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#16 能登へ(3)
「すずなり館」から東へ歩くこと8.8 km。
粟津地区に着いたのは正午ごろだった。
予定していた時間内に折り返し地点に達し、あとは15時のバスに間に合うように元来た道を戻ればよかった。
前回記したとおり、粟津では、製塩業を営んでいた事業者の方のことを、偶々出会った地元の方に教えてもらった。
辛い事実を聞いた上で、ご親族の元を訪ねる気にはとてもなれなかった。
海岸沿いの道を歩き、持参してきた「能登
#15 能登へ(2)
3月30日朝10時過ぎ、北陸鉄道の珠洲特急線バスが終着地「すずなり館前」に到着した。
私はバスを降りると、その場には留まらず、すぐに予定の行程に向けて歩き出した。
行く先は、珠洲市三崎町の粟津海岸。
Googleマップで測ると、すずなり館から8.8km離れている。
そこまでの往路と、折り返して復路の最終地となる珠洲市役所前までの距離を合わせると約20kmの行程だ。
帰りのバスは15時発だから滞在
#9 誰も知らない「羊の仙人」
前回の終わりに、谷邨一佐という人物に触れました。谷邨は、戦後の新聞などで「羊の仙人」と呼ばれた人でしたが、残念ながら現在ではすっかり忘れられ、顧みられることはほとんどありません。しかし、私にとってこの人の人生は非常に興味深く、いつか伝記を書きたいとさえ思っています。
既存の書物などの中に見られる谷邨一佐への言及は、北海道開拓使に関する著作『奎普竜将軍:附・グラント大統領来朝の真相』や、明治時代の
#1 海と羊/Sheep by the ocean
初めまして、山本佳典(やまもと・けいすけ)です。このnoteに目を向けてくださりありがとうございます。どこまで続けられるか分かりませんが、備忘録的な過去と、現在から将来に向けた思考のあいだを行きつ戻りつしながらゆっくりと書いていきます。
まずは簡単な自己紹介。私は昭和56年、広島県の海辺の町に生まれ、大学入学で上京、海外留学を経て東京に戻り、専門紙新聞社などを転々としたのち、2014年夏から個人