素/太古の記憶
鉄板を買ってきて外に放置していた。雨に打たれては、乾いてを繰り返し、時々僕も水をやったりしながら徐々に錆びさせていくことで絵を描いた。
凹凸による陰影がめっちゃ綺麗やなって見入ってしまった。
実物見て欲しいなぁ。ってただの錆なんですけどもね。
この地球上において、鉄はこの赤錆を纏った姿こそ自然なものです。
女性のみに限らず、男性だってメイクしろよってな流行りをどこかで感じていますが、素顔ってそんなにも悪いものなんでしょうかね?
頑張ってメイクしてテンションがぶち上がる気持ちはとてもわかるのだけれど、あなたはあなたのままで美しいんじゃないですかね?
生きてきて皺が刻まれてきたり、白髪になったりってとってもかっこいいじゃないですか。そばかすとか可愛いですよね。一重だっていいじゃないですか。
僕自身も星座みたいに顔の黒子を結んで浮かび上がる三角形とか結構好きです。声は嫌いなんですけどね。
鉄
250×300mm
Yellow Magic
ある日、僕は駅の階段で黄色いテープによって作られる線を見ました。これは人の進行方向を決定付ける魔力を持っているようでした。進行方向に対して皆がこのテープの右側を歩くのです。
「右側通行をしてください」というメッセージの補助線がこの黄色いテープなんでした。
人を動かすこと、いや、人を縛りつけるということはテープひとつで簡単に出来ることのようです。動物には通用しないでしょう。人間だけに見える(作用する)線なのです。人間にだけ見えるのは、これが常識や偏見という、頭の中で作られた線だからなのでしょう。
この線を飛び越えるための方法を考えなければいけないと思いました。
駅で見かけてもあなたはなんとも思わないかもしれません。きっと右側を歩くでしょう。僕は同じようにキャンバスに黄色いテープを貼り付けました。それによってキャンバスという世界の中には右と左が出現してしまいました。右側でも見ていたらいいんじゃないですか?しかし、僕がこれを10万円で販売していたら、流石に「おかしいだろ!!」って思えてくるのではありませんか?
引っかかったな。くっくっく。というわけですよ。
もう駅で黄色い線を見たら、頭の中でむずむずと嫌な感じがしてくるはずです。うわ、誰かに動かされている。そんな気持ちになってくれたら万々歳なのです。
そのために作ったのですから。
ただし、それだけだと何ともつまらないもののような感じもしてきてしまいます。この素材を違った切り口でも見てみたいです。
僕の誕生日である4月11日に打ち上げられたアポロ13号は月を目指す途中で酸素タンクが爆発した。それをガムテープで修繕しながら地球に帰還した。これが黄色だったかは知らないが同じ材料で、人を縛り付けるのか、生き延びるための方法となるのかと大きな差が生まれます。そんな材料が面白いともどこか思ったのでしょう。僕はこの黄色いテープを後者のように使いたいと思います。前者のような常識という線を飛び越え、どのようにして生き延びるのかを考える人。建築家とはそういう人を言うのではないかと思うのです。僕が建築家として生きていくためのある種の宣言でもあるのでしょうかね。
キャンバス、テープ
S8(455×455mm)