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そうだったのか

牛乳を落とす君


4月。給食初日。
係の子が配ってくれた牛乳パックを床に落とすキミ。
拾って置くと、また落とす。
係の子が困って私のところへ来た。
まずは、係の子に感謝。よく怒らずに対処してくれたね、ありがとう。

で、本人のところへ行ってみる。
不機嫌な顔。
「どうした?」
無言。
「牛乳、配ってくれたんだよ。」
無言。もしかして・・・
「3年のときは配ってなかったの?」
うなずく。
「今年から、配膳台がいっぱいだから配ることにしたんだ。いい?」
納得したら受け取ってくれた。次の日からは、落とすことはなかった。

教科書を落とす君

4月、教科書配布。
何種類も順番に配られていく。

教科書を机の両側にバサバサと落とすキミ。
拾ってあげても、また落とす。
机の中に入れようとすると、力をこめて拒否する。

「どうした?」
無言。
さっきまで、普通に受け取って、丁寧に名前を書いていたんだけどな。
しばし、考える。
何か気に入らないことがあった?
拾いながら、教科書を見る。
名前が擦れていた。
「名前が変になっちゃったの?」
若干止まる。多分そうらしい。なぜ?もしかして?
「(前の)O君の手が当たったの?」
うなずく。
O君はちょっとがさつなタイプ。
多分、後ろも見ずに教科書を回したのだろう。
O君に伝えたら、すぐに謝ってくれた。
でも、キミの気持ちはそこじゃないんだよね。
丁寧に綺麗に名前を書きたいんだ…。
「大丈夫。ちょっと待っててね。」
もしかしてと思って消しゴムで消してみる。
ラッキーなことに油性ペンも綺麗に消える素材だった。
綺麗になった途端、何事もなかったかのように受け取ってくれた。
最後の1冊まで、綺麗に名前を書いていた。

エコバッグを落とす君

5月。
社会科見学で見学先からもらったエコバッグが配布してあった。
遅刻して登校すると、机から落とすキミ。
いらないらしい。
「いらなかったら、ママにあげて。」
ダメらしい。
今度は何?

「これはね、この間行ったゴミの最終処分場でみんなにあげてくださいって言われて先生が預かってきたんだよ。リサイクルで作ったバッグだから、大切に使ってほしいって。」
「みんなお揃いだから、分かるように番号をここに書いておいたよ。」
思いつくことを話してみる。
受け取ってくれた。

1学期を終えて

今年のクラスには、2人、自閉スペクトラム症の子がいる。
最初は、一つ一つ分からなかったけど、今はだいぶ彼らのことが分かってきた。
落とすのは、理解できないことは、なかったことにしたいからなのかなと思っている。
急に叫んでばたりと倒れたら、虫がいたか虫の写真があって怖いんだなとか、
「CD」と取りに来たら、みんなとフォークダンス踊りたいんだなとか、私なりに理解している。
止まる、固まる、泣く、時には叫ぶ等、行動に出すから、他の子より、接しなくてはいけない場面が増えて、一緒にいる時間は長い。(その分、あとの37人との時間が減るという悩みは大きいが。)
周囲の子は4年目の付き合いだから、私より分かっている面もあり、助けられた。
この1学期で、昨年度まで彼らが全く興味を示さなかった、「みんなと踊る」といった姿が少し見られた。学期後半には、2人が学校を楽しみにしているらしい様子が保護者から聞かれ、嬉しかった。

実は、他にも場面緘黙(学校では喋らない)、複数のADHD他、いろいろなメンバーがいて、普通に全員が教室にいることが日々難しい。
でも、なるべく笑顔でいたいし、2学期もみんなで成長したい。




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