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小さなキツネ(ショートストーリー)

海を見ているのは小さなキツネ。
お月様がとても大きく、とても明るい夜。
お父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも眠っています。
夜ひとりで外に出たのは初めてでした。

「お月様」
小さな声で呼んでみました。
するとお月様の光が少しだけ明るくなりましたよ。
風が小さなキツネに声をかけます。
「ボクと遊ぼ」
でも風は小さなキツネが答える間もなく、通り過ぎて行きました。

お星さまは、たくさんの友だちがいるようです。
皆んなでチカチカ、ピカピカとお話をしているみたい。楽しそうですね。
どんなお話をしてるのかな。

小さなキツネは砂の上に座りました。
砂がなにか言っている気がしましたが、その声は小さすぎて、うまく聞き取れませんでした。

小さなキツネには、まだ友だちがいません。
お兄ちゃんは優しいけれど、友だちとはちがいます。
お兄ちゃんには友だちがいますが、少し離れた場所に住んでいるそうで、小さなキツネはお兄ちゃんの友だちには会ったことはありません。

もう少し大きくなったら、ボクにも友だちができるかな。

海が言いました。
「そうさ、もう少し大きくなったらね」

小さなキツネはニッコリうなずきました。

波が子守歌をうたい始めました。
とても優しい歌声です。
小さなキツネは、ちょっと眠くなりました。
大きなアクビが二つでましたよ。

小さなキツネは、お家に帰っていきました。
みんなが起きないように、そおっとね。

小さなキツネはお母さんにくっついて眠ります。お母さんは眠っているのに、小さなキツネの頭を撫でてくれていますよ。

大きな月がささやきました。
おやすみ。小さなくっつき虫君、また明日。




小さなキツネは、今頃大きなキツネになっているかもしれません。時々、小さなキツネの頃を思い出す事もあるでしょう。
大きなキツネの側には、小さなキツネがいるような気がしますよね。めい


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