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「北海道出身」と同じテンションで「ゲイです」と伝えます。会計士の僕がゲイを公表する理由②

株式会社ゼロベース/渡邊勇教公認会計士・税理士事務所が掲げる理念「クライアントに対して正直で誠実であること」

代表の渡邊勇教がなぜゲイであることを公表し、働くのか。同じくゲイであることをオープンにしながらLGBTに関する情報を発信しているライターの松岡宗嗣がインタビューしました。

第1回「パートナーとの関係が自分を成長させてくれる」会計士の僕がゲイを公表する理由①
第2回「北海道出身」と同じテンションで「ゲイです」と伝えます。会計士の僕がゲイを公表する理由②
第3回「カミングアウトのハードルを下げたいから」会計士の僕がゲイを公表する理由③

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カミングアウトはバトンをつなぐこと

前回は渡邊さんがご自身のセクシュアリティについて自覚した時のこと、恋愛が渡邊さんの人生の中で重要な軸のひとつであることを伺いました。前回の記事はこちら。

今回のテーマは「カミングアウト」について。大学時代や働く上でのカミングアウトについてお話を伺いました。

ーーー渡邊さんが初めて自身のセクシュアリティをカミングアウトしたのはいつですか?

大学2年生のときでした。当時アカペラサークルに所属していて、すごく尊敬する部長がいたのですが、この人には伝えたいと思ってカミングアウトしました。

女性の部長だったんですが、とても仲が良くて、二人でドライブしていたときに伝えました。
そうしたら、「私がここでいきなり裸になっても興奮しないの!?」って言われて、「それは...びっくりします」と答えました(笑)

ーーーそれは、確かにびっくりしますね(笑)

その後すぐ「全然良いんじゃないの」とすんなり受け入れてくれました。

部長以外では、仲の良かった友達二人に大学卒業時に伝えました。「最後に言っておきたいことがある」と、わざわざ二人を呼び出して伝えたんですが、本当に、言えて肩の荷がおりたというか、楽になりましたね。

ただ、二人のうち女性の方はすんなり受け入れてくれたけど、男性の方はちょっとよくわかっていないようでした。でも少しずつ理解してくれて、今でも仕事をお願いしてくれるような関係が続いています。本当に、カミングアウトは一回で終わりではなくて、バトンをつなぐことだなと実感しています。

会社員時代はカミングアウトする人を選んでいた

ーーー最初に入った会社では、いつごろカミングアウトしたのですか?

僕は2007年から2014年まで監査法人トーマツで会計士として働いていたんですが、カミングアウトはほとんどしていませんでした。中国出張の時に女性がたくさんいるお店に連れて行かれたときもすごく嫌だったけど、それでもやっぱりゲイであることを伝えることはできませんでしたね。

はじめてカミングアウトしたのは、トーマツに入社して5年目のときでした。仲の良かった二人の先輩にそれぞれカミングアウトして、二人ともスムーズに受け入れてくれました。デロイトグループだったので、アメリカのLGBTコミュニティのことを教えてもらったりもしました。

ーーー同僚全員にカミングアウトしていたわけではないんですね。

そうですね。なかなか上司にはカミングアウトできませんでした。カミングアウトしたその先輩からもやめておけと言われたのを覚えています。

一方で、監査法人の良いところは、オフィスがフリーアドレスで、チームをかけもちで回すことが多いので、直属の上司が明確にいなかったり、人間関係が浅いんです。それがむしろ都合よくて、飲み会にいくといらぬことを聞かれて面倒臭いから行かないようにしていました。知らずのうちに「みんなとは飲みにいかないキャラ」になっていました。

ーーー飲み会は必ずといって良いほど異性愛を前提にしたプライベートの詮索があって、めんどくさいですよね。一方で、飲み会で親睦が深まり仕事もスムーズになることある。そういう意味では飲み会自体に参加したくないわけじゃないんですよね。

カミングアウトしている人との仕事と、そうじゃない人との仕事はやっぱりパフォーマンスが違うように思います。

僕がカミングアウトしたいなと思う理由って、やっぱり自分らしく生きたいというのと、僕は何も間違ってはいないという自負があるからなのかなと思います。

カミングアウトしたい気持ちは働いていた時からあったのですが、ほかの人に言えたのは会社を退職して独立してからでした。

ーーーそうだったのですね。

はい。独立してからデロイトのダイバーシティ担当のパートナーの方に「元トーマツの渡邊です」とメールをしてみました。そこからの繋がりで、今では僕がデロイトでLGBTに関するセミナーをやったりすることもあります。なので、他の社員や職員の方には直接伝えたわけではないですが、みんな僕がゲイであることは知っていると思います。

カミングアウトし続ける理由は、会計士として、社会にどう寄与できるかを考えたときに、僕と同じような境遇なひとが少しでも生きやすい社会になってほしいから。
そのためには僕がオープンに生きて、「僕はゲイですが、それがなにか?」と言うことで、次の人のための道を作っていきたいと思っています。

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お客さんへのカミングアウトは「契約の直前」

ーーーだからゲイであることをオープンにしているんですね。

お客さんにカミングアウトしているのは、もちろんミーティングでコミュニケーションをとりやすくすることも大事な目的です。36歳で結婚してないと、「いい人紹介しますよ」とかよく言われるんです。こちらは腹割って話したいけど、話せなくなるということもある。

それと同時に、その人がLGBTの人とまだ出会ったことがないのなら、知っておいて欲しいという気持ちがあるんです。もちろんこれは、僕にとっては仕事を失ってしまうリスクを抱えることにもなりますが、カミングアウトしたいと思うんです。

ーーーどういう風にカミングアウトするんですか?

契約の直前です。「そういえば僕北海道出身なんです」ってくらいライトに「僕ゲイなんです」と伝えます。びっくりしますよね(笑)でも、今の所お客さんは「へぇ」っていう感じの反応が多いです。

ある男性のクライアントさんの場合は、ミーティングに息子さんを連れてきていた時に、二人にカミングアウトしました。そうしたら、僕と以前からFacebookで繋がっていたのもあり「そんな気がしていました」と。でも、その後は何も関係は変わらず、大切なクライアントとして関わっています。今の所、カミングアウトして契約を断られたということはありません。

→次回はゲイであることを公表する会計士であり、経営者でもあるという視点から、なぜ企業はLGBTに関する施策が必要かを伺います。


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