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推し乳製品メーカーを推す旅【編集後記】

 アナタには「推し乳製品メーカー」がありますか。乳製品メーカーっていうと、スーパーとかでよく目にするのは森永とかメグミルクとか、雪印とか。まぁ一般的なのはそんなところでしょうか。
 かくいう私の推し乳製品メーカーは、島根県雲南市の「木次乳業」。今回はそんな、推し乳製品メーカーを味わい尽くす、まさに「推し活」な旅の模様をお楽しみください…。

下記リンクより、動画本編をお楽しみください。

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  10月29日、土曜日。朝5時前、松江駅。雨上がり、真っ暗、寒い。店も開いてない。始発前。

 定刻より少し早い到着、不均等にブツ切りにされた夜をつなぎ合わせて、まだ明けきらぬ夜と朝の境界に私はいた。一様に背中を曲げた人たちがバスからポツポツと降りて来ては、真っ暗な空とは対照的な、いやに明るい駅の構内に消えていった。始発電車は、まだ来ない。

 島根県に来るのは結構久しぶりで、2020年の3月にサンライズ出雲に乗るために出雲を訪れて以来だ。あのときも確か早朝出発のバスで島根に向かったんだ。大阪から島根には意外とすぐたどり着ける。夜行バスは乗務員の休憩を挟むので6時間ほどかかるのだが、昼行バスやその日のうちに走りきる場合は、乗降地によっては4時間もかからない。島根県は東西に土地が広がっているが、松江や出雲と行った主要都市はすべて県東部に集中しているのもその一因だろう。

朝5時の松江駅前バスターミナル
宍道湖沿岸を走る山陰本線
主張が強め

 松江から西へ向かう7時台の普通列車に乗るため、松江駅から少し歩いたところにあるジョイフルで時間を潰す。開いててよかったチェーン店。ちなみに、現時点で日本一早い時刻に出発する特急列車は、出雲市駅を4:42に発車する特急いずもだ。松江には5:06に到着する。岡山で新幹線に接続するためこの時刻になったらしいが、電車がいかにして、飛行機といった乗り物に打ち勝とうとしているか、交通競走の真髄をここに見た気がする。
 西出雲行きの電車で西へ行く。朝の宍道湖沿岸はツンと澄んでいて綺麗。途中の駅で高校生たちが降りていく。休日の部活動だろうか。ウインドブレーカーのシャカシャカという音に、無性に懐かしさを覚える。

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木次線の車窓
しゅき…///
奥出雲おろち号 ディーゼル側
奥出雲おろち号 貨車側

 宍道駅からディーゼル車に乗って40分、木次(きすき)駅に到着。木次線といえば、君のような勘の良いガキはもう気づいてるだろうけど、かの有名なトロッコ列車「奥出雲おろち号」のお膝元である。
 約26年の稼働を終え、車両の老朽化などの理由で2023年11月をもって運行終了となった。乗車こそ叶わなかったものの、最後にその姿を見れて良かった。備後落合駅に向かってゆっくり去ってゆくおろち号を見送り、私は木次の町へ繰り出した。

本社前で

 木次駅には商店街通りがあり、そこを抜けてしばらく歩くとスーパー銭湯「湯ったりおろち湯」がある。夜行バスでバキバキになった身と心を朝風呂でしっかりほぐしたあと、その近くにあるお目当ての木次乳業の本社へと赴いた。

 木次乳業本社工場では厳密にいうと製品の販売はしていない。いわゆる直売所という機能はないのだが、社内にいた方に声をかけると、工場のほうから製品を直接持ってきていただいた。一応、事前に電話で「本社の方で製品を購入できるのか」という旨は確認していたので、まぁ大丈夫だろうとは思っていた。でもまさか工場から直接持ってきていただけるとは。これは市場に流通する前の製品だろう。価格も直売価格だろうか、スーパーなどで購入するより少し安かった。嬉しい。ありがとうございます。
 本当は牛乳かコーヒー牛乳のどちらかだけを買うつもりだったが、声をかけた社員の方が2つとも持ってきてくださったので有難く2つとも購入した。とりあえず先にコーヒー牛乳を味わう。すっきりとした味わいで、コーヒー牛乳独特の口にねっとり残る感じもなく、かといって薄くなく、上品なコクがある。風呂あがりに限らず、どんなシチュエーションで飲んでも気分を邪魔をしない味だと思った。美味しい。一介のコーヒー牛乳好きとして、これはかなりの高評価だ。

名物の焼き鯖寿司

 そんな木次の名物というのが、この焼き鯖寿司である。木次は港町ではなく山の中にある町だが、なぜ焼き鯖寿司が有名なのだろうか。木次の町中には、八岐大蛇(やまたのおろち)の石像がある。奥出雲おろち号の名にも冠されている、古代日本の神話に登場する怪物である。奥出雲地方は神話の里とも呼ばれているほど、日本の神話において欠かせない存在。すべての神が集うとされる出雲大社が近くにあるから確かに必然とも言える。
 そんな木次の町を十分に堪能して1日目が終わる。

はぐれヤマタノオロチ
木次のスーパーで買ったきすきヨーグルト

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 木次をあとにした私は、宍道駅からさらに西へ。出雲市駅ではサンライズ出雲が今夜の出勤を今か今かと待ちわびているが、私はこのサンセットが美しい山陰本線を行く。出雲市以西は電車の本数がグッと減るので、1本電車を逃すとかなり待つことになる。

大田市の町並み
危険な好奇心

 JR出雲市駅を出て最初の特急停車駅「大田市」。各駅停車で行くと1時間ほどかかった。電車にはそれなりに人が乗っていたが、皆大田市のさらに先に行くようだった。
 午後5時過ぎ、駅前に人影はなく、タクシーが2台ほどロータリーに停まっていた。今日のお宿に行く前に、スナック街を覗いたり地元のスーパーで食材を見たりして、疲れからかもう21時過ぎには眠りに落ちていた。

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  2日目。この日も相変わらず早めの行動を心掛けた。
 大田市から出雲市に戻る途中、小田駅で下車。快晴、海へ続く道。

坂を下れば日本海

 当初の予定ではこの駅で降りるつもりではなかったが、このあとの目的地へのアクセスをいろいろ考慮した結果、選ばれたルートの都合でこうなったのである。
 降りるつもりのなかった駅、なんか理由でもない限り降りることのなかった駅。「カキフライが無いなら来なかった」というエッセイを思い出した。多分この先、この駅で降りることはまぁなかっただろうから、これも旅の魅力のひとつだ。
 ここから路線バスに乗り、目的の場所へ向かう。

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 バスに揺られること30分。出雲市の「喫茶ラブラブ」に着いた。

結婚式会場のような外観
LOVE LOVE

 総じていい喫茶店だった。出雲を再訪するときは是非訪れたい。

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 先程乗ってきた路線バスは1日3便しかない路線なので、喫茶店から最寄りの鉄道駅まで歩くほかない。出雲神西(いずもじんざい)駅までは歩いて約30分。目的の電車を逃すとさらに1時間近く待つことになるからなんとしてでも間に合わせなければならない。

出雲市駅舎
2日目も推し活

 出雲市には何度か来ている。1度目は学生時代の友人と、玉造温泉に行った時に立ち寄って出雲大社に行った。2度目は卒業旅行で、出雲市からサンライズ出雲に乗って東京まで。そして今回は3度目。あとの予定があるので今回は出雲大社にも日御碕にも寄れない。とりあえずスーパーで木次牛乳を買って推し活。雨がパラついてきたので雨宿りをしながら。

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 この旅の大きな目的は4つ。大前提として木次乳業の製品を楽しむこと。2つ目に奥出雲おろち号のお見送り。3つ目に喫茶ラブラブへの訪問。そして4つ目が、一畑電車に乗ること。
 一畑電車は、電鉄出雲市駅から、出雲大社や松江までを結ぶローカル路線。特に松江へ向かう路線は、宍道湖の沿岸を眺めながら移動できるのでとても風情がある。今回私は、出雲から松江へ行かなければならなかったので、宍道湖の沿岸を走れるのを楽しみにしていた。

 電鉄出雲市駅では、ローカル鉄道らしい可愛い車両が私を待っていた。ここから宍道湖北岸を通って、終点「松江しんじ湖温泉」まで小一時間の道のりだ。

 めちゃくちゃ揺れる。途中ホントに宙に浮いたりもした。湖なんて、近くで見れば海とほとんど変わらない。塩分があるかないかの違い位なもんよ。湖がある地域は、周辺の土地のことを湖北とか湖西とか呼ぶことが多い。滋賀県とかもそうだが、湖が生活の中心にあることを感じさせる良い風習だと思う。
 そんなこんなで松江しんじ湖温泉に到着。駅前の足湯で疲れをフットバス。今年訪れた道後温泉とか鬼怒川温泉でも足湯に浸かった。手軽に温泉気分を味わえるいい施設だ。ありがとうございます。

 松江市街に降り立つのは初めてだ。どうやら、一畑電車の駅とJR線の駅はかなり離れているようだ。関係性でいうと、JR京都駅と阪急河原町駅くらい離れている。メインの繁華街はその中間あたりにあるから、どちらの駅に降りても少し移動せざるを得ない。

人気の定食屋でランチ

 松江城に来た。城内のベンチで推し活おやつ。昨日はヨーグルトを食べたので今回はプリンを。ドリンクは何にするか悩んだけど、ここは同じ島根県の乳業メーカー、中酪さんのコーヒー牛乳を。おじいちゃんの休日みたいなことをしているが、私が目指しているのはこういう休日。

切り身の肉が落ちてる
ごめん、同窓会には行けません

 さて、楽しかった島根県の旅も終わり。松江市内をあらかた歩き回ったところで松江駅に戻ります。帰りも相変わらず高速バス。大阪と島根を結ぶ交通網は、特急と新幹線を乗り継ぐルートと高速バスルートがあるが、所用時間については鉄道に軍配があがるものの、金額面で見ると圧倒的に高速バスが安い。おまけに所要時間はものの1時間ほどしか変わらないため、あまり急いでいないのなら高速バスも十分検討の余地はある。現に私は一度も特急やくもで島根に行ったことがない。鷹の爪団もビックリだ。

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 島根のお土産に、木次乳業の「イズモ・ラ・ルージュ」を買った。乳製品のボスこと、チーズだ。ワインとボロネーゼでいただきました。美味しかったです。


 てことで、島根県推し活の旅、これにて終了です。
 何か好きなものを心ゆくまで食べに行く、これも立派なオタ活というか、消費を伴っているから立派な経済活動だと思うんですよね。今回は乳製品でしたが、もっと間口を広げたり毛色を変えたりして、旅にテーマ性を持たせたいですね。
 ということで今回はこのへんで。

#推し活

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