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「ズルい」で終わらせない

 2023年1月2日・3日に開催された、第99回東京箱根間往復大学駅伝競走。お正月の恒例行事である、通称「箱根駅伝」で、東京国際大学のVincent Kibet Yegon選手(経済学部4年)が、金栗四三杯を受賞した🎉🎉。同杯は2004年に創設され、大会で最も活躍した選手に贈られる。

 ヴィンセント選手は4区を1:00:00のタイムで走りきり、従来の区間記録(2020年、青山学院大学4年吉田祐也選手1:00:30)を大幅に更新。1年次(3区59:25)、2年次(2区1:05:49)に続く、3度目の区間新記録となった。

 3度区間新記録を達成したのは、武井隆次選手(早稲田大学、1991〜94年)や柏原竜二選手(東洋大学、2009〜12年)など過去に複数いる。また、3区間の記録を同時に保持した選手としては、佐藤悠基選手(東海大学、2006〜09年、3区・1区・7区で記録を保持)がいる。ヴィンセント選手は3区・2区・4区の記録を同時に保持していることになり、往路(1〜5区)での3区間同時保持は初めての快挙だ。(区間表記は記録達成順)

 ヴィンセント選手は、各大学のエースが集う「花の2区」で区間記録を樹立した、2年次に続く金栗四三杯の受賞となる。私は30年来の箱根駅伝ファン(応援しているのは中央大学)だが、今回の受賞を心から喜ぶ😊😊。大学陸上競技界の大きな前進だと思うからだ。


 
 ??? 一番活躍した選手がMVPに選ばれただけでしょ? そんなに喜ぶことなの? となった貴方は素晴らしい。その通り、これは極めて当然のことだ


 だが、残念ながらと言うか、やっぱりと言うか、ガラパゴス日本においてはその「当たり前」が通用しないことが多い。留学生ランナーが金栗四三杯を受賞するまでには、紆余曲折があった。

 象徴的なのは、山梨学院大学のMekubo Job Mogusu(2006〜09年)選手だ。2区で3年次(1:06:23)・4年次(1:06:04)と区間新記録を樹立したにも関わらず、モグス選手が金栗四三杯を受賞することはなかった。4年次は前出の柏原竜二選手の驚異的な5区デビューの前に霞んだ感はあるが、3年次はせめて「複数受賞者のうちの一人」に選ばれるべきだったと思う。実際、「留学生をMVPにしないという、大会側の意図を感じる」という書き込みがネットに上がっていた。


 箱根駅伝で留学生が初めて走ったのは、1989年。昭和64年のことだ(平成元年は1月8日から)。山梨学院大学の2区を担当した、ケニアからの留学生(来日は高校時)Joseph Moganbi Otwori選手(2006年、交通事故のため永眠)は、視聴者の度肝を抜く快走を披露。1〜3年次に区間賞を獲得した。4年次こそ区間2位に甘んじたが、山梨学院大学の初優勝に貢献した。

 当時の大学駅伝では、「1kmを3分ちょっとで走る」が常識だったが、オツオリ選手の異次元の走りはそれを覆した。各大学のエースを「ごぼうぬき(この言葉が普及したのも、オツオリ選手の功績だと思う)」する姿は、小学生だった私の記憶に鮮明に残っている。その後に活躍する留学生ランナー達の「先駆者」として、覚えているファンも多いだろう。

 一方で、あまりに速過ぎること、外見が一般的な日本人と異なる(当たり前ですね😅)ことから、否定的な声も上がった。「神聖な箱根駅伝に黒人を走らせるな」という、今では信じられないような😱😱セリフを耳にしたこともある。オツオリ選手を起用した上田誠仁監督(現在は顧問)には、多くの誹謗中傷があったと聞く。
 
 陸上競技と留学生の問題は根が深く、「留学生を使うのはズルい」「黒人だから速くて当たり前」という、負け惜しみなのか言い訳なのか分からない声があるのは、読者の皆さんもご存知の通りだ。

 とはいえ、現場の監督・選手達はそんなことを言ってられない訳で、オツオリ選手の衝撃的なデビューから30年以上が経った現在、留学生相手にも臆することなく勝負する日本人選手も増えている。あるいは、実力で留学生ランナーを上回るようになっている😻😻。騒ぐのはいつも外野だ

 ヴィンセント選手はさすがに別格だが、今回の2区で言えば、吉居大和選手(中央)・近藤幸太郎選手(青山学院)・田澤廉選手(駒沢)・石原翔太郎選手(東海)の4選手は、Boniface Mulwa選手(山梨学院)・Philip Mulwa選手(創価)の留学生ランナーよりも良い記録を出した(紹介はタイム順)。なお、「ムルワとムルア」でトレンド入りした両選手だが、spellingは同じである(山梨学院大学の方がムルア選手)。

 中央大学の吉居大和選手は、昨年の1区(区間新記録)に続く区間賞。4年生になる来年は、悲願の優勝だ‼️



 という個人的な願望は置いておいて、留学生ランナーが日本人ランナーに良い刺激を与えていることがお分かり頂けると思う。昭和最後の正月の日本に大きな衝撃を与えたオツオリ選手の記録は、1:08:23。いまや、2区を走る選手の多くがクリアする記録だ。「黒人だから速くて当たり前」で済ませていたら、現在の箱根駅伝のレベルは無い。

 なお、両親のどちらかが外国籍である選手でも、もう片方の親が日本国籍でなおかつ日本国内で生まれ育った選手は、当然「日本人選手」だ。この点もアレコレ言う人がいたが、現代においてはいないと信じたい。信じさせてくれ😝。

 そういう意味では、外見や親のことに触れていない ↓  の番組は素晴らしいと思う。そう、陸上競技のニュースなのだから、陸上競技についてだけ話せば良いのだ。


 ・・・こういう視点を持っていること自体が、私自身の「差別的感覚」が抜けていない証拠なのだと思う😰😰。心の底から「こんな素晴らしい選手が登場した!」とだけ紹介できる日がくるまで、精進あるのみだ。

 ちなみに、私は一目で彼女の美しい走りのファンになりました😍。日本を代表するランナーになる日を、楽しみにしてます‼️

 


 と、ここまで記事を読めば、私の言いたいことが貴方にも予想できたことだろう。

 そう、いつものヤツだ😅。英語習得にも同じことが言える。多くの日本人が抱えている、英語に対する負け惜しみ根性。それが日本人が英語を話せない大きな原因の1つである。「白人は何もしなくても英語が話せてズルい」「日本人だから英語ができなくて当たり前」「白人のように英語を話せる必要はない」「外国人はみんな英語を話せる」などなど。


・・・😰。

誤解もいい加減にしろ‼️
負け惜しみを言うのは止めろ‼️
素直に相手を認めろ‼️


 目の前の人間を受け入れる。English speakerになる上で最も大切なのは、そのマインドなのである。以前の記事 ↓ で紹介した通りだ。

 生まれたついた環境、生まれもった能力に差があること自体は仕方ない。ある意味で「ズルい」は、その通りである。私はその感情自体は否定しない。それどころか、成長の為に有益な心理だとさえ考えている。

 大切なのは、「ズルい」で終わらせないことだ。どうしようもない差を少しでも埋めるべく、行動することだ。「追いつく」は不可能でも、「追いかける」ことは可能である。


 ということで、ヴィンセント選手、改めましておめでとうございました‼️ 4年間、素晴らしい走りをありがとう😊😊。今後の活躍を期待しています。

Begin now.
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