見出し画像

【小説ショ-トショ-ト】毛布

男は毛布を通販で買った。

とても肌触りが良かったのでもう1枚予備にも買った。

男はその毛布が手放せなくなり、体に巻き付けて生活するようになった。

運転するのにも、コンビニに行くのにも毛布は巻き付けたままだった。

男はサラリーマンだったので通勤電車にもその恰好で乗ったが、押し合い圧し合いの満員電車では毛布がずり落ちてしまうので、通勤を諦め会社は有休を全部使ってとりあえず休むことにした。

男は男の住むアパートの近所では「毛布男」として有名になった。

コンビニに行くとコンビニの店員も怪訝な顔で彼を見たが、1人だけ彼を普通の態度で接客してくれる女性がいた。

男は彼女が退勤時間になってコンビニの外に出てくるのを待ち、コンビニの駐車場で彼女に声をかけた。

「すみません、毎朝7時に僕のこの毛布がずり落ちてこないようにロ-プでぐるぐる巻きにしてくれませんか?そうしないと会社にいけないんです。もちろん、僕のアパ-トの外でやって下さい。ちゃんとバイト代も払います。」

男はそう言った。

彼女はその旨を了承し、毎朝男に巻き付いている毛布をロープでぐるぐる巻きにした。

男は毛布を付けたまま会社に通勤できるようになり、彼女に感謝したが、毎朝彼女が自分のところに来てくれるのを楽しみに待つようになった。

すると男は毛布がなくても生活できるようになり、ボロボロになった2枚の毛布は捨てられた。

男は彼女と結婚式をあげ、出席者が少なかったので、引き出物の上質な毛布が皆に配られた。

結論:毛布もたまには洗いましょう。

(全632文字)

良かったらサポートして下さい、私の作品はほとんど全部無料です、とても助かります