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掌編/短編小説

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基本的に連作ではない小説をまとめています。日常から一歩だけ外れた世界、そこらへんに転がっている恋、病とふだんの生活、鬼との友情なんかを書いています。
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2020年9月の記事一覧

秘密基地にて羽化する僕は

秘密基地にて羽化する僕は

「ねえ、きょう夕ご飯の後に秘密基地で遊んでもいい?」

きゅうりをトントンと細切りにしているお母さんに上目遣いで訊ねてみた。
秘密基地というのはぼくのおうちの押し入れのことだ。

普段は昼間、押し入れにゲームや落書き帳やお菓子を持ち込ち、謎の敵Xを倒す作戦会議をたったひとりで企てたり、暗がりの中でジェリービーンズを一粒ずつ口に放り込んで目をつむり、じっくりと遠くアメリカのお菓子屋さんを想像して科学

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