見出し画像

【読書記録】

■悪い夏/染井為人

26歳の守は生活保護受給者のもとを回るケースワーカー。同僚が生活保護の打ち切りをチラつかせ、ケースの女性に肉体関係を迫っていると知った守は、真相を確かめようと女性の家を訪ねる。しかし、その出会いをきっかけに普通の世界から足を踏み外して―。生活保護を不正受給する小悪党、貧困にあえぐシングルマザー、東京進出を目論む地方ヤクザ。加速する負の連鎖が、守を凄絶な悲劇へ叩き落とす!第37回横溝ミステリ大賞優秀賞受賞作。

Amazonより

正直後味かなり悪いです。
誰も救われないし、夢も希望も見出だせない。
まさにタイトル通りの「悪い夏」。
ケースワーカーの普通の社会人が、些細な出来事をきっかけに人生のどん底に落ちていく、絵に書いたような転落人生です。
よく、「人生は何度でもやり直せる」とか言いますし、小説とか読んでると、ラストにはそれなりに光や希望が見えてくるものですが、今作に置いてはこの言葉は全く意味を持ちません。
私個人的には結構好きな作品でしたが、これは正直読む人を選ぶ作品だなと思いました。

今の日本の劣悪な就労環境で、自力で生計を立てろなんてのがまずおかしいと思わないか。底辺の人間が職に就いても得られる給与は生活保護より低いのが現実だろう。最低限の社会保障すらない。その現実に目をつむって、理想社会を説いてもそれはまやかしであり、ごまかしだ。つまり世間は、「生活保護を貰ってる奴らは、楽して金を得てずるい」ではなく、「一生懸命働いてるのに生活保護世帯よりも安い賃金しか貰えない社会はおかしい」と考えるべきなんだ。
(染井,2017年,P320)

個人的にこの言葉すごく響きました。
正解かどうかはわかりませんが、妙に納得したことは事実です。

■博多豚骨ラーメンズ/木崎ちあき

福岡は一見平和な町だが、裏では犯罪が蔓延っている。今や殺し屋業の激戦区で、殺し屋専門の殺し屋がいるという都市伝説まであった。福岡市長のお抱え殺し屋、崖っぷちの新人社員、博多を愛する私立探偵、天才ハッカーの情報屋、美しすぎる復讐屋、闇組織に囚われた殺し屋。そんなアクの強い彼らが巻き込まれ、縺れ合い紡がれていく市長選。その背後に潜む政治的な対立と黒い陰謀が蠢く事件の真相とは―。そして悪行が過ぎた時、『殺し屋殺し』は現れる―。

Amazonより

こちらメディアワークス文庫から発売されているシリーズ作品で、タイトルが気になって、ずっと読みたいと思いつつ中々手に取れなかった作品です。
主人公が殺人請負会社に就職するという設定からかなりぶっ飛んでますが、嫌いではないです(笑)
他にも殺し屋、私立探偵、天才ハッカーの情報屋、復讐屋、闇組織に囚われた殺し屋など、裏社会で生きる人間がゴロゴロ出てきます。
様々な登場人物たちが見事に絡み合って話が進むのは読んでいて飽きないし、何よりテンポが早いのでサクサク読めるのも良かったです。

■明日の食卓/椰月美智子

静岡在住、専業主婦の石橋あすみ。神奈川在住、フリーライターの石橋留美子。大阪在住、シングルマザーの石橋加奈。小学3年生の「石橋ユウ」を育てるそれぞれの母親たちは、慎ましくも幸せな家庭を築いていたが、些細なことをきっかけに、その生活は崩れ始める。そんなある日、「イシバシユウ」虐待死のニュースが報道され―。ユウを殺したのは、私ですか?どこにでもある家庭の光と闇を描く衝撃作。

Amazonより

これはきっと、誰の家庭にも起こる出来事なんだろうと思いました。
同じ名前の子供を持つ3組の母親の物語。
子育ての苦労が文章からとてもリアルに伝わってきて読むのが辛かったですが、先が気になるので気づいたらどんどん読みすすめていました。
まさに子育てする家庭の光と闇が書かれた作品だったと思います。
子供を育てるということは本当に大変なことなんだと改めて感じました。
テレビなどで虐待したニュースを見かけることがありますが、お母さんだって必死に子育てしてて、我慢して我慢してそれでも限界がきて…っていうお母さん側の気持ちを想像するきっかけにもなった作品でした。
つい、私達は虐待したという親を「加害者」という目線で見てしまうけれど、そこにいくまでの母親としての努力とか苦労は見えていないからこそそう思うのかもしれないなと思ったりしました。



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?