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鴨映画『FLY!/フライ!』。のんびり見聞録 - 7

Illuminationの新作『FLY!/フライ!』と、その前座として上映されたミニオンズの短編映画を鑑賞してきました。

『FLY!/フライ!』の原題『Migration』ですが、ドイツ語は『Raus aus dem Teich』。ざっくり訳せば「池から飛び出せ」。

日本では2024年3月頃に上映開始とのことですが、ドイツでは2023年12月21日から映画館で上映しています。

短編映画が附属していることは知らなかったので、「カモが飛び立つ前にちょっとした短い作品をお楽しみください」と表示されたときには大興奮!最近よく短編映画付きの映画に遭遇しますが、流行りなのでしょうか?

内容は伏せますが、ミニオンズがとても可愛く、Illuminationらしいクラシックな気持ちの良い笑いで本編への心のコンディションを整えることができたと思います。

原題『Mooned』、ドイツ語は『Hinter'm Mond』でした。トレーラーを発見したので貼り付けておきます。


Illuminationは本当に、古典的な描き方で心地の良い笑いを引き出してくれるので安心して見られるし、大好きです。

以下、ちょっとネタバレ要素があります。





鴨の子どもやサギのおばあちゃん、小さな鳩ボス、可哀そうなのに陽気なジャマイカの赤い鳥、食用にされるのを分かっていないガチョウ、など、様々な登場人物……登場鳥がいて可愛らしいです。最近見た『君たちはどう生きるか』にも何種類かの擬人化された鳥が登場するのですが、それと似た可愛らしさと奇妙で面白い感覚がありました。

主人公が子どもではなく、子育てに奮闘する夫婦というのも、Illuminationらしさがあります。だからといって子ども向けではないということはなく、ジブリのように大人は大人の、子どもは子どもの楽しみ方ができるように感じます。

想像力と創造力でつくる世界の面白さ

作品を通して、「鳥の目線で世界を見たらどうなるかな」という素晴らしい想像力から生まれたアイディアを創造力の力で実験しているようでした。池での落ち着いた生活、池を飛び出して空から見た世界、弱肉強食な瞬間、鳥にとっての都市部の生きづらさ、人間という得体のしれない生きものとの対峙など……。特徴的な擬人化や雲で遊ぶ様子など、「こうだったら面白いだろうな」というアイディアが、美しく躍動感のあるアニメーションで表現されています。

映画などの創作物というのは、何かの主張をするとか、イデオロギーがどうとか、実生活で抱いた意見を表明できる場でもあります。それはもちろん大切なことなのですが、そこばかりが大きくなりすぎると、頭でっかちの好んで見たいとは思わないような作品になってしまうんですよね。なんというか、教育番組の、結末どころか過程まで全て想像できてしまうような、驚きも何もないものに。

人類が映画を開発したとき、「音声付きの映像」だなんて面白い!というところから始まったのではないかと思います。「創作を楽しむ(つくる方でも味わう方でも)」ということは、シンプルなのにもかかわらず、どうしても忘れがちです。Illuminationは、この「楽しむ」を常にベースにしているように感じるので好きなんです。

こんな動きをしたら面白いだろうとか、キャラクターがこう反応したら楽しいだろうとか、鴨と鳩との会話はどんなだろうとか、あとは、最新の技術でこんな美しい映像をつくれましたよ!とか、そういう人間の営みの発表の場、もっと言えば、コミュニケーションの時間・空間ですよね、映画って。音楽も、舞台も、文学も、芸術とはそもそも、そういうところがあると思います。

内容について

広い世界を見よう!とにかく外に出ていこう!という姿勢が必ずしも正しいとは限らない、とわたしは思うのですが、自分自身が生まれ故郷の日本を飛び出して、同じく故郷を離れている夫と第三国で暮らしているので、共感するところもあり、勇気づけられる部分もありました。人によっては、故郷を離れるというわけでなくても、「新しい世界に飛び出す自分」と重ね合わせるのかもしれません。

絶対に外の世界に出ていきたくなかったネガティブで臆病者の夫、ポジティブで好奇心旺盛な妻がお互いに支え合って成長していく様子、だんだん自信をつけてきた夫に励まされて夫婦としての結束を感じる妻の表情、子育てに悩みながらも、自分の人生を大切に楽しんでいく二人の姿勢が印象的で、こういう夫婦でありたいなと思う場面も。

登場する「人間」がほとんど言葉を発さないのも好きでした。もう完全に鳥の世界。次の作品はどんなのが来るんだろう!

上映前のカフェで出会ったドイツギャル

上映まで1時間ほど暇になったので、夫と近くのカフェへ。ショコラティエのようですが、カフェ利用もできるとのこと。初めて入りましたが、価格も手ごろでちょうどいいねなんていいながら、店員さんのいるカウンターまで行くと、「ギャル」な若い女の子が二人、楽しそうに働いていました。ギャルってなんとなく、陽気でポジティブで、言葉遣いや喋り方に特徴があるのだけど、礼儀正しくて滅多に他人を不快にさせないというイメージがあるのですが、その二人はまさにそれ。

言葉遣いはとてもカジュアルだし、イントネーションもゆるりとして、でも声かけが丁寧でニコニコ楽しそう。生きることが楽しそう。若い!エネルギッシュ!ああ、可愛い!

可愛くて元気な店員さんのおかげで、また来てみようねと話しながら、良い気持ちで映画館に向かうことができたのでした。ありがとう、ぎゃるず~♩

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