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憑かれる【ショートショート】

「ただいまー」
 旦那の声が聞こえる。旦那はたった今仕事から帰ってきた所だ。
「ごめんね。遅くなって。今からご飯作るよ」
 私の旦那は、仕事をしている上に、家事までやってくれるのだ。おかげで私は、大助かりだ。
「何が食べたい?」
「うーん。麻婆豆腐とか」
 旦那は冷蔵庫を覗いた。
「豆腐がないや。青椒肉絲でいい?」
「うん。いいよ」
 そして、旦那は手際良く料理を始める。
 シャーシャー
 野菜を炒める音が聞こえる。しばらくすると、美味しそうな匂いが漂ってきた。
「出来たよ」
 旦那が、食卓へ料理を運んでくれた。
「いただきまーす」
 私は手を合わせて言った。
 黙々と料理を食べる私と旦那。旦那はテレビをつけた。そのテレビでは、動物の特集がやっていた。
「あっナマケモノだ」
 私は言った。
「かわいいな」
 旦那は言った。そして、近頃デートをしていなかったので、私は旦那に言った。
「ねえ、明日ナマケモノ見に行かない?」
「え?」
 旦那は突然のことに驚いていた。
「まあいいけど」
 渋々了解してくれたみたいだ。

 次の日。私と旦那は、動物と触れ合うことのできる動物園へやってきた。もちろん目当ては、ナマケモノ。他の沢山の動物をスルーし、ナマケモノの所へ行った。
「ふれあい体験できますよー」
 職員さんがそう言っていたので、私と旦那は体験することにした。
「ゆっくり撫でてあげてくださいねー」
 私の体に抱きつくようにきてぶら下がるナマケモノ。その体を私はゆっくりと撫でた。
「かわいいな」
 旦那は言った。そして、ナマケモノは旦那の体にぶら下がった。
「よしよーし」
 旦那はゆっくりと撫でた。そして、職員さんがそろそろ終わりにしようと、ナマケモノを引き離そうとした。しかし、ナマケモノは旦那のことが気に入ったのか、中々離れてくれなかった。
「すいません」
 職員さんは、申し訳なさそうにしていた。
「もう終わりだぞ。離れなさい」
 旦那がナマケモノにそう言うと、言うことを聞いたのか、パッと体から離れた。
「ありがとうございます」
 職員さんはお礼を言った。
 そして、私達は家に帰った。私は旦那に聞いた。
「今日のご飯なに?」
 すると、旦那は言った。
「今日はちょっと疲れたから、出前でも取ろうか」
 こうして、出前を取ることにした。

 そして、次の日。朝起きて、私は旦那に言った。
「洗濯物干した?」
 すると、旦那は言った。
「いや、干してない。お願いしてもいい?」
「まあ、いいけど」
 いつもなら、家事を嫌がらずにやってくれるのに、今日はなんか変だと思った。そして、旦那に聞いた。
「具合悪いの?」
「いや、なんかやる気が出なくてさ怠けたい気分になるんだよ」
「なにそれ」
「なんか、肩も重いし」
「肩が重いってそれ、何かに取り憑かれたんじゃない?」
「なにかってなに?」
「怠けたくなるってことは、ナマケモノとか」
「なるほど。一回、霊媒師さんに見てもらおうか」
 そして、一時間後家に霊媒師がやってきた。
「こんにちは」
 霊媒師が家へ入ってくる。
「あのー、旦那が何かに取り憑かれたみたいで」
「なるほど、旦那さんはどちらですか?」
「部屋にいます」
 そして、霊媒師は旦那の元へ行った。
「あー。確かに取り憑かれてますね」
 そこで、私は言った。
「ナマケモノですか?」
 すると、霊媒師は言った。
「非常に申し上げにくいのですが、、」
「なんですか?」
 そして、申し訳なさそうに言った。
「奥さんの生き霊です」

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