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[0円小説] 蛇と朝顔
(この作品は純粋な創作であり、登場する事象はすべて作者の空想に基づきます。現実の世界との類似はすべて神の悪戯にすぎませんのでご了承ください)
北インド・ハリドワルは亜熱帯の南国である。四月も半ばに差し掛かると日射しは容赦なく照りつけた。
とはいえ北にヒマラヤ山脈を控え、一年を通して雪山からの冷気が聖なるガンガーによって運ばれてくるものだから、空気は比較的ひんやりとしている。平地ではあるが、日本
[詩小説] 宙(そら)へ放つ手紙
きみのことなどロクに知らないのに、こんな手紙を書くのはヘンなことだろうか。
もともとヘンな人間なんだから、そんなこと気にしてもしょうがないんだけどさ。
でも敢えて言えば、ロクに知らないから書けることってのもあるんだし、ヘンなことを書かずにはいられないときもあるってことなんだ。
もちろん、そんなことは勝手な言い草にすぎないけどね。
きみのつき合いの良さに甘えて、って言ってもそのつき合いの良さ
[似非小説]トラトラトラ、われ奇襲に成功せり。あるいは山頭火に捧ぐ
[400字詰め20枚強、随想風似非小説 (太宰・春樹・新井素子へのオマージュあり) を全文無料にてお楽しみくださいませ]
特等席でラムネ飲むモッタイナイねゼイタクだね
(彼岸の中日を過ぎて、山頭火の人生の孤独を思いながら)
* * *
「ノンキだね、ゼイタクだね、ホガらかだね、モッタイナイね」というのが、自由律俳句師・種田山頭火が機嫌のよいときに書いたり言ったりする言葉なのだと、「
[奇妙な味の長めの短編] メビウス切断・第三回 (最終回)
第一回はこちら → https://note.mu/tosibuu/n/n7fb317c6fe95
第二回はこちら → https://note.mu/tosibuu/n/n3ec323b6ded0
3
滅郎はキッチンのテーブルに一人腰掛け、泡盛の入った湯呑みを両手で握りしめていた。しばらく前から滅郎の頭の中を「二度あることは三度ある、二度あることは三度ある……」と同じフレーズが繰り返し回り
[奇妙な味の長めの短編] メビウス切断・第二回 (全三回)
第一回はこちら→https://note.mu/tosibuu/n/n7fb317c6fe95
2
そして、一日が経ち、二日が過ぎ、やがて一週間、二週間。気がつくと何事も起こらないまま一ヶ月が過ぎていた。その頃には滅郎はあの奇妙な三人組のことはほとんど忘れかけていた。最初の一週間ほどは部屋に帰ると誰かが潜んでいるのではないかと気にかかり、部屋のあちこちを確かめるようなことが続いた。それとは対照
[掌編小説]メビウスの夢空間
うちの父さんて、ちょっとデリカシーにかけるんだよね。
デリカシーにかけるっていうより、人の神経を逆撫でするところがある。
本人は多分、そういうつもりはまったくないんだろうなあ。
だから、罪がないっていうふうにも言えるし、それだけに、たちが悪いとも言える。
ものごとって両面性があるもんね。
両面っていうとさ、どうしてもメビウスの輪を思い出しちゃうんだよね。
紙かなんかの細長いひもをさ、途中で1