見出し画像

世界にはばたくIKEBANA

「え、これも生け花なの?」
思わずそんなコメントがこぼれ出てしまいそうな展覧会が6月上旬、ミュンヘン植物園を会場に開かれました。ミュンヘンに草月流の支部が発足して20年という節目を記念した"IKEBANA Japanische Blumenkunst(生け花 - 日本の花の芸術)"。そこには日本を飛び出して進化するIKEBANAの姿がありました。クスっと笑っちゃうようなかわいらしいものから、こうきましたか、と感嘆するような作品まで、どうぞご照覧あれ。

まずは展覧会場の目印として立っていたオブジェから。メタリックパープル色に塗られていたのは竹。ではその上にかつらのようにのっかっているショッキングピンクに色付けされた植物はなんでしょう。

矢が頭に突き刺さってます

正解はヤドリギ。意表をつかれた、というのかとりあえず目立っとけみたいな色だわ、と思いながら会場入り口に目をやると、竹に何やら赤いものがつるされている。。。

吊るすとくれば柿できまり、との日本的発想はこっぱみじんにやられて、確認した正体は赤いパプリカ。唐辛子なら魔よけだけどパプリカでもいいのか?そしてその下では黄色い柑橘類がだらんと日光浴中ときた。これも生け花っていうカテゴリに入るのかしらん。。。?

正面に飾られていたのがこちら。

ユリと白いスターチスをうねる幹にからませたダイナミックというか巨大な作品。大きさはドイツ仕様。

ダイナミックというか豪快さという点ではこちらの作品も負けておりませぬ。

イス5脚とアンスリウムとアガパンサスを袋に入れて、それをぶんぶん振り回して袋をさっ!ととったらハイ、出来上がり。

そしてこちらは床の間標準サイズ。正統派というか、99%の人が生け花と聞いて思い描くようなタイプの作品群。奇抜さはなくても生け花の美意識が伝わってきます。器にはられた水が涼やか。

使う花材もさまざまならば、もちろん器も様々。器をめでるのもまた楽しきかな。

さて私のお気に入りはこちら。

あら、おたくは今晩お鍋?なんて会話が飛び交いそうな作品

ネギとパプリカという取り合わせに、なぜかローズマリーとローリエが添えられている。あと魚が入っていれば今日の夕食は決まり!みたいな取り合わせで、しかも器までがハンドバックみたいなのが私的にはツボなのです。

さてとっておきの一品をお見せしましょう。ネギ坊主みたいな球状に咲く花はスカビオサ・ステラータ。ではこの白いひもがビロビロと生えている物体は?

宇宙人と交信できそうな雰囲気


ズームしてみましょう・・・

芽が出たジャガイモのお化けたち!なんともドイツ的ではないですか!!この作品をいけたのは日本人なれど、ジャガイモが主食で豊富に出回るドイツだからこそ生まれた斬新な発想でしょう。(狭い空間で飾るとイモからすえた匂いがしてキツいというやっかいな作品ではあるらしいですが。。)

草月流の歴史は100年ぐらいで、最も新しい流派.。使う素材も技術もかなり自由なのが特徴だと説明を受けました(もちろん基本は大事ですよ、と念押しも忘れずに)。生け花門外漢の私が言うのは口幅ったいのですが、型破りに見えるような斬新な作品を目にして、生け花は日本という枠から抜け出してIKEBANAとして世界に羽ばたいているんだなという印象を受けました。それはお寿司がいろんな食材と組み合わさって新しい発想で生まれ変わってSUSHIとして世界中の人から愛されるようになっているのと同じ。アボガドやチーズのような新しい味が加わることによってお寿司に新たな魅力が備え、ファンを増やしたように生け花もまた西洋的な発想とそこならではの素材が使われて新しい道を辿っていくのでしょう。

それにしたって日本人の自分が何も生け花について何もしらず、聞かれても答えられない現状はどうも情けない。フローリストの友人も展覧会を見て「生け花のことは知らなかったけど素晴らしかった。もっと知りたいわ」と感動しながら言ってくれたのに。

展覧会のオープニングで支部設立の立役者だったGさんはこう挨拶されていました。「私が若いころは女性にとって茶道、華道は家事と同じくらい当たり前のことでした」。(うちの母も茶道は裏千家、華道は安達流の免状を持っています。。。)

それに引き換え私ときたらお年頃の時代には「華道なんて権威主義で時代遅れじゃない」とのたまい「植物は生きている状態が一番なんだから」と力説していた。「花なんてそれだけできれいなんだからテキトーに花瓶に入れればそれで充分でしょ」と思っていたものまぎれもないこの私。なのにどうだ、こうやって外国で日本の評価アップに貢献しているのは(嫌々だったとしても)きちんと自国の伝統文化を学んで身に着けて来られた諸先輩方。大きな口を叩いても無芸無能の私は初代が築いた富と財を食いつぶすただのボンクラ2世みたいなもん・・・すみません。
反省すれど時既に遅し。

生け花6箇条。生け花とは。。。。

タイムマシンがあって若い自分に会うことができたらスリッパでパコーンと頭をひっぱたいてたしなめてやりたい。「華道は芸術であり美学である。いくつもの世代と時間という厳しい審判を経て残っているんだから若造が知ったような口を利くもんじゃない。習ってみてから文句を言え」ってね。




いただいたサポートは旅の資金にさせていただきます。よろしくお願いします。😊