見出し画像

私を形作ったもの 第四弾 四月は君の嘘



はじめに

 前回の鋼の錬金術師は如何でしたか?予想以上の熱量だったかもしれませんね。僕自身、君に届けより、書いてない?と不安になりました。
 どの作品にも、平等に愛しているかは、よく分かりませんが、伝わって貰えたなら、嬉しい限りです。
 今回は、四月は君の嘘(以降君嘘)です。実は一度、書こうと思って、挫折した過去があります。原因は、書きたいことを上手くまとめられず、長すぎて、これはダメだろうと思って、辞めました。
 それ位、この作品の思いは並々ならぬ物がございます。それだけの熱量と愛を以て、この作品を推しているので、どうか、最後まで読んで貰えると嬉しいです。
今回もネタバレありなので、知らない人は知りません。


 それでは、どうぞ。
因みに何で、今回かと言われたら、第四回だったから。

第四回 四月は君の嘘

第一節 きっかけ

 アニメが始まる前に、このPVを観たのが、きっかけです。この美しさに引き込まれ、視聴したのは、今でも忘れられない思い出です。
 漫画を初めて読んだ時の衝撃が、忘れられませんね。言葉の強さ、絵の美しさ、音が聞こえないはずなのに、音が見える漫画と言われる所以を感じた作品でした。
 当時はお金が無くて、中古で購入したことが、後悔となっています。11巻だけは、特装版を購入したのは、今となってはいい思い出です。
 その後悔を晴らす為に、何故か、最終巻のBlu-rayを買ったりもしましたが、最終的にはBlu-rayBOXを買うという暴挙に出る程、この作品が好きで、好きで仕方なかったんです。

 未だにSAОの円盤と言えば、ОS、プログレ×二巻、フルダイブ、アインクラッド編位なのに、何で、君嘘はBOXなんよ・・・・・。

 アニメ放送は終わっても、舞台や朗読劇、演奏会と様々な形で残り続けている君嘘。この作品は僕にとっても、転機となった作品でもあります。
 しかし、現実は非情なもんで、こんなに大人気なのに、僕のフォロワーさんは全員好きじゃないという驚愕の事実。マジで腹が立ちました。
 大体のフォロワーさんが好きな作品は、懐古厨の作品で、僕の苦手なジャンルばかりで、吐き気と頭痛が僕の悩みの種となっています。

 アカウントも開設したりもしましたが、反応の悪さと今のTwitter(X)は正直言って、別物な為、愚痴垢になり果てて、しまいました。
 もしも、君嘘が好きな方がいらっしゃいましたら、フォローして下さい
 そして、僕にもう少しだけ、君嘘を布教させるチャンスを下さい。宜しく、お願いいたします。

 愚痴はこれ位にして、此処からは、君嘘の魅力について、語らせて下さいませ。

第二節 お涙頂戴もの

 9年前の僕は荒んでいた時代がございました。それは、病気系感動お涙頂戴系作品です。理由は単純にして、明瞭。泣かせようという意志が明白だったのが、本当に嫌だったから。
 某愛は地球を救う的ドラマも、それを助長させたきっかけかもしれませんが、絶対に泣きますとか、〇〇%の人が感動しましたという内容に、胸やけしていました。今日の僕は過激ですね、ごめんなさい。

 そういう言葉に冷めてしまい、言われたら、言われる程、そういうのが嫌いな僕が居ました。当時は若かったんよ周りにも病気で亡くなった人も沢山居たから、余計に嫌だったんだと思います。
 死を美談のように扱う風潮も苦手で、精一杯生きたみたいなのも、何か嫌でした。とにかく、死がゴールで皆の中で生き続けるみたいなのが、とことん、嫌悪の対象だった僕。
 その前に、SAОのユウキという存在についてのお話もありますが、それは改めて。

 君嘘が、そういう作品と知らなかった僕にとって、この作品は相当、衝撃が強い物となりました。よくあるボーイミーツガールな話ではなく、全ては好きな人の為に立ち上がる為の愛と勇気のお話に心を持っていかれた僕。
 そもそも、この作品のあらすじを説明していなかったので、簡単に説明しますと。

 天才ピアニストだった有馬公生は、幼い頃のトラウマをきっかけに、ピアノの音が聴こえなくなるというトラウマを抱える中学三年生。
 世界がモノクロに見える程、自分を追い詰め、自らを卑下し、ピアノと関わりたくないと一線を引いて、生活していました。
 そんなある日、彼の幼馴染、澤部椿が、もう一人の幼馴染こと、渡亮太が好きらしい彼女を紹介するための友人Aとして、呼ばれる名目で付き合わされることに。

 そこで、出会った彼女こと、天真爛漫、破天荒なバイオリニストこと、宮園かをりとの出会いが、彼の止まっていた時間を動き始め、モノクロと思われていた世界の美しさを知っていく青春ものとなっております。

 音楽を主軸に、のだめカンタービレ位の浅はかな音楽知識しかなかった僕でも、どっぷりと浸かる程の奥深い世界観、音楽の面白さ、過酷で孤独な世界を生き抜く為に、中学生に背負わせるには、業の深い過酷な過去。
 次第に明らかにされていく宮園かをりという人間の正体、誰もが、苦悩し、止まっていた時間を取り戻す為に抗い、戦う場面には、当時の僕に結構、突き刺さる物があったと思います。
 そして、この作品は病気ものジャンルでもありました。
序盤でその伏線が貼られていましたが、徐々に明らかとなっていくかをりちゃんの病もこの作品に深みを与える要素となっています。

 病気ものというジャンルを一括りにして、勝手に区別していたのは、僕の方だったんだと思いました。この作品の本質は、そういうことじゃないんだとこの作品が教えてくれました。
 詳しくは終盤で書こうと思うので、とりあえず、この辺で。

第三節 アニメが神クオリティ

 先ほどのPVをご覧頂けたなら、お分かりかと思いますが、作画コストが尋常ではありません。音楽アニメの最大の障壁、それはカット数の多さ。
 普通に人が動くだけでも、大変なのに、とんでもない絵コンテ、作画量で、展開されていました。今でも、通じる程のクオリティだと思ってます。
 この作品で、A-1 Picturesを益々、好きになる切っ掛けとなった作品だったりします。思い入れはとにかく、強いです。
 その当時のA-1 Picturesは、ブラック企業大賞を受賞したりと作画崩壊が大変だったりと様々な暗黒時代だった記憶が今も残っています。
 これは一生、叩かれることであって、最近もそういう投稿を沢山目撃したので、人間の悪意は恐ろしいものですね。

 その話は置いといて、全演奏シーンに対する力の入れ方が、尋常ではありません。一回一回、丁寧に描かれていて、心惹き込まれるような演奏の描き方には、愛が込められており、心惹き込まれること、間違いありません。
 最初から、フルバーストなんですけど、個人的にラストの作画が、一番ヤバいですね。この作画無くして、四月の君の嘘は語れませんね。

 演奏以外の作画もとても、幻想的で、これに全てを持っていた所為で、それ以外のA-1 Picturesの作品が作画崩壊を起こしたとか、起こしてないとか。

 個人的に5話「どんてんもよう」の作画が、とてもお気に入りです。
 青春のきらきらしてる場面が、いっぱいの本作の作画は、正にアニメだからこその表現とイシグロキョウヘイ監督も仰っていました。
 
 本作の演奏の為に見本となるアーティストは選出し、そこから、様々なアイディアから、この作品は始まっています。
 練習の為に、プロの演奏シーンを八台のカメラで撮影し、参考映像を作り、そこから細かなカットを編集作業を行うという凄まじい作業量。
 一秒でのカット数が、24枚。それだけでも、壮絶なのに、24分で一話のそれが半年間、2クールなんですから、どれだけの作画量だったかと思うとどれだけ、大変だったか・・・(そのツケだったのか、作画崩壊した作品の実に多かったことか)。
 個人的に、どの話数の作画も最高なんですけど、2話の「友人A」や22話「春風」が滅茶苦茶、好きなんですけど、個人的お気に入りは、8・9話の「共鳴」の練習曲作品25第11番『木枯らし』が忘れられません。
 本作に登場するキャラクターの心情に基づいた演奏と過去が描かれており、結構、心惹き込まれるような演出の数々に、僕は感動して、ダウンロードしてしまいました。
 言語化に困るのですが、アニメの極致と言える程のクオリティで、音楽の力が、どれだけの人の心を引力のように、引き寄せ、離さないかと知ったのが、この君嘘の演奏シーンでした。
 これがこの作品のキーであり、中枢。これなくして、君嘘は語れないとも言えるこの演奏シーン。媒体によっては、観られると思うので、是非とも、視聴して、この作品の良さを味わって欲しいですね。

 出典元 プロダクションノート四月は君の嘘 四季をめぐるメロディより

補足 原作の演奏シーン

 原作の漫画では、音楽作品特有の音符表現が無いのですが、あの尾田栄一郎先生を嫉妬させるという偉業を果たし、一躍、話題となりました。
 締め切り前に気分転換で、読んでいたのに、落とす程、ハマったらしく、音楽の表現の上手さに脱帽とのこと。グイグイ、引っ張られ、嫉妬する程、魅了されたとのこと。
 確かにこの作品には、音が見えると言われる程の圧倒的作画力とそう思い込ませる程の説得力を有しており、曲は流れていないのに、流れているように、見えてしまう。その言葉、凄く分かります。
 何より、集英社の尾田先生、君嘘は講談社。これを取り上げた番組が、フジテレビとはいえ、何の忖度も無く、真面目にこれについて、語っているのが、君嘘好きで、良かったなと心から思った僕でした。

 アニメには、アニメの良さがありますが、漫画だからこその良さが凄いので、漫画も読んで欲しいです。アニメとは、全然、表現が違うので、読んで後悔は無いと思います。
 因みにその当時は、この影響で、コミックスが全巻売り切れという異常事態になる程の影響力これが尾田先生の影響力。恐るべし。

第四節 宮園かをり

 僕には、人生の推しが何人かいます。好きを通り越して、愛しかない推しがいるのですが、彼女はその一人。彼女がもたらしたものは、余りにも多く、人生観を変えた一人です。

 彼女の天真爛漫で、明るく元気で、破天荒な姿なのに、たまに見せる優しい姿のギャップや、涙を見せる場面等、情緒がジェットコースターみたいな
彼女にメロメロでしたね。
 彼女とのデートシーンは、マジで最高に青春だなとか、こんな青春を過ごしたかったなぁと心から思いました。
 彼女が抱える過去が、話が進んでいく度に、髪の毛の色が落ちていくのが、心を苦しめ、公生や視聴者も、勿論、僕も奇跡を信じましたね。

 この当時の僕は今以上に病んでたので、余計にかをりちゃんへの依存度が深刻でした。彼女の太陽のようで、天使のような笑みを見る度に、心が引き裂かれるような気持ちでいっぱいでしたね。
 公生を立ち直らせる為に、荒療治を行う前半。本当は病を抱えながらも、好きな人の為に奮闘する彼女の姿には、胸に来る物があります。

 この頃の僕に欲しかったのは、彼女のように、勇気をくれる人でした。当時の僕は一歩を踏み出す勇気もない臆病者のクセに、他者を踏みにじるような酷い人間でした。
 気持ちって、腐っていくもので、喚起しないとダメなんだと彼女が教えてくれました。彼女の言葉はどれもきらきらしていて、僕は目をふさいでしまう程、様々な言葉を懸命に、自らの命を顧みず、ぶつけていくということは誰にでも出来るわけではありません。

 誰だって、何かしらの打算で動いていて、下心や良かれと思っての行為で人は動くものだと思います。実際、かをりちゃんは、下心しかなかったかもしれませんが、それでも、自分の人生に悔いを残さない為に、色んなことを捨て、愛する人の為に全てを賭けるということは、並大抵のことではありません。
 況してや、中学三年生の彼女にとって、どれだけの苦痛や苦悩があったかと思うと筆舌し難い物があると思います。

 この作品通して、描かれる愛。それは家族愛だったり、兄妹愛、恋愛だったりするのですが、かをりが与える愛の強さが、如何にこの作品を動かし、引いては公生自身を変えて行き、やがて、破れかぶれだった彼女の人生も変化させていくのです。
 互いが互いを思い、変化し、共鳴していく。それがこの作品の一番好きな所かもしれません。色んな成長を経て、過ごす濃密な一年という長いようで短い時間。その時間を通して、公生はモノトーンと思っていた世界の色を知って行きます。
 
 彼女の容姿も魅力的ですが、バイオリン演奏こそ、彼女の中心にあるものだと思っています。音楽をメインにした作品なんだから、当たり前なんですけども。
 コンクールで一番求められるのは、正確性。与えられた楽譜を元にどれだけ、ちゃんと弾けるかが求められているにも、関わらず、それを無視し、自分の思うがままに演奏する姿に、公生は引き込まれていきます。
 公生にとって、音楽とは、正確性重視で、母親からの厳しい教育を受け、それが全てと躾けられた過去を持つが故に、音楽の可能性、自由さで観衆を惹きつける姿には、彼自身にも思う物があったかもしれません。
 因みにコンクールでそういうことをすると失格。それだけ、厳しい大会に於いて、どうして、其処までやるのか?というのも、本作の魅力です。
 悲しいのは、かをりちゃんの演奏シーンは余り、多くないということ。彼女の役割は、公生を導くことなので、仕方ないと分かっていても、本当にもっと、観たかったなぁというか。

 とにかく、僕の中でこういう明るく、元気で導いてくれるヒロインが大好きになった存在です。昔はクールなキャラが好きだった僕を変えてくれた彼女です。
 その他にも、公生の幼馴染であり、彼を愛しているが、素直になれない椿、幼馴染であり、いい友人の渡や師匠である瀬戸先生等、魅力的なキャラの数々で、引き込まれること、間違いありません。

第五節 個人的推し話数

 ここからは、僕個人が推している話数について、アツく語ろうと思います。そう言って、前回は全部書こうとして、挫折したので、今回はその中でも、これだけは観て欲しい、感じて欲しい厳選された4話にします。
 なるべく、短めに書きたいと思うので、ご参考になって貰えたら、嬉しいです。

第3話 「春の中」

三話でかをりちゃんと公生が実際に訪れたラ・プリムールでのリンゴとナッツのキャラメルワッフルです。

 かをりちゃんのコンクールでのバイオリン演奏に心動かされる公生。彼女は渡とcafeに行こうとしますが、その代打として、公生はデートに行くことに。
 そこで、お茶したりしますが、公生の音が聴こえないことが明らかに。
 母親との行き違いをきっかけに、殻に閉じこもってしまう公生に、かをりちゃんは、ある提案をします。
 かをりちゃんは次のコンクールの伴走者として、公生を指名。再び音楽の舞台に引き込もうとします。
 実はその前の大会で、やりたい放題しすぎて、伴走者をクビになってしまったのが、きっかけなんですけど(今思うと本当にそうなのか、謎)

 公生は過去を乗り越えられず、それを頑なに拒否し続けます。
 この辺りの公生は、社会人でもきつい、母の死を乗り越えられず、大好きだったはずのピアノも弾けなくなり、一番苦しい時期だったけれど、周りの人は同情で、何も変わらない日々が、余計に苦しかったと思います。

 そして、迎えるコンクール当日。公生は逃げ出し、中学校の屋上でタマゴパン片手に、隠れていました。
 それから、かをりちゃんは公生を見つけ出し、連行しようとしますが、未だに煮え切らない公生の姿は胸に来る物がありました。

 そんな公生にかをりちゃんはこう伝えます。

 私がいるじゃん。君が音が聞こえないのも、ピアノを弾いてないのも知ってる。全部知ってる。
 でも君がいいの。君の言う通り満足いく演奏はできないかもしれない。でも弾くの弾ける機会と聞いてくれる人がいるなら、わたしは全力で弾く。
 聞いてくれた人が私を忘れないように、その人の心にずっと住めるように、それが私のあるべき理由。私は演奏家だもの、君と同じ
 (中略)
 私をちょっぴり支えてください。くじけそうになる私を支えてください。

 それまで、何処か、道化のように振舞っていた彼女が見せた素。それまでと打って変わって見せるその表情とギャップに心奪われました。
 震える指先、泣きながらも懇願する姿に、僕は恋に落ちました
 それは公生も同じ。独りで戦っていたと思っていた彼を導かれるように、公生は彼女の手を取り、再び音楽の世界へと舵を切って行きます。
 
 これ程、完璧な三話、これまであったかなぁ?と思う程、素晴らしい導入で、世界観に入り込むことが出来る話数だったので、僕にとって、この話が始まりの物語でした。
 本当に泣いてしまいました。これ程、泣くか?という程、泣きました。何度も見ては泣いてしまうので、観ることを止める程、泣けた場面でした。
 その当時の僕が恐らく、一番欲していたものであって、今も欲している物なんでしょうね。今も思い出す度に心掴まれる場面です。

 誰だって、一度逃げた場所に戻るのは、怖いけれど、それでも、前に進む勇気をくれる人がいたら、強くなれる。かをりちゃんの前向きさが、モノトーンだった公生の心を変えていく話数となっております。
 この後も凄く好きなんですけど、進行の為、カットして、次に行きましょう。

第13話 「愛の悲しみ」

 ガラコンと呼ばれる楽しむ系のコンサートに参加が決まったかをりちゃんと公生でしたが、まさかのかをりちゃん不在という結果に。
 公生はまさかの一人で、演奏に乗り込むという凶行に及ぶことに。3話からの成長具合が激しいんですけど、それはそれとして。

 そこで、演奏するのは、母親がよく聴かせてくれた楽曲こと、クライスラーの「愛の悲しみ」でした。
 自分ひとりでも出来ると息巻いていきますが、空回り、多くの観客は凄いと言いますが、分かる人からすれば、不愉快極まりない行為にどんどん、追い詰められていく公生。

 その時、思い出したのは、優しかった頃の母の記憶。その当時の記憶が、彼を奮い立たせ、やがて、それまでの演奏にはない温もりを帯びていくことになっていきます。

 明かされる公生の母親・早希さんの真意。かをりちゃんが、どうして、この曲に拘ったのか?と言ったことが明かされるのですが、個人的に早希さんの真意には、涙が出てしまいましたね。
 彼女は、息子である公生に対して、暴力を交えた行き過ぎた指導を行います。それが、彼を追い詰めていると分かっていても、余命僅かな彼女が出来ることは、それだけだったのでした。

 当然、虐待を肯定するわけでも、どうこう言いたいとか、そんなつもりはないんですけど、病気って、そうだよなと考えてしまいました。
 誰だって、死ぬのは怖いし、弱気にもなるけれど、一番辛いのは、死んで、誰かに忘れられることなんじゃないのかな?と思います。
 本当に愛のカタチは人それぞれで、暴力を伴う愛を許してはいけないというのが、この問題の難しい所。その上、公生から、死んでしまえと言われてでも、プロのピアニストになって欲しかった早希さんのことを思うと何とも、やり切れないですね。

 誰よりも、公生を愛し、孤独との戦いが伴うピアノの世界で、悲しさを教えた彼女の愛には、それまでの悪行を許すわけには行かないんですけど、僕は許してしまいそうになりました。
 結局、親は親。世間一般の親は、皆、平等に子どもを愛している。そう思いたいんですけどね。そうならないからこそ、この場面を見て、アレルギー反応を起こす人は多いと思います。
 それをちゃんと言葉にしてあげることが出来たなら、良かったのに。その不器用さが、ややこしくなってしまったのかな?

 こうして、公生は自分が愛されていたことを思い出し、母との別れを告げ、ピアニストとして、成長していきます。
 他にも、彼の後見人こと、瀬戸先生が、公生から離れていた理由が明らかになったり、彼に触発されていく人々への思いが込められたこの回は、これまで、かをりちゃん一筋だった僕にとって、結構な転換点な話数だったと思います。
 それ位、この話数は大きくて、不器用な愛に心が揺れました。

第21話 「雪」


 どんな作品にも、神回というのは、存在しますよね。しかし、中には、神回の神回みたいな作品も実在すると思うんですよね。
 それが、この雪というお話でした。
 僕個人の感想で言えば、どちらかと言えば、最終回よりも、このお話が好きで、このお話は未だに一度しか、視聴していません。
 何故なら、余りにも感情移入しすぎて、観たら、心が持たないから。

 後半の本作は、かをりちゃんの出番が極端に減ります。出番が無くなるわけじゃないんですけど、メインが椿や相座凪と言ったキャラにシフトして、彼女の陰が意図的に薄くなってしまうのです。
 それが、このお話で彼女の存在感が一気に上がっていくと思うとここの演出が、マジで上手いの一言と申しましょうか。
 公生はその前の話数で、かをりちゃんへの愛に気付き、彼女と共に歩むことを決め、病院に訪れますが、其処で目にしたのは、ベッドで重篤な状態の彼女でした。

 ようやく、音楽家への道を歩き始め、大切な人がいる喜びや愛を知った彼にとって、生きてくれると信じていたかをりちゃんを失う辛さは、大人でもきつくて、当然のことなのに。
 それを中学三年生で、母親を失い、ようやく、立ち直ったはずの彼にとって、どんな追い打ちだったかは、想像に難くありません。

 完全に心折れた公生、そんな彼を救ったのは、他でもないかをりちゃんでした。

 かをりちゃんは病院の屋上に呼び出し、公生にピアノを弾いて欲しいと頼みます。それは、あの3話と同じように。しかし、2週間もまともに触れられてない彼にとって、それがどれだけ、危険なことを訴えます。
 それから、重病の彼女は、寒さ凍る中で、バイオリンを演奏する振りをして、奇跡を起こせることを伝えます。
 ここからの流れは、本当に非の打ち所がない位、完璧で、それまで無敵と思っていた彼女が、抱える闇が明らかとなり、公生に寄り添い、死への恐怖を訴える場面に、涙腺崩壊が収まりませんでした。
 3話をリフレインしている所が、相当堪えましたね。あの時のように、公生を導くのは、いつだって、かをりちゃんであり、かをりちゃんはこの作品の中心軸だからこそ、この最終話手前で、発揮される演出はマジで憎いですねぇ。素晴らしいの一言。
 この言葉を語る場面は、早希さんの場面とも通ずる所があるのも、憎いですよね。公生を愛する人であり、病に苦しむという共通項が、涙を誘いました。

 この話数で出て来る「一人にしないで。」というワードは、僕の中に深い傷を残し、以降、アニメとかで、一人にしないでと聴くと傷が痛む特異体質になってしまいました。
 これだけで、この作品のヤバさが理解できると思いますが、本当に生きて欲しかった、公生と幸せになって欲しかった、たった一回だけの記憶なのに、ここまで、僕の中に焼きついて、離れないのは、それ位、この話が好き過ぎるということの証明になったと思います。
 ここで、ようやく、かをりちゃんが公生が好きと気づくポンコツぶりを発揮します。最初から、それ提示されてただろうが。何で、気付かないのよ、まぬけぇ。
 広瀬すず版の実写で、そのシーンを予告で観たんですけど、ちょっとイラっとしたのは、内緒。

 そして、始まる公生の人生を賭けたコンクール当日
 その日はかをりちゃんの手術の日でもありました。
 登壇するも、公生は満身創痍。もう、だめかもしれないと思いながらも、顔を隠しますが、そこで何気ないくしゃみで、彼の心は再起します。

 それは、金輪際遭わないと決めていた椿のくしゃみでした(どうして、こうなったかは、20話 手と手をご覧ください。今回は触れません)。
 ずっと、一人と思っていた彼は一人でないことに気付きます。そして、ピアノに触れ、最後の力を振り絞り、全てを出し切る戦いに赴きます。
 最初は空っぽで、母親の操り人形と言われていた少年が、辿り着いた旅路の果て、その先に見た景色とは?

 とても、中学3年生とは思えないんですけど、この辺りに盛り上がりは涙なしでは見られません。ありきたりで、陳腐かもしれないけれど、この王道展開は好き過ぎる。
 公生にとって、ピアノを弾く理由は、お母さんに褒めて貰いたかったからでしたが、その次はかをりちゃんの為でした。彼女と隣に立つ為に頑張って来ましたが、その彼が、誰か一人の為ではなく、皆の思いを背負って、弾くと決めた場面は、独りよがりだった彼の成長を強く感じる瞬間でした。
 
 基本、ネタバレオーケイな人種なのですが、これだけは、無理でした
 とにかく、踏まないようにと気を付けたこと、気を付けたこと。
 これで、次の最終回まで、待てなくて、仕方なかった記憶が強いですね。
 それ位、強い思い入れで、この最終話を待ち望んでいた記憶が強いです。 

今回はここまで

 今回はここまでとさせて下さい。理由は想像以上に長くなってしまったからです。本当はもう少し、短い予定だったんですけども。
 近日中にこの続きを投稿する予定です。次回は、22話の感想、まとめ、名言等々を書き記した完結編を完成させるので、どうか、もう少しだけ、お待ち下さいませ。

 それでは、皆様、その日まで。
 

 
 
 

 

 

 

 


この記事が参加している募集

アニメ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?