 『壊れた人々 ~傷だらけの世界で』

詩 『壊れた人々 ~傷だらけの世界で』

作:悠冴紀

大地に砕けた鋭い硝子片
辺りに潜む無数の地雷

傷を負わされた人間は
その内側に凶器を育む

哀しいかな
過去の被害者こそ未來の加害者

周りのすべてを巻き込んで
新たな壊れ者を生み出していく

同病相憐れみなど
一時凌ぎの幻想だ

壊れ者同士で更に壊し合っては
足を引っ張り合うだけの末路

立場の近い似た者同士の接触は
更に危うい火種となる

僅かに食い違う価値観は
激しい怒りと憎

もっとみる
詩 『亡者たちの自称』

詩 『亡者たちの自称』

作:悠冴紀

人の自称はあてにならない

大して何もできない人間ほど
自分は誰よりもできる人間だと
大言壮語を吐き散らす

大して何もわかっていない人間ほど
言われなくてもわかっていると
人様を黙らせ意固地になる

近視眼的な井の中の蛙
陳腐なプライドばかり養って
己を映す鏡を持たない永遠の幼児だ

何者をも真には愛せない人間ほど
声高に博愛主義を謳いあげ
世界を癒す聖母や神を演じようとする

もっとみる
詩 『無機質のユートピア』

詩 『無機質のユートピア』

作:悠冴紀

人は何にでも慣れるという
苦痛にも 恐怖にも 悲しみにも

少しでも楽になろうと望むあまり
己の感情を麻痺させる

確かに人は慣れていく
富にも 貧困にも 死臭にさえも

馴染んではならぬものもあるとは考えもせず
強さと信じて 慣れていく

人は自分で思うほど器用ではない

これほどの変化に馴染めたなら
他のどんな変化にも順応できるはずだと
驕り 高ぶり 過信する

激変に馴染めば馴

もっとみる