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経営者になって振り返る「こういう従業員であるべきだった」という話

萱場です。

ここ2年ほど、経営理念、ビジョンミッション行動規範といった、会社としてどっちを向くか、迷った時にどう判断するか、といった「思想」の文書化を続けていていまして、少しずつ文字に落としては微調整、といった作業を繰り返しています。特に行動規範は、萱場が居ないときや実務ベースの日々の細かい意思決定のところで、萱場に聞くことなく、メンバーが自分で判断する時の判断基準となるべきもので、会社全体の効率性の観点からも、文書化し周知しておくべきものです。

しかし、いざじっくり考えて文字化していくと、「自らも経営者だと思って当事者意識をもって考えるべし」とか、「コンフォートゾーンに安住せずに常に能力向上し続けるべき」といった、意識高いフレーズが並んでしまいます。もちろん、会社のためであるのと同時に、それぞれのメンバーの個々人の成長のためになると思うことしか書かないわけですが、ふと考えると、「あ、求める水準が高過ぎるかも。多様性を認めてこそのチームだし、気長にゆっくり働きたい人もいる。それに、平均的で同質な戦力を揃えるよりも、弱みをチームで補完してそれぞれ個人の強みを発揮してもらうような体制でこそ、会社の意味があるよね。」と、求め過ぎている自分に反省しました。

思えば、自分の勤め人時代も当然にそんな完璧な人材ではなかったし、むしろまわりの超絶仕事できる会計士達の能力に押されて、昇進競争から逃げるように転職したような気もするし、自分ができなかったことを人に押し付けるのもおかしい。

しかし10年ほど勤め人をしてから経営者になり、そこそこ経験もしてきた今になって、「サラリーマン会計士時代には気づかなかったけど、経営者はこういう従業員を求めてたんだなあ。自分もこうすればよかったなあ。」といったことに色々と気付いたので、書いておきたいと思います。

繰り返しですが、人はそれぞれ長所と短所があって、強みも弱みも、キャリアプランもスタイルも違う。シンガポールに来てまで日本の会計事務所勤務のように人生の全ての時間を仕事や自己学習に費やしたくないという気持ちも分かります。赤道直下のこのシンガポールで、自由な職場で半そで短パンで仕事したいということもあるでしょう。なので、全員に求めるわけでも強要するわけでもなく、あくまで「経営者(萱場だけじゃなくおそらく一般的にだいたい同じだと思いますたぶん)もしくは上司は、こういう従業員が良い、と思ってると思うよ。そしてその多くはあなたの将来のためになりますよ。」という愛のあるアドバイスだと思って読んでもらえると幸いです。自分がサラリーマン会計士だった時には気付かなかったことも多いです。

仕事をお願いしやすい雰囲気を醸し出していると凄く助かります。忙しさは表に出さない、新規の仕事は喜んで引き受けるといった姿勢で仕事していると、自然と会社にとってかかせない存在になるでしょう。

◆仕事を任せられる安心感(お客様との会話、emailの文章や、お客様から好かれるコミュニケーション力など)が欲しいのと、外に出しても恥ずかしくない服装や立ち振る舞い、髪型、言葉使いを意識してほしいです。これはたぶん勤め人だと特に気付きにくいけど意外と凄く重要。

◆やはりホウレンソウ(報告・連絡・相談)は適時適切にやってほしいです。「何をホウレンソウするか?」の選択一つとっても、その人が何を重視しているかが分かるので、価値観のすり合わせという意味でも大事だと思います。

◆自分で情報を抱えることなく、ノウハウや情報は社内でシェアしてほしいです。個人よりも会社全体を重視した方が結局個々人もトクになる仕組みをつくるのは経営者の役割ですが。

次回以降でいかに効率よく作業するかの改善案を常に考え、仕込んでおいてほしいです。そうじゃないと会社全体として効率性が上がらないので。

自分の頭で考える癖をつけてほしいです。上司に報告や相談するときは結論とともにその根拠を伝えれば考え方そのものについてもアドバイスを得られるので自分の勉強にもなります。逆に、自分なりの結論にすらたどり着けないと判断した場合は早く助けを求めてほしいです。責任感が強過ぎてアクションが遅れるのは最悪なのでバランスが難しいところですが。

常にまわり(社内も社外も)からどう見られているかを意識して行動してほしいです。社内からも社外からも、実は凄く見られてると意識して、どう振舞うのが最善策(会社にとって最良)か、客観視できるようになると最高ですね。

嘘をつかない、人を出し抜かない、無意味な言い訳はしない、何人に対してもフェアであってほしいです。萱場の個人的なポリシーではありますが、社内外関わらず、人の信頼を得るうえではとても重要だと思います。

モノの本質、目的、趣旨を常に意識して考えてほしいですね。「Aと書いてあるけど、制度の趣旨から考えたらBなんじゃない?と勘づくアンテナ」と、「Bじゃないか?を徹底的に調べるプロ意識」がほしいです。これができないとマネジメントレベルには上がれないでしょう。

言ったことは必ずやり、できないことは言わないようにしたほうがよいでしょう。少なくとも言ったからには顛末まで責任をとるべきと思います。これも自分の個人的ポリシーで恐縮なんですが、たとえノリで言ってしまったYESであっても、言ったからにはやるべきだし、考え直して、やっぱできない、ということであればそれはそれでゴメンナサイと言えばいいと思います。とにかく言ったことについて自覚、責任をもち、YESとだけ言い放ってその後何も音沙汰無し、というのは最悪で、それが繰り返されると信用を失っちゃいます。

◆仕事に優先順位をつけ、期限は絶対順守してほしいです。例外を除いて、「あなたに」やって欲しいというお仕事は通常はあまりありません。期限直前になって期限内に出来ませんというのは最悪で、期限内にできそうにないなら早くチームに助けを求めなければなりません。自分が誰か(お客様など)にボールを投げてから、ボールが返ってくるまでにある程度時間がかかることようなタスク(emailで質問を送る、など)は、とりあえず早くボールを投げる、といったように時間軸も含めて仕事に優劣をつけることは重要です。

◆できる限り多くの選択肢を考え抜いて、リスクとベネフィットを比較する癖をつけてほしいです。例えばオフィスを引っ越しするとして、引っ越し業者の見積り入手、というお仕事があった時に、A社B社C社のそれぞれの長所短所やリスクなどを整理して、A社は今回メリット無し、B社とC社は判断が必要、となったとしましょう。その場合、A社が対象外の理由、それから●を重視するならB社、▲を重視するならC社、といったように、選択肢を並べて比較する、というのがビジネスの必須スキルかと思います。もっというと、じゃあ平日と休日では引っ越し料金が違うのか?時間帯は?そもそもその見積り、割く人数多過ぎるよ?ソファーは古いので捨てたらどうなの?といったように、自分でより多くの選択肢を考え抜いて比較するアクションをとれるかどうかがさらにその次のステップでしょう。

困難であっても成長機会からは逃げずに挑戦してほしいです。例えば英語が苦手な日本人スタッフが、シンガポールの監督官庁と英語でやりとりするのがしんどいのでローカルスタッフに電話してもらったりすると、英語の伸びも止まってしまうなど、困難なことからいかに逃げずにチャレンジするかによって、成長角度が変わると思います。

◆特にお客様からのemailは、とにかく早く返信(24時間以内)してほしいです。せめて午前中にきたemailはその日中になんらかの返信をするぐらいのスピードが欲しいです。「明日、なんらかのご連絡をさせていただきます。」という返信でも全然いいと思います。

ケアレスミスを徹底的に無くしてほしいです。極めて難しいですが、自分が最後の砦(レビュワーはいないと思い込む)として仕事を自己完結させる気でセルフチェックを徹底してほしいですね。そもそも足し算間違える、みたいなケアレスミスって、能力ではなくて意識の問題ですし誰でも改善できますからね。「Aさんの成果物はケアレスミスが多そうだけどBさんからの成果物にはケアレスミスは無いだろうな」という印象を持つと、レビュワーはAさんの成果物のチェックに多くの時間がかかるし、AさんよりもBさんの評価が高くなります。ミスがありそうか無さそうか、の印象が大事で、そのためにはケアレスミスのセルフチェックを確実にこなして印象を積み上げることが大事だと思います。

◆営業時間にアウトプットを、営業時間外はインプットを行う意識で、若いうちは仕事と自己研鑽(今の仕事以外のスキルでもよいし)にフルコミットしてほしいです。長時間働くのがダサい、みたいな雰囲気のある昨今ですが、フルコミットして爆速で成長しないと、萱場にはいつまで経っても追いつけないと思うのです。

そんなとこでしょうか。再三の繰り返しですが、全てを全員に求めることは絶対にありませんし、会社としては多様性ウェルカムですので全然やらなくて大丈夫です。しかし全てを積極的に意識して実行できるメンバーがいるならそれは経営陣として迎え入れますし、場合によっては後継者候補になるでしょう。

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