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11月に読んだ本

村上春樹の短編集『女のいない男たち』を読んだ。

濱口竜介監督の映画、『ドライブ・マイ・カー』の原作で6つの短編からなる作品集。実際には映画は、短編集の中の『ドライブ・マイ・カー』と『シェエラザード』の2つを元に、そこに話を肉付けしている。原作のシリアスでドライなイメージは、映画にそのまま受け継がれていた。

村上氏の、複雑な状況をシンプルにまとめ上げる筆力は相変わらずで、深層心理を浮かび上がらせる様なストーリー展開が冴えていた。表面的には無いこととして処理されている問題も、実は根っこの部分はものすごく深い、と言うことが度々ある。私達に普段見えている世界が氷山の一角ならば、主人公達が見ているのは、客観的には見ない方が幸せだった、薄暗い裏側の世界なのかも知れない。そう思わせる所に、危ういリアリティがある。

そして、人の本当の内面なんて長く付き合っていたって分からないし、おそらく自分自身にも全ては把握しきれていない。彼らの様に多面的で流動的だからこそ、人間としての浅ましい姿形を保っていられるのではないか、と妙に共鳴してしまった。


おそらく近年見た映画の中では、1、2位を争うであろう、映画『ドライブ・マイ・カー』の感想はこちらに書いてあります。宜しければ↓

短編集は、気軽に読めて好きです。





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