美女水【ショートショート】
私は、自分で言うのもなんだがブサイクだ。周りの美人の友人が羨ましい。今日もオフィスでは、美人の同僚がチヤホヤされている。
「今度一緒に食事しませんか?」
「映画一緒にどうですか?」
そんな言葉は言われたことがない。そんな私は、今日も仕事を終え帰路に着く。すると、見慣れないコンビニがあった。なんとなく惹かれ入ってみると、おすすめ商品というものがレジ前に置かれていた。
「美女水?」
私は思わず手に取った。
「はい。その水を飲むと、すぐに美女になれるんです」
そう言う店員さんも、とびっきりの美女だった。
「これ、十本ください!」
「二千円です」
私はお金を払い、沢山の水を持ち家へ帰った。家へ帰ると、早速一本飲んでみた。すると、みるみるうちに顔が変わっていき、気がつけば誰もが羨む美女になっていた。
「やったー! これで明日からチヤホヤされるぞ!」
次の日、会社へ行くと周りの目が違った。
「今度一緒に食事しませんか?」
「映画一緒にどうですか?」
私が言われたかった言葉を沢山言われた。あの水のおかげだ。これで私は変われる。そして、私は自信がついたので密かに思いを寄せていた、同僚の桜井くんをデートに誘うことにした。
「ねえ、桜井くん。明日一緒に水族館行かない?」
桜井くんはいいよと言ってくれた。
翌日。
「お待たせ」
桜井くんがやってきた。
「じゃあ行こっか」
私と桜井くんは、水族館へ行った。
「うわー。綺麗だね」
私は、とても幸せだった。ずっと思いを寄せていた、桜井くんとこうして、デートをしているのだから。
そして、魚を一通り見終わった私達は、公園でおしゃべりをすることにした。
「夕陽綺麗だね」
桜井くんが言った。
私は、一番聞きたかったことを聞いた。
「今までの私、正直どうだった?」
すると、桜井くんは意外な答えを言った。
「今も素敵だけど、今までの君も素敵だったよ」
私は、驚いた。
「本当?」
「うん。実は前から、ちょっと君のこと気になってたんだよね」
「そうだったの?」
「うん。でも、今の姿も僕は好きだよ。だから、僕と付き合って欲しい」
思っても見ない展開だった。私は、即答で答えた。
「はい。よろしくお願いします」
こうして、私と桜井くんは付き合うことになった。
「なんか、喉乾いたね」
私はそう言って、美女水を飲んだ。
すると、桜井くんが言った。
「俺も喉乾いたよ。その水もらうね」
そう言って、私の水を取って飲んだのだ。
私は嫌な予感がした。
「ん?」
桜井くんがそう言うと、桜井くんはみるみるうちに美女になってしまった。
「あっ、、、」
私の恋は、儚く散った。
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