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「パートナーとの関係が自分を成長させてくれる」会計士の僕がゲイを公表する理由①

株式会社ゼロベース/渡邊勇教公認会計士・税理士事務所では、「クライアントに対して正直で誠実であること」を理念のひとつとして掲げています。

僕は必ずクライアントの方に伝えていることがあります。それは、僕がゲイであるということ。理由はLGBTの存在をもっと可視化していきたいという思いからですが、一番は、冒頭に書いた「クライアントに対して正直で誠実である」ためです。

今回は、なぜ僕が公認会計士として働く傍、ゲイであることを公表し、LGBTをサポートする活動も行なっているのか。同じくゲイであることをオープンにしながらLGBTに関する情報を発信するライターの松岡宗嗣さんにインタビューをしてもらいました。(全3回)

第1回「パートナーとの関係が自分を成長させてくれる」会計士の僕がゲイを公表する理由①
第2回「北海道出身」と同じテンションで「ゲイです」と伝えます。会計士の僕がゲイを公表する理由②
第3回「カミングアウトのハードルを下げたいから」会計士の僕がゲイを公表する理由③

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(左)松岡宗嗣、(右)渡邊勇教

初めて付き合った人から教わったこと

こんにちは、松岡宗嗣です。私はゲイであることを公表しながら、LGBTに関する情報を発信しています。LGBTは人口の8%くらいと言われることがあります。しかし、まだまだカミングアウトしている人は少ない。

渡邊さんがなぜゲイであることをオープンにして働くのか、セクシュアリティの気づきやカミングアウト、ゲイであることを公表している会計士、そして経営者だからこそ見える視点についてお話を伺いました。

ーーー渡邊さん、今日はよろしくお願いします。さっそくですが、渡邊さんはいつご自身が「男性に惹かれること」を自覚したのですか?

僕は小さい頃から「恋愛は男と女がするものだ」と思っていて、実は中学と高校時代は彼女がいました。でも、彼女に対して性的な欲求は全然抱かなくて、むしろ中学校あたりからそういった欲求が同性に向いていることに気づいたんです。

はじめてゲイの人に会ったのは高校2年生のときでしたが、付き合いたいという気持ちは全くなくて。むしろ恋愛という意味での対象と、性的な対象が自分の中で完全に区別されているイメージでした。なので当時の自分はバイセクシュアルを自認していました。

ーーーそうだったんですね、初めて同性と付き合うことになったのはいつ頃ですか?

大学生の時です。関西の大学だったので、北海道の実家を出て一人暮らしをはじめた、というのが大きかったと思います。インターネットの掲示板で出会った同い年の人と2年ほど付き合ったのですが、すごくいろんなことを学ぶことができたと思っています。

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大学時代

ーーーどういった学びですか?

僕は、よく親から「人を簡単に信用してはいけない」と言われて育てられてきました。それもあって、自分のことをオープンにして人と対話することが苦手で、誰と話すときも壁をつくってしまっていたんです。
それが、好きな相手に対してだと小さなことで怒りの感情が生まれたり、でもそれを怒れなくて、自分の感情をぶつけて良いのかと悩んだり...。

大学1年生の時の話で、当時のパートナーがアルバイトで夜中の2時ぐらいまで仕事をしていた日に「翌日はどこか遊びに行こう」と約束をしていたのですが、当日朝10時に相手の家に行っても彼は全然起きてなくて。

今から振り返ると本当に些細なことだったのですが、この時は感情をぶつけたいという気持ちが勝って、初めて泣きながら怒ったんです。

その時に相手もちゃんと向き合ってくれて、「あ、この人には自分の気持ちをオープンにして良いんだ」と思えて、その後の関係がもっと良いものになりました。

ーーー恋愛をする人にとっては、恋愛が人を成長させるというのはやっぱりありますよね。

そうですね。感情をぶつけられなかった時は、彼の家のそばのコンビニで2000円分くらい浪費してストレスを発散したり...。今では良い思い出です(笑)

最初に付き合った人との経験もあり、恋愛やセクシュアリティに関することは僕の人生の中で大きな要因になっていると思います。実は会計士になったことにも影響しているんです。

会計士という仕事を選んだ理由

ーーー仕事にも繋がっているんですね。

きっかけは大学時代に作ったホームページです。大学時代はまだSNSがなかったので、自分のホームページを作ってそこにセクシュアリティについても書いていました。

当時のホームページは写真や掲示板、問い合わせフォームがある程度だったんですが、ゲイの人からメールが連日たくさんきました(笑)

ーーーさすがイケメン...。

長い時は1日3〜4時間メールの返信をしていて...。メールの文面で人となりを想像したりするスキルは今でも活きていると思います、そしてあの時ほど集客が上手くいったことはないですね(笑)

そのホームページをきっかけにお付き合いした人が今の仕事にも繋がっているんです。

ーーーお付き合いした人が会計士だったんですか?

はい。もともと父の助言もあり、大学1年生の終わりごとから会計士の勉強自体はしていて、きっかけという訳ではありません。

でも大学時代、会計の勉強についていけなくて実は一度諦めてしまったんです。そのタイミングで「僕はこのままどう生きていくんだろう」と思い、ふとインターンをしてみようと、自力で受け入れ企業を探しみました。

いろいろ面接を受けて、結局、東京の伊勢丹新宿本店でインターンをさせていただくことになり、一時期東京に住むことになりました。

そのときに以前ホームページで出会った人と東京で会って、そこから付き合うことになったのですが、その人が会計士だったんです。

勉強に挫折していた話もできて、あのとき会計士もう一回目指そうと思うことができました。

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インターンを終えてからも交際は続いていました。将来的には東京で働きたいなという気持ちや、パートナーとの生活をちゃんとしたいという気持ちも会計士を目指した理由のひとつです。

なぜパートナーとの生活をちゃんとしたいと思ったかというと、自分自身のセクシュアリティをカミングアウトしていないことで、就職しても同性パートナーについて事情も説明できないし、転勤などで配慮されることもないことが予想できたからです。

なので、場所を選べる仕事をしたいという思いもあり、会計士だったら転勤も少ないし、万が一転勤でも辞めることができると思い、改めて目指すことにしました。

仕事もパートナーとの時間も大切にしたい

ーー渡邊さんにとって恋愛は人生においてやはり重要な軸なのですね。

そうかもしれないです。最初の恋愛が人間的な成功体験だったことも大きいのかなと思いますが、パートナーとの関係が僕を成長させてくれるし、僕も誰かのために生きていきたいと思うんです。人生を豊かにしていくためには、パートナーが横にいてほしいと思います。

人生において何が大切かというのは人によって違うと思います。仕事、恋愛、遊ぶこと、家族の関係など、僕にとっては全て大事で、どれが欠けても嫌だなと思います。

その中でも、僕の場合はパートナーと過ごす時間の大切さの方に比重が大きくて。だから遅くまで仕事をしないというスタンスがあったりします。

職場のみんなにも、仕事もプライベートも全部大事にしてほしいんですよね。ワークライフバランスという言葉をよく耳にする機会が増えましたが、ただ早く家に帰れば良いというわけではないですよね。

バランスを保つためには、生きる目的を自分で考えて、その中で仕事をどう位置付けるかを考えないといけないなと思っています。

→次回は渡邊さんのカミングアウトの経験について伺います。



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