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「古今和歌集」私撰秀歌

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「古今和歌集」から、これはと思った歌を抜き出していきます。私の趣味で選んでいるので、世間の評価とは違うと思います。
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「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 あとがき

「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 あとがき

 数ヶ月にわたり、掲載してきた「古今和歌集」私撰秀歌も、これで終わりです。

「万葉集」「古今和歌集」「新古今和歌集」の中では、私は「古今和歌集」が一番好きです。

「万葉集」は、言葉遣いが古すぎて、直感的に意味が分かりにくい歌が多いです。また、世界に対する見方に、時代の隔たりを感じます。

「新古今和歌集」は、技巧的すぎて、読み解くのに知識が要求されます。そのために、鑑賞に身構えてしまいます。

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「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 資料編 秀歌まとめ

「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 資料編 秀歌まとめ

 特に心に残った歌をまとめてみました。かなりの率で、百人一首に被っています。やはり、百人一首は優秀な歌が集まっているようです。

歌21
「仁和(にんな)のみかど
君がため春ののにいでてわかなつむわが衣手に雪はふりつつ」

歌42
「つらゆき
人はいさ心もしらずふるさとは花ぞ昔のかににほひける」

歌53
「在原業平朝臣(ありはらのなりひらあそん)
世の中にたえてさくらのなかりせば春の心はのどけか

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「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 資料編 主な登場人物とその年代

「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 資料編 主な登場人物とその年代

● 主な登場人物とその年代・紀貫之[きのつらゆき](98首)
 (866/872年~945年)

・凡河内躬恒[おおしこうちのみつね](60首)
 (859年?~925年)

・紀友則[きのとものり](46首)
 (845年?~907年)

・壬生忠岑[みぶのただみね](36首)
 (860年?~920年?)

・素性法師[そせいほうし](35首)
 (?~910年?)

・在原業平[ありわらのな

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「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 資料編 歌の部類と年表

「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 資料編 歌の部類と年表

 以下に、「古今和歌集」の、歌の部類と年表を掲載します。

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■ 歌の部類

┌和歌
│├有心
││├短歌
│││├自然題材
││││├〔四季推移〕(春上下・夏・秋上下・冬)
││││├〔詠作動機〕(賀・離別・羇旅)
││││└〔表現技法〕(物名)
│││└人事題材
│││ ├〔事件過程〕(恋一~五)
│││ └〔詠作動機〕(雑上下)
││├長歌

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「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 資料編 各巻の構成

「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 資料編 各巻の構成

 以下に、「古今和歌集」の、各巻の構成を掲載します。

 撰者紀貫之の、定規で測ったような生真面目な性格が反映しているように思われます。

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●巻一 春歌上

 時節(立春・早春)、地儀(春野)、動物(春鳥)、植物(梅花・桜花)

●巻二 春歌下

 植物(桜花・花・藤花・山吹・新緑)、時節(暮春・三月尽)

●巻三 夏歌

 時節(初夏)、植物

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「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 資料編 抜き出した歌の集計

「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 資料編 抜き出した歌の集計

 というわけで、「古今和歌集 全訳注」の中から、これはと思った歌を抜き出しておきました。

 各巻の歌の数と、抜き出した歌の数、そして比率は、以下の通りです。

 以下、%です。

一巻 17/168 = 10.1%
二巻 24/300 = 8.0%
三巻 28/394 = 7.1%
四巻 8/249 = 3.2%

合計 77/1111 = 6.9%

 だいたい七%ぐらいが、心に残る歌でした。

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「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 巻第二十 大歌所御歌 歌1095

「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 巻第二十 大歌所御歌 歌1095

 ひたちうた。

「よみ人しらず

つくばねのこのもかのもにかげはあれど君がみかげにますかげはなし」

●漢字付加:
筑波ねの
このも かのもに
影はあれど

君が御陰に
ます影は無し

●歌意:
 筑波山のあちこちに木陰はあるが、君のおかげに勝るものはない。

●感想:
 古来知られていた歌。

 素直な感謝の心が伝わって来るような気がする。

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「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 巻第二十 大歌所御歌 歌1085

「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 巻第二十 大歌所御歌 歌1085

 ここから「巻第二十 大歌所御歌」です。

 主に神事や儀式用の歌です。地域の歌もあります。

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「よみ人しらず

きみがよは限りもあらじながはまのまさごのかずはよみつくすとも」

●漢字付加:
君が代は
限りもあらじ

長浜の
真砂の数は
読み尽くすとも

●歌意:
 君の御世は限りなく長く続くだろう。長浜の砂の数はたとえ読み尽くすことができよ

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「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 巻第十九 雑体 歌1041

「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 巻第十九 雑体 歌1041

「よみ人しらず

われを思ふ人をおもはぬむくいにやわが思ふ人の我をおもはぬ」

●漢字付加:
我を思ふ
人を思はぬ
報いにや

我が思ふ人の
我を思はぬ

●歌意:
 私を思っている人のことを思ってやらない報いだろうか。私が思っている人は、私を思ってくれないことであるよ。

●感想:
 その通りかもしれません。

 諧謔を感じる歌。

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 ここで

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「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 巻第十九 雑体 歌1021

「古今和歌集」私撰秀歌 古今和歌集 巻第十九 雑体 歌1021

 ここから「巻第十九 雑体」です。

 短歌以外の形式の歌です。

 長歌、旋頭歌(せどうか)、俳諧歌が収録されています。

 長歌は、枕詞、掛詞のオンパレードです。半分以上がそういった修飾で出来上がっています。

 俳諧については、以前俳句の歴史の本で読みました。この時期の俳諧は、和歌に使われない言葉が使われているそうです。

 実際に読んでみると、普通の和歌には入っていない、砕けた感じの言葉が

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「古今和歌集」私撰秀歌 巻第十八 雑歌下 歌998

「古今和歌集」私撰秀歌 巻第十八 雑歌下 歌998

「大江千里

あしたづのひとりおくれてなくこゑは雲のうへまできこえつがなむ」

●漢字付加:
葦鶴の
一人遅れて
鳴く声は

雲の上まで
聞こえ継がなむ

●歌意:
 葦の間にただ一羽取り残されて鳴いている鶴の声は、雲の上まで聞こえ伝わっていって欲しいものよ。

●感想:
 出世に取り残されていることを嘆いた歌。

 寂寥感が伝わってくる。

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「古今和歌集」私撰秀歌 巻第十八 雑歌下 歌956

「古今和歌集」私撰秀歌 巻第十八 雑歌下 歌956

「凡河内(おほしかふちの)みつね

世をすてて山にいる人山にても猶(なほ)うき時はいづちゆくらむ」

●漢字付加:
世を捨てて
山に入る人

山にても
猶憂き時は
いづち行くらむ

●歌意:
 世を捨てて山に入る人は、山の中でもなお憂いような時には、山を捨ててどこに行くのであろうか。(どこにも行けないだろう)

●感想:
 素朴な疑問のようで、何か真理を言い当てているような気にさせてくれる歌。

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「古今和歌集」私撰秀歌 巻第十八 雑歌下 歌943

「古今和歌集」私撰秀歌 巻第十八 雑歌下 歌943

 ここから「巻第十八 雑歌下」です。

 雑多な歌です。下巻は、憂う気持ちを歌う、歌になります。

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「よみ人しらず

よのなかにいづらわが身はありてなしあはれとやいはむあなうとやいはむ」

●漢字付加:
世の中に
いづら我が身は
ありて無し

あはれとや言はむ
あな憂とや言はむ

●歌意:
 世の中のどこにわが身はあるのだろうか、あるようで、な

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「古今和歌集」私撰秀歌 巻第十七 雑歌上 歌869

「古今和歌集」私撰秀歌 巻第十七 雑歌上 歌869

 ここから「巻第十七 雑歌上」です。

 雑多な歌です。上巻は、嬉しい気持ちを歌う、歌になります。

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 この十七巻以降(古今和歌集 全訳注 四巻)を一言で言えば、「その他」です。これまでの大きなカテゴリーに入らなかった歌が多く入っています。

 短歌以外にも、長歌、旋頭歌(五七七 五七七)や、俳諧なども入っています。

 そして、「全訳注 四巻

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