回文ショートショート ベラスケス事件
●回文 東北弁のように読む
見て! ベラスケス、夜、共に寝たね?
荷も盗るよ。スケ、スラべてみ。
解説:
宮廷画家として知られているベラスケスはその人生の大半の時間をスペイン王宮の中で過ごした。そんなベラスケスの外遊で特に知られているのは2度のイタリア旅行である。
旅先の重圧から解放されたベラスケスは旅先で娼婦と一夜を共にした。充実した夜を過ごしたベラスケスだったが、その娼婦が身支度をして帰る前に宿屋の親父ががなり込んできた。
その娼婦は手癖が悪いという。以前にも貴族の通行手形が紛失して騒ぎになったことがあり、その時は犯人は出なかったが、主人はその娼婦を訝しんでいるのだという。トラブルはゴメン、というわけだ。
イノシシのように太って肉厚の主人は訛りのつよい口調で、「そのスケをスラべてみろ」というのだ。ベラスケスは侍従に荷を改めさせた。すると妻に買ったはずの鼈甲のクシがなくなっており、それは娼婦の懐から出てきた。
したり顔の主人。しかし、ベラスケスは慌てずに「何も問題はない。なぜならばそれは私がその女性にあげたものだからだ」と言った。主人は「畜生! 紳士気取りの世間知らずめ。どうせこいつはそんな優しさをどうとも思っちゃいない! こいつはまた繰り返しますよ」とうめく。
という話。
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