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#10《登校拒否》保健室とクラス写真撮影

【付き添い登校二日目】

「もっと遅い時間に行こうよ」
どうやら、母親と一緒に登校してるところを見られるのが恥ずかしいみたい。

良かった。。。

意味のわかる理由で。

昨日は外の世界、四方八方に恐怖を抱いているようにも見えたから、私だけでは対処出来ない、専門家の力を借りる必要があるパターンも想像してた。

それでも、どうしてそこまで気にするのか不思議なくらい、周りを気にしてる。

今日もやっぱり通学路は通れず遠回り。
歩くスピードもかなり遅い。


昨日と同じく、廊下でランドセルから提出物を取り出す。

既に朝礼がはじまっており、先生の時間を長く男の子くんだけに割かせるわけにはいかないので、
男の子くんの準備が整ったら、私が教室の中にいる先生に声をかける。

先生によると、今日は航空写真撮影があるらしい。
生徒たちが校庭で人文字を作り、上空から撮影するのだ。

明るい声で誘ってくださるが、しばらく考えた後(先生は一旦教室に戻る)に、
「今日はこれで帰る」
と、男の子くんは決めた。

男の子くんの中では色んな葛藤があり、迷って悩んで決めたのだろうけど、私は残念に思った。

本当に無理なのぉ~?
もうちょっと頑張ってみなよぉ。
・・・って、内心思ってた。

まだまだ男の子くんの学生生活は始まったばかりなのに、道のりは長いのに、
母は今、目の前で、帰ると決断したことにがっかりしてしまった。



先生から、保健室に寄って身長と体重をはかってから帰るように言われ、保健室に向かった。

何かやることがあって、学校に来た甲斐がある気がして安心した。

いやいや、二日連続で学校まで来れただけでもハナマルじゃないか。
数日たった今ならそう思える。


保健室の先生は、学校に来れただけでもすごいすごいと誉めてくれて、
『保健室にだけ来て、おはようの挨拶して帰るのでもいいんだよ、いつでも来てね。』
と、大きな暖かい空間で手招きしてくれてるみたい。
私の方が泣きそうになった。

私も随分参っているのかもしれない。


さて、帰宅しようと玄関の入口を出たところで、
担任の先生が走ってきた。

後10分くらいしたら、クラスのみんなで集合写真を撮るから、それだけでも入らないか?とのことだった。
クラス写真は校庭で撮るらしい。
だから、この後クラスのみんながここにやってくる。

私は、これはチャンスだと思った。
みんなが席に着いている教室に自分が入っていくのなんて、普通の人でもドキドキする。
今の男の子くんにとってハードルが高いのは明らか。

でも、男の子くんはここで待ってて、クラスのみんながここに来てくれる。
教室じゃなくて校庭。
みんなの輪に入りやすい環境が整ってる。

『そうしよう、写真だけ撮ろう!』
いつもの悪い癖で、また男の子くんの意見を聞かずに私が即答していた。

小さく頷く男の子くん。

先生は急いで教室へ戻っていった。

「大丈夫かなぁ」
と、心配そうな男の子くん。

一年生の頃に朝顔、今はチューリップが植えてある青いプラスチックの植木鉢を見て、気を紛らわしながら待つ。

5分くらいしか待ってないのに、クラスの子たちが次々と校庭に出てきた。

お友達が男の子くんの名前を呼んでくれる。

背の順に並ぼうとしていて、
「○○(男の子くん)、ここだよ!」
と、教えてくれる。

「今日は全員そろったー♪」
と、歓喜の声を上げてくれる子もいた。

明るい声と雰囲気に溶け込んで、男の子くんがみんなの輪の中に入っていった。

クラスのみんなは先生に連れられて、遊具の近くの撮影場所へと移動した。

私は嬉しくて思わず写真を撮った。
遠くて豆粒で誰が誰だかわからないけど、この中に男の子くんが混じってる。
思い描いていた理想の光景。


写真撮影まで時間があるみたいで、子どもたちは遊具で遊ぶ時間を許された様子だった。

男の子くんはボッチになってないかな?と目を凝らして探すと、女の子のお友達と遊んでる。
良かった。

しばらくしてやっとカメラマンさんが登場した。
そして、二年生の他のクラスも校庭に出てきた。
複数あるクラスのうち、男の子くんは真ん中のクラス。
それなのに一番に撮影?
カメラマンさんも準備できてなかった?
他のクラスは遊ぶ時間なんてない様子。



担任の先生の配慮にやっと気がついた。
有り難すぎて泣きそうだ。

きっとこの光景を予測して、走って帰るのを止めに来てくれた。

これがチャンスになるって気がつかない先生もいると思う。
気がついても、まだまだ目が離せない精神が幼い子もいる中で、先生って色々と忙しいから、全体を誘導しながら1人に配慮するのは難しいことだと思う。

良い先生に恵まれて、ありがたいことだ。


このまま、この勢いでみんなと一緒に教室行かないかな?
と、私は欲張りな考えが過ります。

でも先生は、
『では、今日はこれで。』
意外とアッサリ(笑)

そうだな、まだ彼の学校生活は長い。
焦るな私。
と、言い聞かせて帰ることにした。


昨日見つけた筍が1日でこんなにも成長しているね。

ちょうど小2のはじめの国語でやってる《ふきのとう》。
春風に吹かれて竹林の枝と葉が大きく揺れる。

「ママ、これだね春風!」

やっぱり、帰り道は明るくよくしゃべる。
行きとは別人すぎて笑っちゃう。

みんなの輪に入れたことが嬉しくて笑っちゃう。


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